広陵(中国)vs宮崎工(九州)
試合中の一つのプレー・瞬間のジャッジで大きく結果が変わってくるのが野球である。
今大会、松倉雄太が試合を決定づける「勝負の瞬間」を検証する。
清々しかったエース
広陵・有原航平、宮崎工・浜田智博(共に3年)。第1試合は両エースがそれぞれ持ち味を発揮し、投手戦となった。今大会初めて、終盤まで0行進。このまま延長になるのではという雰囲気が出始めた9回裏に試合は決着した。
浜田は初戦に続いて、持ち味である長いリーチを生かした緩急自在のピッチングで、広陵打線に得点を与えない。しかし8回を終わって128球、徐々に疲労に蝕まれていた。力で抑える球威がない分、ボール半個分の出し入れで勝負をするタイプだけに、微妙な制球の狂いが命取りになる。それが現実となったのが、9回裏だった。
広陵の先頭は3番・蔵桝孝宏(2年)。ここまでの3打席で、浜田の球を18球見ていた。それが9回の第4打席で初めて初球に手を出す。打球は詰まりながらもセンター前へ。続く打者は4番の丸子達也(2年)。塁上の蔵桝は感じていた「この回で決められる」。
その丸子も初球を叩き、左中間への二塁打を放ち無死2、3塁。ここでマウンドに集まった宮崎工の内野陣。浜田と伊比井悠嗣(3年)のバッテリーは5番の御子柴大輝(3年)を敬遠し満塁策を取る。打席には6番の三田達也(2年)が向かう。
再びマウンドで話すバッテリー。意思は一つ「四死球を与えると後悔する。思い切り腕を振って投げよう」。
三田の意思もこれしかなかった「初球から打つ」。
浜田が投じた初球は外角のストレート。三田のバットが出た。打球は浜田の右を抜けてセンターへ。蔵桝の代走で出ていた奥本涼太(3年)がガッツポーズをしながら生還し、試合は終わった。
サヨナラ負けを喫した浜田の表情はガックリするどころか、むしろ笑みさえあった。「少し球が甘かったが、思い切り投げられたので悔いはない。夏に戻ってきます」と話したエースは最後まで清々しい表情でインタビューに答えていた。
(文=松倉雄太)
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