智弁和歌山(近畿)vs高岡商(北信越)
強力打線を抑えるためには…。
智弁和歌山が高岡商業の好投手・鍋田を打ち崩し、2回戦進出を決めた。
実は、ひそかにこの対戦に注目していた。
というのも、高岡商業の視点から見れば、今大会の優勝候補のひとつである智弁和歌山に対し、エースの鍋田がどんなピッチングを見せるか興味があり、逆に智弁和歌山サイドから見れば、好投手・鍋田を1回戦から打ち崩すとなればこの先の展望が明るく見えてくる。
この試合に、通算最多勝がかかっていた高嶋仁監督は、組み合わせが決まった時から、次のように話していたものだ。
「高岡商業の好投手はコーナーぎりぎりに変化球を投げる。小気味いいんよ。大会の1回戦、特にセンバツは、今年に入って初めての公式戦やから、どうなるか分からんのよ。この試合の入り方次第で、2つ3つ勝つためのものが見えてくる」
結果から先に言えば、3回表に智弁和歌山が失策絡みで1点を先制。5回表には、3番・西川遙輝の適時三塁打などで5得点を奪い、試合を決めた。
智弁和歌山が好投手の鍋田を打ち崩したわけだが、その対決は実に魅了されるものであった。
高岡商業・鍋田は上背がさほどないが、ストレートとカーブ、スライダーをコントロールよく投げる。彼を特に評価したいのは、内と外の出し入れの巧さだ。結果的にはファーボールになったが、1回表の先頭・城山に対し、初球はアウトコースギリギリのボールだが、次はストライク。というように、打者心理を揺さぶってくるのだ。
こうしたピッチングは、07年夏、旋風を見せた新潟明訓のエース・永井剛、06年夏の優勝投手・斎藤佑樹に通じるものがあった。
ピッチャーの投球術を表現する言葉として、こんな言葉がある。
「上を目指す投手は原点球であるアウトローを追求し、並の投手は内に速く、外に緩く」
好投手というのはアウトローのボールの質が高く、さらにはそれの出し入れが巧みなものなのだ。永井も、斎藤も、そして、高岡商業の鍋田も、そういう選手だった。
ただ、今日の試合に関して言えば、鍋田に一つ足らなかったのは「内に速く、外に緩く」の投球術。
たとえば、斎藤は06年夏の優勝時、自分と対等の打者に関してはアウトローの出し入れで勝負していたが、中田翔(大阪桐蔭→日本ハム)ら大打者と対峙した時には配球を変えていた。「内に速く、外に緩く」を実践したいた。
鍋田の投球は外角に偏っていた。アウトローの出し入れで抑えられたのは1巡目くらいまでで、2まわり目になると、智弁和歌山打線につかまり始めたのだ。そして、大量5点を失った。
鍋田は言う。
「配球は9回をみて決めていて、最初は外中心で行こうと決めていました。打たれ始めてから配球を変えていこうと。でも、5点を獲られてからしか配球を変えられなかった。もっと早めに切り替えなければいけなかった。5回は悔いに残ります」。
このコメントを聞いただけでも、鍋田がいかに好投手であるかが分かると思う。それだけの幅を彼は持っていた。アウトローが持ち味と意識しながらも、配球はそれだけではいけないと頭で理解していた。事実、配球を変えた6回以降は内を有効に使い、以降の智弁和歌山打線を0点に抑えている。
「自分のピッチングはできましたが、技術、精神面の弱さがでました。ああいうチームを倒すにはまだまだ甘かった。夏まで3、4カ月あるので、鍛えなおして、甲子園に帰ってきたい」。
そう、再起を誓った鍋田。
永井や斎藤のようなピッチャーになるために、彼は智弁和歌山との対戦で大きなものをつかんだはずだ。
(文=氏原英明)
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智弁和歌山 | 0 | 0 | 1 | 0 | 5 | 0 | 0 | 0 | 0 | 6 | ||||||
高岡商業 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 1 |
智弁和歌山 藤井‐道端 高岡商業 鍋田‐松嶋