中京大中京(東海)vs盛岡大附(東北)
試合中の一つのプレー・瞬間のジャッジで大きく結果が変わってくるのが野球である。
今大会、松倉雄太が試合を決定づける「勝負の瞬間」を検証する。
1年で培ったもの、そして後輩へ伝える!
昨夏の覇者・中京大中京が辛勝で初戦を突破した。
傍目には薄水の勝利。しかし、全国制覇を経験したバッテリーはそこまで感じていなかった。主将の磯村嘉孝(3年)は「まぁ、こんなものですよ」とあっけらかんとした様子。
ポイントとなったのは先発のマウンドに森本隼平(3年)を起用したこと。森本はエースだが、昨秋の公式戦と最近の練習試合では2年生左腕・浅野文哉が先発して森本に繋ぐパターンが定番となっていた。盛岡大附としても当然、浅野が先発でくるものと予想していただろう。磯村も「相手は秋と打順を変えてきていた。浅野でくると思っていたのだと思います」と試合後に話している。
しかし中京大中京の大藤敏行監督は森本を先発に起用した理由を説明してくれた。
「やっぱり経験ですね。浅野が先発ならどれだけ点を取られたかわからない。森本も去年こういう経験をしていますから」。
現に8回から2番手で登板した浅野は緊張からガチガチになっていた。森本も昨夏の2回戦(関西学院戦)で先発した際に、緊張から不本意なピッチングとなってしまった。そういった経緯を踏まえて、大事な初戦を経験のない2年生に託すわけにはいかなかった。
その森本だが、降りしきる雨と、ぬかるむグランドに苦しみコントロールが安定しない。球威も昨夏までには戻っていなかった。三者凡退のイニングもあったが、走者を出すとスコアリングポジションまで進められる苦しいピッチング。一つでも気を抜けば、たちまち大量点に繋がりかねないような状況が続いた。
それでも逆転までは許さない。寸前の所で、冷静にピンチを切り抜けた。悪夢のような追い上げを食らった昨夏決勝(日本文理戦)の経験をこういう時こそ生かす。バッテリーの意思を感じた瞬間だった。
9回に追い上げられ、森本が再びマウンドに上がった場面で、昨夏を思い出した人も多いだろう。インタビューでも記者から再三この質問が飛んだが、磯村主将は言い切った。
「今日の試合なんて、去年と比べれば大したことないです」。
もの凄い経験をした3年生は逞しい。そしてこれを見て後輩にも伝わってほしい。「浅野も良い経験になったと思います」主将の言葉がそれを象徴している。
相手の意表を突いたのではなく、初戦を勝つ最も高い可能性からの森本の先発起用。勝負は相手ではなく己だということを見事に示した。
(文=松倉雄太)
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盛岡大附属 | 0 | 2 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 4 | ||||||
中京大中京 | 2 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | X | 5 |
盛岡大附属 高藤,白石 – 槻舘 中京大中京 森本,浅野,森本 – 磯村