Interview

オリックス2軍打撃コーチ 古屋英夫さん

2008.08.27

第10回オリックス2軍打撃コーチ(07’までオリックススカウト) 古屋英夫さん2008年01月14日


インタビュー

第10回独占インタビューはオリックス・前スカウトの古屋さんです。今シーズンから2軍打撃コーチに就任する古屋さん。5年間のスカウト活動を身近な選手の話も踏まえながらお話してもらいました。

 


スタッフ(以下 ス) アマチュア選手のどのような点をみているのですか??

古屋(以下 古) 自分が野手出身なので動きとか経験でわかりますね。足とか肩とかそういうレベルではすぐ分かります。

ただ投手に関しては投げ方よりも自分がバッターボックスに入った時の感触で見るようにしていましたね。綺麗な投げ方でも逆に打者にとっては打ち易かったりします。コントロールでも本当のコントロールがあるのか。球の切れもホームベース上で、どのくらい切れがあるのか。打者から見た打ちづらさを見てました。ただ投げ方が悪いと今度は故障に繋がりますので、最初は投手を見るのは難しかったですね。

打者は見る機会を増やそうと思って一人の選手を2回・3回と見ていました。

特に高校生は見る度に違うので一回見ただけで判断はしないようにしました。根気良くやろうと思ってました。もちろん全員が見て良いと思う選手は誰が見てもいいですよ。(笑)

 今年で言うと中田選手(大阪桐蔭)なんかそうですよね。

 そうですね。彼なんかは飛ばす能力とか天性の物を持っていますね。少しくせがあるけど、飛距離を出すのは並みの高校生ではないです。自分達が良いと思った選手は、他球団に入団してもどれくらい活躍するのか、頑張ってほしいし、楽しみですよ。また自分達の目が正しかったのかどうか分かりますしね。

 なるほど。一つの尺度になりますよね。具体的にはどういうところを見てましたか?

 ん〜逆に抽象的になりますけど。まずは他の選手とは違っていないといけないです。

抜きん出ていないといけない。なんとなくだけど、雰囲気がありますよ。やはり違います。試合のプレー以外でもキャッチボールとか走っている姿とか。練習試合で背番号をつけていない時でも「あ、彼だな」と分かります。グランドに入って選手を見ただけで分かります。プレー以外の所をみていますね。プレーになれば、選手はスカウトが来ているのはだいたい分かりますから。それ以外の野球に対する姿勢も見ています。

 今回は関東担当だったのですが。

 ええ。今年は埼玉以外はだいたい見ました。


今年からプロへと活躍の場を移す。左:中村君と右:大田君(写真:07’甲子園球場vs神村学園)

 東京にもいろんな注目選手がいますが、

 今年は関東に良い選手が多かったですね。千葉なんか結構多かったですよね。市立船橋の山崎君はうちと縁がありましたしね。

 ちなみに大田選手(帝京)とか中村選手(帝京)の評価は??

 太田君は春の時点で、20三振とりましたね。その前年の秋の神宮大会でも146キロでて良かったですね。だから、その時点で上位候補っていうのは決まっていました。夏は調子が良くなかったですが、うちでも3巡目の候補でした。ま、1位は本人に負担がかかってしまうかなとは思いました。ちょっと気の弱いところもあるのかなと。

 本人のことも考えて順位とか決めるのですか?

 ええ。そうですね。あんまりプレッシャーをかけられると可愛そうですしね。特に高校生はね。

 なるほど。

 今年、日本ハムに入った吉川君とうち(オリックス)に入った延江君は同じ広島の高校出身でむこうが広陵、うちが瀬戸内ですが、広陵の方がしっかりした野球をするし吉川君の方が早くデビューしましたが将来的にはうちは延江君のほうが良いと思って捕っていますし。今年に関してはそうですがユニフォームを脱ぐまで競争ですから、延江君もやってくれると思いますね。もちろん横浜・PL・東北・仙台育英出身の選手なんかはすぐデビューしてますよね。あんまり駄目な選手はいないしね。

 やはり名門という事ですね。

 そうですね。やはり名門校出身の選手の方がスタートの時点ではもまれてきていますので、差が出ますよね。もちろんプロの世界に先輩がいますし、その点で公立高校から入ってきた選手は最初の方は戸惑うでしょうね。その差が最初は大きいでしょうね。

 なるほど。では中村選手は??

 うちは岡田君がいるので。中村選手も、もちろん良い選手ですよ。逆方向に強い打球が打てるし、外野もできると思いますが、選手の評価とチームの強化ポイントが違い今回はご縁が無かったです。でもソフトバンクの3順目でしょ。うちも評価もそのくらいでしたよ。二人とも3巡目まで入っていますしね。当然うちも評価はしていましたよ。

 毎年、プロ野球に70名程、新人選手が入団しますが、プロに入って成功する選手としない選手の差はなんですか??

 準備ができているかどうかだと思います。準備の段階で故障してしまう。入団発表の時に、注意はしますが、準備不足で体系が変わるくらいの選手がどうしても毎回、何人か出てきます。そういう選手はキャンプに行っても最初から別メニューとか。もうヨーイドンで遅れてしまっている。そういうケースはよく見ます。まずは準備ですね。

またプロに入ってくるという事は、良い選手なので、チャンスを物にするかどうかですね。必ず何度かチャンスは与えられるので、ものにしない選手は誰々の言い訳にするんですね。

どっかで逃げている。ん〜。ま、ドラフトがゴールではなくスタートなので、ここを勘違いしている選手も中にはいます。もちろんプレー以外のそういうメンタルの面も見るようにしていますが、中々難しいですね。

 年間に観戦する試合数は

 ん〜。よく聞かれんだけど。(笑)試合数は分からないです。3月スポニチ大会から11月の明治神宮大会まで月にだいたい休みは2日3日くらいですね。東京だと必ずどこかでシーズン中は野球やっていますから数はちょっと分からないですね。試合が無い時は練習を見に行ったりしますね。

 どうやって選手の情報は得ていますか?最近は情報化の時代で隠し玉とかも少なくなってきています。

 今は隠し玉は無理ですね。準硬式とか軟式とかやっていないと。

選手の情報に関しては注目の3年生を見に行った時に2年生・1年生も見ています。2年生の段階ならBランクでもチェックしますよ。今の時点でこのレベルだから来年はこのくらいになるのではと思いながら。だから急に出てきた選手って少ないですよ。プロの候補になるなら1年2年から試合に出ているのが多いしね。だから自分の地区の情報を他の所から得るというのは無いですね。大学生も高校生の時、注目していた選手がプロに進まず大学に進学して追跡調査になったりとか。急に出てくるのはほとんどい無いですね。

 大学生と言えば斉藤選手とかですね。

 そうですね。彼は2年の秋の神宮大会で見ていましたが、牽制が上手いという印象しか無かったですね。サードの牽制がうまくて毎試合牽制で1個殺してました。

相手の高校生もMTGで彼の牽制について指摘しているとは思うんだけど、毎試合刺していましたね。先乗りしていなかったのかな、っと思う程、毎試合刺していましたね。

でも斉藤君の場合は凄かったね。予選の決勝で危なかったんだよね。三高に勝たなかったら良いピッチャーだな、で終わってたから彼は運もあるよね。彼のおかげで甲子園も盛り上がったし、今年の六大学もね。去年まではどこでも座れたんだけど今年は観客が多くて。(笑)やっぱり学生もお客さんに見られて励みになりますよね。

 スカウト活動している中で印象に残っている選手は?

 早稲田の鳥谷君。順調に成長してますよね。青木君、由田君、あの時の早稲田は強かったですね。青木君があそこまでなるとは思わなかったけど。鳥谷君は順調に来ていますよね。高校生だと最近では、マー君かな。あのスライダーはプロの選手は振らないと思ったけど、振ってるからね。マー君のほうが上だったね。

 奪三振率が凄いですよね。

 あのボールを振るから、上もゾーンも降ってしまう。下を振るという事は次は目つきを上にするので今度は上の球も振ってしまう。スライダーは自分の予想をはるかに上回っていましたね。いいピッチャーだとは思っていましたが、ここまで1年ローテの軸で回って故障しなかったっていうのが高校生では凄いことですよ!!彼は1年間ふるにいったり打線の良いソフトバンクに会わせて登板したりしていましたからね。

今年の唐川君も地元だし1年の時から見ていますから、やはり良い選手は出てきますね。あまり出てきてほしくないんだけど。(笑)
彼は入った時はそんなに凄くはなかったんだけど、秋にはいいボールを投げていましたね。あれだけのまっすぐがあればね。全国大会に出れば注目されますよ。

もっとも佐藤君が155キロ投げなければ、もっと競合したんじゃないのかな。でも佐藤君のあの試合を見たけど、佐藤君の球も凄かったよ!
あれは良い物を魅せてもらったね。凄かった。あの球が常時でれば、プロでも充分通用すると思います。


高校時代からメンタル面の評価が高かったダルビッシュ 有 選手(04’AAA大会)

 佐藤君の話しがでましたが、球速に関してはどの程度の重きを置いていますか?

 我々の時は、高校生は140キロでなかった。今は高校生でも140でますからね。今のプロのエースは常時145キロ投げれるます。だからそれが一つの目安になっています。ただサイドとか左は少し少ないよね。去年なら鷲宮の増渕君とか。彼はマックス+3キロくらいで見ていますね。

スピードもそうですが、スカウトによっては変化球を重視する人もいます。特に左の場合はカーブ。カーブでストライクがとれるのも基準になりますね。先程の広陵の吉川君はカーブでストライクが入る。1年目から出てきた要因でもありますね。左のカーブで好きな時にストライクが入る投手ははそういう意味で一つランクが上がりますよ。

でも、やはりスカウトによって好き嫌いってでますね。選手の特徴ってすごく大事です。それが伸び白になりますね。カーブがいいとか。体はできていなけど140後半投げるとか。

なんとなくいいというのももちろん大事だけど、高校生も場合は何かしら特徴が無いと厳しいかな。なんとなく点をとられていないのがいいのは大学。社会人。ここは数字ですね。点をいれないというのが戦力としてみるのでいいですからね。即戦力として。用は点を取られないことが投手は重要ですよね。野手は高校生なら足・肩・打撃のうち一つ特徴があれば良いけれど、大学・社会人は二つほしいですね。

 最近、三拍子揃った右投げ左打ちが多いですよね。

 そうですね。だから最近はチームの編成で右投げ右打ちとかが重宝されますよね。もちろん三拍子そろった選手は必要ですが、もちろん青木は特別ですけどね。

日本人で20本打てる選手はいるけど30本打てる選手は少ないのでそういう意味で中田選手はどのチームもほしかったでしょうね。和製大砲は中々作れない。これだけは素材がないとね。バランスっていう意味で右投げ左打ちの選手は一時期、西武が集めていたけど、やはり和製大砲は永遠のテーマだよね。やはり4番は日本人の方が人気も出るし。

 長距離砲ではオリックスの岡田選手も?

 そうですね。期待していますね。

 最後にスカウト活動で一番感じたことは?勉強になったことは?

 ん〜。今度現場にもう一度出るわけだけど、初めてコーチになった時は、選手に対して自分も入団した時できていなかった事も要求してしまっていました。そんな事もできないのかみたいな感じで、高い所から選手を見てしまった部分もあったのかもしれない。もちろん自分でも注意していたつもりなのですが。

ただ今回スカウトを5年間やられてもらい、やはりプロに入る事は本当に大変な事だと分かりました。また入団発表でご両親の喜ぶ顔を見たり、スカウトがどのくらい苦労して選手をとってきたか分かりました。また選手自身、地元の期待であったりいろんな物を背負って入団してきます。そういう背景を踏まえ、コーチとして選手をお預かりする、という事です。良い思いをさせてやりたい気持ちは今までよりも強いですね。

スカウトは選手にとってプロでの兄貴。親代わりみたいなものだから。とった選手の成績は凄く気になります。とった選手の一投、一打で一喜一憂する。経験して初めて分かった事ですね。だから選手⇒コーチ⇒スカウト⇒コーチという流れも自分ではよかったのかな。

この5年間は良い経験をさせてもらいそれを無駄にするのはもったいない。そのままコーチでいるよりも違った指導法とかできるのではと自分でも楽しみにしてます。

 ありがとうございました。

 工藤とダルビッシュは高校生の参考になると思うな〜。

割れがあるよね。割れがあると待てるんだよ。ボールと距離が取れるんだよね。野手でも投手でも。ボールと喧嘩しない。やわらかくやわらかく、それを意識して。守るもの、打つのも。口では力抜くと言っても難しい。バットを落ちるくらいな感じで打てって言われても難しい。落合さんなんか素晴らしいよね。打球も柔らかく飛んで行くんだよね。でもゲームに入るとヒットゾーンを自分で狭くしてしまっている。調子がいい時は自分でもフィールドをうまく使えるんだけど。心理的なものが大きいですね。

落合さんはフリーの時からゆるいボールを打ってるからね。力を抜いて打てる、気持ちと技術

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高校球児に対するメッセージ

夢を口に出して言ってほしいですね。例えば自分は中学の時から俺は絶対プロになるって言ってたらしいんだよね。

今のプロ野球選手でも、できたらプロでやりたいって言っている人もいるけど、絶対プロでやりたいなら、その気持ちをはっきりとプロでやる!出していかないと無理なんじゃないかな。プロとして野球できる喜びはプロに入らないと出来ないし、特別なものですよ。選ばれた人しかプレーできないですしね。自分の夢を夢で終わらせない為にも、自分で夢を宣言してほしい。

口に出して言うとプロ野球選手になるには何が必要だと考えるし。そうすると行動が伴ってくる。みんながしていない時に練習したりとか。全員に与えられた時間は24時間で一緒です。その中で考え工夫した練習をしたり。できたらなりたいでは絶対になれないですよ。例えなれたとしてもそれがゴールになってしまう可能性がある。

これは野球以外にも何にでも言えると思いますしね。

また練習姿勢についてもやれと言われた事をやるだけでなく、自分で考えてやる。そうすると自分で疑問が出てきて、それを聞く。これはただやらされるよりもはるかに効果がありますよ。自分の引き出しが増えると思う。そこには自分の意思があるので。高校生には監督に聞くとか難しいかもしれませんが本気でやるならそういう事を意識してほしいですね。

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この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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