斎藤 堅史選手 (日大山形)
短評
<レポートより抜粋> 8回被安打12を許しながらもエースとして堂々たる投球だった。 斎藤の真っすぐは130キロ台を計測する。今大会の注目投手である明桜・風間 球打が157キロを計測するように、近年は140、150キロ台をマークする投手が増えてきた。その投手たちと比較してしまうと、決して驚くようなスピードではない。120キロ前後を計測するスライダー系の落ちる変化球も、鋭く変化するわけではない。 かといって投球フォームも変則的ではなく、オーソドックスな右オーバースローに分類される投手といっていいだろう。終始、脱力した状態で、冷静に淡々とマウンドでボールを投げ込む。ピッチングというよりもキャッチボールをしているようにも見える投手だ。 凄さが伝わりにくい投手かもしれないが、それを伝えないことが凄いのではないだろうか。 事実、9回途中で降板して被安打12と強力打線・米子東に猛攻を受けたものの、与四死球は2つのみだ。 公式記録上でもストライクが42球と、全体の38.18%のストライク率だった。ずば抜けた数字ではないが、ストライク先行で終始落ち着いた投球で、米子東を1点に抑えた。 地方大会では力み過ぎてしまったことを斎藤は反省しており、その点に関しては「修正ができたと思います」と納得の投球だったようだ。その様子は米子東の舩木洸もキャッチャーとして見ていて、「動じることなく、淡々と投げている印象でした」とエースとしての振る舞いを高く評価していた。 好投を見せた斎藤本人は、「エースである以上、1試合投げきらないといけないのが役割なので、目指していました」と完投するつもりでマウンドにいたとのこと。9回は疲労から連打を許してしまったことを反省していたが、自身の脱力した投球について聞くと、完投するためのペース配分だということがわかった。 「自分は、先発がメインなので、多いイニングを投げないといけません。ですので、力いっぱい投げるとすぐに疲れてしまいます。だから、ピッチングでも変化球を混ぜながら、打ち取るところは打ち取るように心がけて投げています」 エースとして先発して、9回を投げきって勝つ。このためのペース配分であり、抑えるために導き出した答えが、米子東相手に見せた「脱力投球」だった。 荒木監督も先発起用に関しては、「先発は試合を作れる投手、ですから斎藤を先発にしました」と話しており、斎藤のゲームメイク能力を高く評価して起用していた。その点に関しては見事に応えるどころか、「思った以上に抑えてくれた」と指揮官も驚きものだった。 投手として活躍するには、150キロ近くを計測する剛速球や、曲がりの鋭い変化球がなくとも、投球術があれば勝つことが出来る。それを証明した斎藤の投球だったと言える。
更新日時:2021.09.06