激しい点の取り合い、江戸川のSJBが機能して篠崎を振り切る



3ランを放って三塁ベースを回る江戸川・中野君

<春季東京都大会:都立江戸川16ー9都立篠崎>◇1回戦◇1日◇駒沢野球場

 4月になって春季東京都大会が始まった。東京都大会は、この日から、5日までの間に2回戦までが終了して、一気に32校に絞られていく。

 駒沢球場での最初の試合は、ともに江戸川区同士の都立江戸川都立篠崎という近隣対決となった。

 初回、都立篠崎は3四球で満塁として内野ゴロの間に三塁走者を帰した。江戸川の先発榎本投手の制球の不安定さを突いたという形で無安打で先制した。しかしその裏、都立江戸川都立篠崎の先発左腕背番号9の松岡投手の制球の乱れを突いて連続四球とバントで一死二三塁として、4番渡辺君の右中間三塁打で逆転。さらに、畑田君の犠飛や伊能君以下の下位打線が3連打してこの回4点連打。

 いきなり点の取り合いとなったが、2回はお互いにビッグイニングを作る。

 都立篠崎は、6番松岡君の安打と3四死球などで満塁として、2番向山君の左中間二塁打や犠飛、振り逃げ暴投などもあって5点を返して再逆転。

 たちまち2点を追いかける形になった都立江戸川。園山蔵人監督は、「ある程度失点することは想定していましたから、少しも慌てていなかった」と言うように、その裏すぐにじっくりと攻めて4四死球の押し出しで1点差。さらに一死後犠飛で同点として7番中野君。1ストライク後の内角高めを叩いた打球は左翼手頭上を越えて3ランとなった。一次ブロック予選でも2試合、いずれも本塁打を放っているという中野君。これで公式戦3試合連続本塁打となった。恐るべき7番打者である。「ウチのチームは他の打者もよく打つので、この打順で思い切り振れる方がいいかなと思っています」と、自信を示す。この日は結果としては4打数3安打で、6回には、最終的にコールドゲームを決めることになる左犠飛も放って4打点。「冬の間にトレーナーの指導でウェイトトレーニングに取り組んできたし、バットもたくさん振ってきました。その成果が出たのだと思います」と、嬉しそうに話してくれた。

 都立江戸川は3回にも攻守にセンスのいい3番高橋遊撃手のタイムリー打や、好判断の走塁などで2点を追加した。このあたりは、園山監督がずっと提唱しているSJB(セルフジャッジベースボール)が、チーム全体にも浸透していて、機能しているといってもいいであろう。これは、守りのポジショニングについてもそれぞれの判断で思い切ってシフトをしていくということも可としているということだ。

 このSJBという考え方は、「野球を楽しもう」ということを大前提としていて、あらゆる場面で自分たちが判断(ジャッジ)していくというスタイルで、指示される野球ではなくて、自分で決めていく野球というスタイルである。園山監督は、都立江戸川の監督に就任以来、ずっとその姿勢を保って指導し続けている。それは、まさに今の時代にもマッチした高校野球ということが言えるのかもしれない。

 4回に1点ずつ取り合い、都立篠崎は6回には3回からリリーフしていた都立江戸川の二番手伊草投手が失策で走者を許して制球を乱したこともあって、無安打で2点を返す。しかし、その裏、都立江戸川都立篠崎の3人目の左腕2年生ながら1番を背負っている母谷投手を攻めて高橋君の右越二塁打に、最後は中野君の右犠飛などで4点を追加して7点差とした。

 そして、この回0に抑えればコールドゲームという7回の守り、先頭を四球で出すものの、加藤捕手が盗塁を刺して伊草投手を楽にする。その後は2者をしっかりと打ちとって、コールドゲームが成立した。

 園山監督は、「試合の展開からしても、コールドゲームになるなどとは思ってもいませんでした。投手は、試合の途中で修正していかなくてはいけないのですが、相手のスイングが鋭くて、ある程度の荒れ球が甘く入ると強い打球で打ち返されて苦しんだ」と振り返った。そして、「送球ミスが多かったということで、キャッチボールの大切さを改めて認識しました」と、試合を通じての反省点も示していた。

 先制し、逆転されても再逆転した都立篠崎だったが、再々逆転をされてからは、いくらか勢いは落ちてしまった。それでも、少しでも甘いと鋭く打ち返していく打線は頼もしいなと思わせるものがあった。夏への伸びしろを大いに期待したいチームである。

(取材=手束 仁

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