野球人生初のホームランから2打席連続弾 都立江戸川恐怖の7番がメンタル強化で豪快弾

ホームランを放った都立江戸川・中野
<春季東京都大会1次予選:都立江戸川12ー4都立府中西>◇12日◇1回戦◇佼成学園グラウンド
近年、SJB(セルフジャッジベースボール)と銘打って、選手主体の野球で東東京を戦っている都立江戸川。春は予選からのスタートになり、初戦の都立府中西との一戦は12対4で勝利を飾った。
序盤2回までに3点と幸先よく点数を重ねると、3回には7番・中野 智生外野手(3年)が詰まりながらも、インコースの直球をはじき返し、高校初となるホームランを放った。
4対1で迎えた5回、中野にこの試合2度目の打席が回ってくると、低めの球を上手くすくい上げた。真ん中付近の直球を完璧にとらえた打球は、このまま佼成学園グラウンドのもっとも深い左中間付近に飛んでいくホームランとなった。
これで5対1と点差を広げる結果となったが、2打席連続弾には都立江戸川・園山監督も「信じられない」と衝撃の連続アーチで前半を5対2という内容で主導権を握った。
その後、都立府中西の反撃で1点差に詰め寄られたものの、8回、9回と連続得点でダメ押しに成功して都立江戸川が勝利した。1点差に詰め寄られながらも最後は踏ん張った都立江戸川投手陣の活躍は大きかったが、それ以上に中野の2本塁打の活躍は大きなポイントだった。
練習試合はもちろん、これまでの野球人生でもスタンドインのホームランが初。「調子が下がっていたので、1本目の時はホームランよりも、ヒットが出たことに安心していました」と感触をかみしめる余裕はなかった。
2本目も「嬉しかったですけど、まさか打てるとは思いませんでしたので、正直怖いです」と少し笑顔を交えながら振り返った。
練習はかなり積んできた。冬場はNPBやMLBの選手の長距離打者の打撃映像を見て、普段の練習で撮影した映像と比較。ミートの瞬間をはじめ、フォームをチェックして、より長打力を磨いてきた。
練習量もかなり積んだ。ティー打撃では6秒で1回打ったり、20球の連続ティーを50セットで1000スイングしたりと、とにかく強く振り続けて打撃を磨いてきた。
結果がなかなか出ず、苦しい時期が続き不安をもって初戦を迎えていたが、この活躍に繋がったのはメンタル面の成長も大きかった。チームで取り組むメンタルトレーニングの一環で、「心をリセットさせる視点を作る」というのを学んでいた。中野はこの試合で実践し、「追い込まれるまで、狙い球だけを待とう」と割り切って、直球に照準を合わせた。
難しく考えずにシンプルに頭と心を整理したことで、もっていたパフォーマンスを発揮することができた。次戦に向けて「チームの勝利に貢献したい」と控えめな意気込みながらも、その眼はやる気に満ちていた。今日の2本をきっかけに、さらに大暴れしてほしい。
最後に突き放された都立府中西だが、主将・渋谷 瑛陸捕手(3年)は「失点したら諦めるところがありましたが、今日は取り返せると思って、自信をもって攻撃できた」と秋からの成長に手ごたえを感じているようだった。ただ最後に地力の差が出たことを悔やみ、最後の夏に向けてさらなる成長を誓った。
(取材=編集部)