城西大城西が攻守に都立新宿を圧倒して5回コールド勝ちで代表決定戦へ

4回までパーフェクトに抑えていた城西大城西・馬場投手
<春季都大会1次予選:城西大城西13-1都立新宿>◇11日◇1回戦◇総合工科グラウンド
今春の東京都1次予選の初戦としては、好カードの1つと言っていい顔合わせかと思われた。都立新宿は現在、部員数は15人と小世帯ではあるが、昨年暮れにはイチロー氏(マリナーズ会長付特別補佐兼インストラクター)が「東京の都会のど真ん中で、ビルに囲まれながらも、一生懸命に野球をやっている学校がある」ということで、グラウンドを訪れて指導していったということもあった。そんなこともあると、選手個々のモチベーションは上がってきているであろう。
そして、イチローも高く評価したというリードオフマンの清水 大賀は、高校野球専門誌でも大きく取り上げられた逸材の1人でもある。
城西大城西は、昨秋の大会では代表決定戦で日本ウェルネス東京に対して初回に失策が相次ぐなどして7失点。自滅気味の形となり、5回コールドゲームの12点を失って大敗している。そこからの立て直しという形で挑んだこの春の1次予選である。
先発の右サイド気味の馬場 力也投手は、スライダーが低めにコントロールされて4回までは1人の走者も出さない好投だった。そして、打線も都立新宿の先発加藤 康祐投手に対して積極的に攻めて、初回に打者12人でシングルのみ6安打に四死球もあって、いきなり6点を奪って主導権を握る。2回にも、打者一巡で7番宮川の三塁線を破る二塁打などで5点を奪う。こうなってしまっては、さすがに都立新宿としてもなすすべがない。
城西大城西の各打者は、スイングの思い切りもよく打球も強い。都立新宿としては、ちょっとこれまでに経験したことのないくらいの強い打球だったのかもしれない。
城西大城西は、3回と4回にも1点ずつ追加して突き放した。4番の清藤の4回の適時二塁打は、インローを上手に捉えて鋭い打球で左翼線を襲っていった。
4回まで、城西大城西の馬場投手に完全に抑え込まれていた都立新宿だったが、5回に4番二宮が初安打すると、代打・東原も続いて一、二塁として、7番加藤の適時左前打で1点を返して一矢を報いたものの、そこまでだった。
ある程度の競り合いの展開を期待していたのだが、スコア的には大差となった試合となってしまい城西大城西の快勝となった。それでも、山崎警監督は、「こういう展開になったら、やっぱり0で抑えなくちゃいけませんよ。それを、5回に相手もストレートしか待っていないところへストレートを投げて打たれてしまって、そのまま失点してしまうというところは、まだまだなんですよ」と厳しかった。馬場投手は、先の練習試合では(センバツ出場の)二松学舎大附に対しても、好投しているという。それだけに、「このチームは、秋は自滅して負けてしまったけれども、ここ何年かの中でも、そんなに力のないチームではないと思っているんですけれどもね(苦笑い)。それだけに、少し歯がゆい」という思いのようでもある。
それでも、東京都の中でもベスト16~8に残れるくらいの力はあるのではないかという印象のチームだった。
初回の失点が効いてしまったという形で、あまりいいところを示せなかった都立新宿だったが、イチロー効果もあるのか、4月からの新入生はある程度の人数は見込めそうだという。それらを踏まえて田久保裕之監督は、「今回のコロナということもそうですけれども、今度入ってくる生徒たちは、これまでとは全く違う中学生活を過ごしてきた生徒たちです。そうした生徒たちに今まで通りの対応でいいとは思えません。そうした子たちを、どう指導していくのがいいのか、正直、迷ったり悩んだりしています。そうした中で、対処していかなくてはいけないと思っています」と、考えている。
東京都の30~40代の若手から中堅の指導者たちをまとめていく役割も担っている田久保監督だが、新しい時代の高校野球をどう導いていくのかに苦悩している。それでも、新時代を迎えていくであろうと思われる高校野球をどうリードしていくのかということも、今後のテーマとして取り組んでいるようだ。
(取材=手束 仁)