三重殺2回の珍事!東海大菅生、もたつきながらも都立八王子北を破る



先発・鈴木泰成(東海大菅生)

 センバツ出場校が春季都大会の1回戦で苦しむことはよくある。センバツが終わってすぐに都大会に入るので、気持ちの切り替えができないのはやむを得ない。センバツでは準々決勝に進出した東海大菅生もやはり、都大会の1回戦はもどかしい試合になった。しかも、三重殺を2回もしてチャンスを潰した。筆者は半世紀以上にわたり、数え切れないほど試合を観てきたが、三重殺が1回だけでも珍しいのに、同じチームが2回もしたのは初めてみた。

 三重殺の具体的なことは、試合の展開を書きながら記そうと思うが、まず東海大菅生の先発オーダーから。打順1番から
(中)千田 光一郎
(左)榮 塁唯
(右)東海大菅生
(二)堀町 沖永
(三)小池 祐吏
(一)多井 耶雲
(捕)福原 聖矢
(遊)小山 凌暉
(投)鈴木 泰成 と続く。目を引くのが、内野が大幅に入れ替わったことだ。

 その理由について若林弘泰監督は、これまで事実上のレギュラーであった岩田 一真の守備の不安を挙げる。もちろんそのことが、岩田にとっていい刺激になることを願ってのことだ。ただその一方で、小山の肩が強いことから、遊撃手の適正にも着目している。小山は外野手から、捕手、二塁手など、様々なポジションをこなしている。またセンバツ2回戦のヒーローである多井も一塁手に起用され、堀町は二塁の守備についた。

 さて1回表、都立八王子北は3番・押田悠之介が左前安打で出塁すると、すかさず、二盗のスタートを切る。これは東海大菅生の捕手・福原が素早い送球で刺してアウト。それでも都立八王子北の内田健太郎監督は、「正攻法では勝てないので……」と語るように、無茶を承知の上での作戦である。アウトになったけれども、都立八王子北の積極性が垣間見えた場面であった。

 その裏東海大菅生は、都立八王子北の先発、左腕の伊藤智哉の丁寧な投球で三者凡退に終わる。それでも2回裏は、4番・堀町、5番・小池が四球で出て、無死一、二塁のチャンスを作る。ここで1回目の珍事が起きる。サインではないが、二塁走者の堀町がスタートを切ると、一塁走者の小池もスタート。

 ところが6番・多井は打ってしまい、これが二塁への緩い当たりのライナーになる。二塁手の小山田琉宇が難なく捕球すると、遊撃手、一塁手へと転送され、トリプルプレーになった。

 それでも東海大菅生は3回裏、7番・福原、8番・小山が四球で出塁し、ワイルドピッチで二、三塁に進み、1番・千田のレフトへの二塁打で2人が生還した。

 東海大菅生の先発は、センバツでも好投した鈴木 泰成。力的には上であることは間違いないが、5番・上野航輝が安打を2本打つなど、しっかり対応した選手もいた。「今日のようなピッチングをしては、ダメです」と、鈴木 泰成は反省する。

 鈴木 泰成にとっては、センバツの準々決勝で対戦した中京大中京畔柳 亨丞の「自信満々の気迫が、自分には足りません」と感じていた。これまで完投することはなかったが、「ピッチャーが代わって流れが変わるのが嫌でした」と語り、9回を投げ切った。

 実績のある投手が投げ続けているのだから、東海大菅生の勝利は揺るがない。6回裏には一死一塁から多井がレフトオーバーの二塁打を放ち、1点を追加。小山の中前安打でさらに1点を追加した。

 そして7回裏、1番・千田の左前安打、2番・榮の四球で無死一二塁。打席には3番の東海大菅生が入る。ここで2回目の珍事が起きる。東海大菅生は三塁への強いゴロ。これを都立八王子北の三塁手・押田悠之介が捕球して、三塁ベースにタッチ。

 素早く二塁に送球すると、一塁走者・榮の激しいスライディングで、二塁手の小山内は転倒。これが守備妨害とされ、打者走者の東海大菅生もアウト。この試合2回目のトリプルプレーが成立した。これについて若林監督は、「ああいう場面では右方向に打たなければならないのに、術中にはまってしまいました」と語った。

 この回を抑えたことで、都立八王子北の伊藤は8回を投げて東海大菅生相手に被安打7、4失点。相手が東海大菅生であることを考えれば、十分好投と言える。

 都立高校は緊急事態宣言の間はチームとしての練習はできなかった。それでも自粛期間で伊藤の球威は上がったと内田監督は感じている。伊藤は3キロほどの重いボールを持って手首を鍛えたりしていた。「今日は上出来です」と内田監督が語るように、練習時間が足りない中でも、手応えを感じる敗戦であった。

 東海大菅生にしても、センバツの後の初戦は、こうした展開になることも想定内である。これからどうチーム力を上げていくか、注目したい。また大幅に変わった内野陣にしても、夏に向けての競争は始まったばかりである。

(記事:大島 裕史)