清水 弘毅選手 (日大三)

寸評

　日大三のショート。強打者揃いの日大三にとっては珍しい好打者タイプ。秋からつなぎの打撃・盗塁と渋い働きを見せていた選手で、日大三にとってキーになるプレイヤーであった。最後の夏はボールの喰らいつきの良さと盗塁出来る能力が買われ、トップバッターに。負傷を抱えながらも出場を続け、全国制覇に貢献した。卒業後は東都一部・日本大学に進む。 （打撃） 　 　右、左に打ち分けるシャープな打撃が持ち味。彼は2年春の選抜で代打として出場し、島袋 洋奨からかなり食らいついていた打撃が印象的。そのしつこさを見出され、多くの投手を苦しめさせ、突破口を切り開いた。 　スタンスはスクエアスタンス。グリップは肩の位置に置き、やや体を丸めて膝を曲げて構えている。構え方はヤクルトの青木宣親と似ている。 　投手の足が着地する寸前に始動を仕掛けていき、重心を下げて始動を仕掛けている。始動の仕掛けは遅く、ギリギリまで引き付けて叩いて行く。右足を上げてインステップで踏み込んでいく。トップの動きを見ていくとグリップを頭の近くまで引き付けて叩いていく。ヘッドが立って振り出すことができている。 　彼の良さは低めの変化球の捌きが上手いこと。両膝を柔軟に使い、縦振りで打球を捌き、左方向へ流し返す打撃は見事。長打力を全面に出す日大三打線において彼のように柔軟な打撃が出来る打者は貴重であろう。 　課題としては踏み込んだ前足の踏ん張りが足りず、体勢を崩すことが多い。下半身の故障により粘りが足らなかったというのも考えられる。日大三の打者では比較的、木製の順応が早そうな選手に見えるが、最初は木製と金属とのギャップで打球を飛ばすことさえ苦労することが考えられるが、今まで通り徹底とした振り込みで、自分の型を築き上げてほしい。 （守備・走塁） 　動きは良く、守備範囲はまずまず広い。持ち替えは早く、飛び込んで捕ってもすぐに送球体勢に入って投げることができている。地肩の強さは秋季大会では並みの肩の強さだったが、ひと冬のトレーニングで身体が鍛えられたことにより、プレー全体にキレが増して、送球のスピードが格段に高まった。不安定だった守備もこの一年でだいぶ安定感が増した。 上のレベルではショートよりもセカンドの方が向いているかもしれない。いずれにしろ内野手の動きを極めてほしい選手。 　塁間タイムは4.1秒前後だったが、足のけがにより4.5秒前後に。足の状態が良い時は走塁が上手く、隙をついて盗塁を奪うことはできている。鈍重な強打者タイプが揃う日大三の中では野球センスの高さが光っている。

将来の可能性

　まだ秋見た中では絶対的なレギュラーとしては物足りなさを感じたが、一年間起用されることで、走攻守ともにレベルアップした姿を見せてくれた。難しい変化球を捌くバットコントロールの良さだけではなく、どんな投手にでも怯まずに喰らいつく姿勢が何よりの売りであると思う。 　猛練習で有名な日大三によって上でプレー出来る体力・技術を築いたと言ってよいが、それに頼ってプレーする選手ではない。これからも技術は細部までこだわり、喰らいつきの良さで東都一部の投手を苦しめ、貴重なチャンスメーカーとして活躍することを期待したい。