動きの土台となる足に注目しよう
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
雨が降りやすいこの時期は、グランドの状態が良くなかったり、練習場所を確保することが難しかったりする時期でもあります。いつもの環境とは違ったことも多くなるかと思いますが、できるところで、自分にできることを行い、練習の質を高めるようにしていきましょう。さて今回は体が地面と接地する部分である足に注目してお話をしてみたいと思います。
地面反力を最初にもらう足裏
緊張したときこそ、息を吐いてどっしりと重心を下げて臨もう
多くのスポーツは「地に足をつけて」行う動作が多いものです。足が地面を押すことによって得られる地面反力(床反力)はその力が大きくなればなるほど、動作の力強さにつながります(もちろん動作の過程で力のロスは生まれます)。投げる動作、打つ動作、走る動作とどれをとっても足が地面に接している時間があり、その力をまず最初に受ける体の部位は足裏です。
足裏は小さな面積ながら体重を支え、地面からの反力を得てスポーツの動作へとつなげていく大事な場所ですが、その機能が十分に働かないと「力のロス」が大きくなります。足裏で特にチェックして欲しいものとしては、足指が地面から浮いた状態になる浮き指です。浮き指は日常生活の変化や足指の保護などによって機能が低下してしまったことがその原因として挙げられます。自宅でできる簡単な浮き指チェックをしてみましょう。
【簡単な浮き指チェック】
1)平らな場所でまっすぐ立ち、前を見る
2)はがきや名刺くらいの厚さの紙を、誰かに足指の下に差し込んでもらう
3)紙が抵抗なく足指の下に入るようであれば、浮き指の可能性あり
浮き指を改善するエクササイズとしては、床にタオルを敷いてその上に立ち、足指を使ってタオルをたぐり寄せるタオルギャザートレーニングや、足指を大きく広げて行うグーチョキパー運動などがあります。また安全なサーフェス(表面)を選んで裸足で歩くことも足指の機能改善エクササイズにつながります。
緊張すると重心が高くなる
試合などで体が緊張してしまうと、呼吸は浅くなり、重心位置が高くなる傾向にあります。腰を落として捕球したつもりなのにボールがグラブの下を抜けてしまったり、高めのボールがストライクゾーンに見えて思わず振ってしまったりと、重心位置の変化はパフォーマンスにも影響を及ぼします。「ちょっと緊張しているな…」というときは、まず大きく息を吐いて体を落ち着かせましょう。呼吸を意識して繰り返すと、重心位置が安定します。また地面を踏みしめるように何度かジャンプを繰り返すと、足裏を刺激し、地面をしっかりとらえようと働きます。なかには試合前に他の選手をおぶってスクワットを行い、地面を踏み込む力を意識させるようにトレーニングを行う選手もいます。よい緊張状態を保つためにも足裏が地面をとらえている感覚を意識してみましょう。
疲労と偏平足
足裏アーチの構造は内側、外側、そして横アーチが三角形をつくり、スプリングの役割を果たす
体の大きさや重さに比べると足裏の面積は非常に小さく、さらにスポーツの場面では片足のみで体を支える場面が多くなります。片足の面積だけで全体重を支えていることを考えると、足裏への負担や疲労はかなり大きいと想像できます。さらに足裏はすべてが地面に接地しているわけではなく土踏まずと呼ばれる「地面につかない部分」が存在します。
土踏まずは足裏の親指側(内側)と小指側(外側)にそれぞれアーチ状の構造(縦アーチ)を持ち、さらに親指側から小指側にかけても横アーチが存在します。この3つのアーチによって土踏まずが形成されます。このようなアーチ構造はバネのスプリングのような役割を果たし、体重を支えているのですが、このアーチが何らかの原因によって落ちてしまったものが、いわゆる偏平足(へんぺいそく)です。偏平足には構造的なもの(骨の位置など)、筋肉の発達によって土踏まず部分にまで盛り上がっているものなどがありますが、中には疲労が原因となって筋力が低下し、アーチを維持できなくなったものもあります。
アーチが落ちた状態でプレーを続けていると、荷重ストレスが足首から膝、腰に負担をかけ、ケガの一因にもなります。日々気になる部位を中心にストレッチなどのコンディショニングを行っていることと思いますが、足裏のケアもあわせて行うようにしましょう。浮き指を改善させるエクササイズとともに、テニスボールなどを使って足裏を軽くマッサージしたり、100円ショップなどで手に入る筒型の青竹踏みなどを利用したりして、足裏から足指にかかる筋肉を伸ばし、ほぐしていくこともオススメです。
サーフェスの状態を確認しよう
足裏が接するサーフェス(路面・床面)についても確認しておきましょう。毎日、状態のいいグランドコンディションばかりではなく、時にはぬかるんだグランドでプレーすることも考えられます。また試合会場によっては人工芝のグランドというケースもあることでしょう。特にぬかるんだグランドでは、地面反力は良いコンディションの時に比べて小さくなり、足元が滑りやすくなります。このような状態のときはいつもよりも足の運びを細かくして、滑らないように意識することも必要となるでしょう。
野球は投球動作を繰り返すため、肩や肘に注目されがちですが、その動きは地面と接する足から始まります。足の機能を高め、よりよいコンディションを保つことは野球選手にとって必要不可欠なもの。足元を見つめ、土台を固めてパフォーマンスアップを目指しましょう。
(文=西村 典子)