自主練習と感染予防の両立
こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。
早いもので2020年最後のコラムとなりました。今年は新型コロナウイルスの影響により、春のセンバツ大会、夏の全国高校野球選手権大会ともに中止が余儀なくされ、今までにない試練の年となりました。全国大会の舞台が実現しなかったことは本当に残念ですが、野球ができる喜びや野球への思いがより強く実感された1年だったと思います。
2021年のシーズンに向けて、皆さんは今できることにしっかり取り組んでいることでしょう。
さて今年ラストのコラムでは自主練習と感染予防の両立というお話をしてみたいと思います。
自主練習の計画を立てておこう
自主練習の計画を立て、どこで何をするかを決めておこう
冬休み期間は学校の授業がなく、それにあわせてチーム活動もお休みするところが多いと思います。その中でも今まで積み重ねてきた体力レベルを維持するためには、選手の皆さんが個人個人で自主練習に取り組むことになると思います。
「トレーニング(練習)」「栄養」「休養」のバランスを考えながら、できれば自主練習の計画をあらかじめ立てておき、十分な休養をとりながら実施するようにしましょう。筋力は数日休養をとったからといって極端に落ちるものではありませんが、この期間が長くなってしまうとやはり筋力低下につながります。
自宅でできるもの(自重トレーニングやダンベルなどを使ったウエイトトレーニング、シャドーピッチング、ストレッチなど)、屋外で行うもの(ランニングや素振り、縄跳び、階段などを使ったトレーニングなど)それぞれを組み合わせながら、筋力だけではなくさまざまな体力要素を鍛えるようにしましょう。
トレーニングをどこで行うか
感染予防は筋力維持のためにはトレーニングを継続することが大切ですが、自主練習期間中にどこでトレーニングを行うのかということも考えておく必要があります。自宅にダンベルを準備して屋内で行うことも可能ですし、近隣にスポーツジムがある場合はそちらを利用して行うということもできると思います。
また屋外に出てグラウンドが使える場合や公園などでフィールドトレーニングを行うことも一つです。階段一つをとってもトレーニング方法はいくつも考えられますので、極論をいえばどこでもトレーニングを行うことはできるでしょう。
自宅では家族と、それ以外の場所では他人と接する機会がありますので、フィジカルディスタンス(物理的な距離)をとり、屋内では定期的に換気を行い、手指の消毒など基本的な感染予防の対策をとるようにしましょう。屋内の換気については窓を全開するということではなく、空気が部屋の中を通り抜けられるよう風通しを良くすることが大切です。
特に寒い時期ですので、窓を全開にして、ウエアを着込んで汗をかき、風邪をひいてしまっては本末転倒ですので注意しましょう。そして気になるマスクについてですが、人との距離が十分に取れている場合、運動中であることを考慮すると必須ではないと考えますが、施設などを利用する場合はそちらのルールを遵守するようにしましょう。
[page_break:ランニングとマスク]ランニングとマスク
マスクによってこわばった表情筋を取り戻すためにも楽しく笑顔で過ごそう
屋外でのランニングについては、夏場からマスクの是非が問われていましたが、さまざまな研究や論文などから運動中のマスクについては推奨しないという意見が大半を占めています。2020年7月1日には日本臨床スポーツ医学会・日本臨床運動療法学会が共同で『新型コロナウイルス感染拡大防止期間中における屋外での運動に際しての注意』という声明※が発表されました。
一部抜粋します。
・屋外運動時のマスクや口鼻を覆うものの着用は、基本的には推奨いたしません(熱中症や呼吸不全の危険が高まる可能性があり、海外では死亡例もあります)。
・新型コロナウイルスはすれ違った程度では感染しないと言われていますが、空いた場所や時間を選び、少人数(できれば一人)で、信号待ち等も含め2m以上のソーシャルディスタンスを保つようにしてください。
ランニングなどを行うと運動強度が上がり、呼吸数も多くなることが予想されます。なるべく人と接触する機会を減らしながら、自然な呼吸を妨げないようにランニングを行うよう心がけましょう。
心身のリフレッシュをはかろう
最近ではマスクによって顔を覆うことが日常となり、表情筋が硬くなってしまって表情が乏しくなってしまう…といったことが指摘されています。室内でマスクを外して過ごせる空間では、時には面白い動画や番組などを見たり、電話やオンラインでの会話などを利用して楽しく過ごす時間をもちましょう。
興味のあるものに没頭することもいいと思いますし、「今日はゆっくりする」と決めて過ごすこともいいと思います。生活にオンとオフのメリハリをつけて、2021年シーズンへの準備を行ってくださいね。
【自主練習と感染予防の両立】
●「トレーニング(練習)」「栄養」「休養」のバランスを考え、特に休養を十分にとること
●自主練習の計画をあらかじめ立てておこう
●トレーニングは自宅でも屋外でも行うことが可能。基本的な感染予防対策を忘れずに
●部屋の換気は窓を全開にするのではなく「風通しをよくする」こと
●ランニング中のマスク使用は呼吸を妨げるため推奨されていない
●表情筋をよく動かし、楽しく笑って過ごす時間も大切
※参考ページ)新型コロナウイルス感染拡大防止期間中における屋外での運動に際しての注意
(文=西村 典子)