Column

「ダークホース」ではなく「大本命」に  啓明学園(東京)【後編】

2019.03.09

 2015年4月に、元プロ野球選手の芦沢真矢氏が監督に就任した啓明学園。就任以来、着実にチーム力を伸ばしていき、昨秋は遂に都大会本戦への出場も果たした。
 今回は、そんな啓明学園に訪問し、チーム力向上の裏側や今年のチームの躍進の理由について迫った。後編では、ブロック予選を勝ち抜き、東京都大会出場を果たした裏側に迫っていく。

◆元プロ監督が浸透させた「グランドに出たくなる野球」啓明学園(東京)【前編】

投球練習の球数増で立ち上がりの不安定を解消

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啓明学園のエース・二宮悠河

 打撃力には一定の自信を持っていた一方で、エース・二宮悠河の立ち上がりや勝負所でのピッチングに不安があった啓明学園。そんな中で迎えた秋季東京都大会ブロック予選だったが、いざ大会に入るとエースの二宮が見違えるような投球を見せた。

 低めを丁寧に突いて、ロースコアの試合展開でも淡々と抑え続ける。不安のあった立ち上がりも、スムーズな試合の入りを見せ、打線が調子を落とす中で獅子奮迅の活躍を見せたのだ。
 二宮が秋季大会で大きな成長を遂げた理由を、芦沢監督は次のように説明する。

 「同じルーティンで試合に入ってるも同じ結果しか出ないので、何か変えていこうよと話をしました。例えば試合前の投球練習の球数を増やすなど、そういうところから改善して、準備ができていたか確認して試合に臨むようにしました」

 二宮自身も、試合前の投球練習の球数増加には手応えを掴んでいる様子を見せる。実際の球数も明かした上で、次のように語った。

 「これまでは試合前に疲れるのが嫌だったので、20〜25球くらいしか投げていませんでした。ですが投球練習を20球ぐらいプラスして、しっかりと投げ込むことで立ち上がりが良くなり、秋季大会は上手くいきました」

 試合前の投球練習の球数を増やすことは、不安もとても大きかった。だが、二宮は変化する勇気を持ったことで、自身の課題克服に成功し、秋季大会で大きな成長を遂げたのだ。

[page_break:一人でも違うベクトルを向いていたら勝てない]

一人でも違うベクトルを向いていたら勝てない

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バレンタインのケーキの前に集まる啓明学園の選手たち

 元々強力だった打線に加えて、エースの二宮が一本立ちしたことで、更なる飛躍の可能性を秘めた啓明学園。主将の佐々木陽平は、秋季大会では関東大会へ出場し、夏の大会では甲子園に出場することを目標に掲げていると語り、気合い十分の様子を見せる。

 「全員で更なるレベルアップに取り組み、春の大会で結果を出して、夏の大会では『ダークホース』では無く、『大本命』と言われるように頑張ります」

 また秋に大きな成長を見せた二宮も、エースの自覚を感じさせる。高い目標を目指しつつも、まずは目の前の勝利や課題の克服が大事であることを強調し、春の大会、そして夏の大会への意気込みを語る。

 「まずは、神宮で試合をすることを目指しています。夏は負けたら終わりなので、今までの課題をクリアして、自分のすべてを出せるように怪我に気をつけて頑張っていきたいです」

 西東京のチームが神宮球場で試合するというのはベスト8以上に入らなければならないということだ。選手達が強い意気込みを見せる一方で、芦沢監督は現状を冷静に分析する。夏の大会を勝ち抜く難しさ、そしてチームのこれまでを振り返り、これからの戦いで大事になってくるのはチーム全員の力であることを強く語った。

 「接戦になったときに固くなるのでは無く、どれだけ自分の力が出せるようになるのかが鍵になると思います。特定の選手が活躍すれば勝てるものでも無いですし、全員がキーマンですよね。一人でも違うベクトルを向いていたら、やっぱり勝てないと思います」

 芦沢監督がプロの世界で培った勝負勘と、選手たちが放つ独自の明るさ。二つが上手く融合した時、東京都をひっくり返してしまうような怒涛の啓明学園旋風が巻き起こるに違いない。

(文・栗崎祐太朗

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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