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県岐阜商に名将就任で大垣日大の対決も注目、中京学院大中京なども絡む【岐阜県・2018年度版】

2018.05.06

県立岐阜商が作り上げた岐阜県高校野球の歴史

県岐阜商に名将就任で大垣日大の対決も注目、中京学院大中京なども絡む【岐阜県・2018年度版】 | 高校野球ドットコム
勢力を争った県立岐阜商と中京

 戦前から戦後にかけて、岐阜県の甲子園出場校の歴史は1932(昭和7)年に初出場を果たして以降、80年代までは岐阜商という文字だけがやたら目立っている。その合間に49年夏に準優勝を果たしている岐阜や、50年春から3季連続して出場している長良、58年に春夏出場の多治見工がポツンと登場して、辛うじてアクセントをつけている程度である。岐阜商は69年に市立岐阜商が設立されたこともあって、両校を区別するために県岐商と市岐商と表記されるようになった。

 県岐商としては50年代前半にブランクがあるものの、岐阜県の高校野球史はそのまま県岐阜商野球部の歴史でもあると言ってしまってもいいくらいでもある。それほど中等野球時代から岐阜商時代が続いていた。

 その構図が、70年代から徐々に変化してくる。岐阜短大付(現岐阜第一)が70年に春にベスト8、夏はベスト4に残って、一大旋風を巻き起こした。当時のメンバーには、後に巨人にドラフト1位指名される湯口俊彦投手がいた。このあたりから、中京商(岐阜中京から中京商へと校名変更し、再び中京を経て現在は中京学院大中京)が台頭してきて、73年には春夏連続出場し、74年、75年夏にも出場。「岐阜にも中京あり」を印象付けた。

 さらには大垣商美濃加茂東濃実岐阜三田(その後岐阜藍川と統合して現岐阜城北)などもあるが、基本的には県岐阜商と中京が競うという構図となってきていた。

 岐阜県の高校野球のメイン会場でもある[stadium]長良川スタジアム[/stadium]は旧岐阜県営球場時代から金華山を見上げる長良川べりにある。県岐阜商の校歌にも、「緑滴る金華山 水清冽の長良川 山河自然の化を享けて…」と謳われている。『国盗り物語』の斎藤道三の岐阜城を仰ぎ見ることができるロケーションなのだ。そのお膝元の県岐阜商が文字通り天下をとったのは戦前に春3回、夏1回で戦後はついに全国制覇がないまま今日に至っている。そして、それがそのまま岐阜県の高校野球の全国的な位置づけでもあるということになる。

[page_break:歴史をつくってきた県立岐阜商の過去]

歴史をつくってきた県立岐阜商の過去

県岐阜商に名将就任で大垣日大の対決も注目、中京学院大中京なども絡む【岐阜県・2018年度版】 | 高校野球ドットコム
県立岐阜商時代の高橋純平(現・福岡ソフトバンクホークス)

 県岐阜商の歴史をざっと追ってみよう。
 戦前は春に好成績が多い。これは、ある意味では仕方がない要素だ。というのも、当時夏は東海地区で1代表ということになっていた。従って、甲子園に出るには中京商(現中京大中京)を頭とする愛知県代表を倒さなくてはならなかった。これは甲子園で勝つよりも難題だともいわれていた時代である。

 実際、代表となった年は強く、戦前の2回の夏の代表はいずれも決勝まで残っているのだから力のあることを証明している。だから、同地区から複数代表が選ばれる春は成績がいいのも当然なのである。

 それくらいに当時の東海地区の野球のレベルは高かったのだ。春には優勝2回準優勝1回というのが戦前の実績である。戦前だけの成績でいうと、岐阜県からは岐阜商以外の甲子園出場はない。春夏合わせて都合12回出場ということになる。そのうち実に5回も決勝進出を果たしているのだ。これはやはり驚異的なことである。決勝進出確率40%以上ということになる。

 こうした強さは戦後になっても継続された。1956(昭和31)年は清沢忠彦投手(慶応義塾大→住友金属)で春夏ともに準優勝を果たす。清沢投手は翌年も甲子園に登場しノーヒットノーランも達成している。その2年後には戦後になって4度目の準優勝を果たすが、その時の二塁手が高木守道(後に中日監督)だった。

 こうして明らかに全国でもトップレベルを走り続けていた岐阜商だったが、64年夏のベスト4を最後に、1~2勝止まりとなってしまう。それでも、初戦負けがほとんどないのは、さすがといえばさすがかもしれない。

 ところで、新しくできた市岐商も76年、91年、03年夏に甲子園に出場を果たしている。伝統の県岐阜商は、09年夏には久しぶりに上位進出を果たして、ベスト4に進出している。さらに、15年春は好右腕投手高橋純平(ソフトバンク)を擁して全国的に注目された。ただ、さらなる上を目指していってほしいという根強いOB会の押しなどもあって、18年からは県岐阜商出身の鍛冶舎巧監督が就任した。社会人野球のパナソニックで指揮を執り、同社取締役などを経て、秀岳館の監督として春夏のベスト4に導くなどの実績も評価されて招聘されたものだ。

[page_break:大垣日大などの新勢力による勢力図の変化]

大垣日大などの新勢力による勢力図の変化

県岐阜商に名将就任で大垣日大の対決も注目、中京学院大中京なども絡む【岐阜県・2018年度版】 | 高校野球ドットコム
左から、土岐商・大垣日大・関商工・岐阜城北

 2000年代に突如として大垣日大が頭角を現してきており、一気に勢力構図にも変化が現れた。63年に日大大垣として創立していたが、日大との系列の仕組みの変化によって89年に大垣日大と校名変更。創立当初から野球部は存在していた手が、05年に東邦で38年間指導してきて優勝1回準優勝2回など、輝かしい実績のベテラン阪口慶三監督が就任。07年春に当時の希望枠で甲子園出場を果たすと、一気に決勝まで駆け上がって一気に全国区となった。夏もベスト8に進出。

 その後も10年、11年と春連続出場。13年と14年は夏に連続出場。わずか8年の間に春3回、夏3回の出場で通算13勝6敗は見事である。今や、完全に県岐阜商に対抗する勢力となっている。

 岐阜県の高校野球ファンとしては、両校のベテラン監督対決もまた、興味が尽きないところである。

 これに、春夏5回ずつ出場を果たしている中京学院大中京が食い下がり三つ巴という形が現状である。さらには、15年夏に出場を果たした岐阜城北や、10年夏の土岐商、11年夏の関商工に市岐阜商なども食い下がっている。ここに割って入るかのように、福知山成美を何度も甲子園に導いている田所孝一監督を招いた岐阜第一も復活を目指している。また、名門岐阜もOBなどの後援体制も含めて強化していこうという姿勢である。

 他には女子バレー部などスポーツの盛んな益田清風岐阜総合学園岐阜工東濃実などの実業系校や、私学では帝京大可児が愛知県の豊川で実績を挙げた田口聖記監督を招聘して強化を図る。さらには岐阜聖徳学園美濃加茂などが追いかけている。

(文:手束 仁

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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