常葉大橘が3回に6点、6回に4点の大量点で加藤学園にコールド勝ち

先制タイムリーを放ち喜ぶ常葉大橘・高橋 凛
<第75回秋季東海地区高校野球静岡県大会:常葉橘11-1加藤学園>◇1日◇準決勝◇草薙
いよいよ準決勝となった静岡県大会。ここで勝てば、地元開催の東海地区大会への進出が決まる。加藤学園はコロナの影響で中止になった2020年のセンバツ出場を果たしている。その夏に開催された甲子園交流試合で勝利も果たした。常葉橘は2012年など夏は3度の出場を果たしているが、春はまだ甲子園に届いていない。秋季大会での最高成績は、2007年に東海地区大会ベスト4に進出して、常葉対決で菊川に敗れた時である。
この秋、県大会では加藤学園は東部地区予選を3試合無失点で勝ち上がってきている。そして2回戦からの登場となった県大会では島田、島田商、春季大会優勝校の浜松開誠館を下しての進出だ。常葉橘は中部地区予選2回戦で敗れて、敗者戦から這い上がってきての県大会。飛龍、浜松西、静岡商、昨秋の県大会と東海大会準優勝校の聖隷クリストファーと難敵を倒しての準決勝だ。
加藤学園は背番号10の吉川、常葉橘はエースナンバーの杉田という両左腕が先発。初回は、ともに先頭打者が安打で出塁して、塁は進められたが両投手共に慌てることなく、後続を打ち取ってまずは無難な立ち上がりだった。これを見たら、ロースコアの競り合いになっていくのかと思われた。ところが、試合は思わぬ展開になっていった。
2回、常葉橘は先頭の5番山本が左越え二塁打すると、暴投で三塁へ進み、1死から7番高橋凛が右前打して三塁走者を迎え入れて先制した。そして3回、常葉橘は1番からの好打順で渡辺、長谷川が連打し、内野ゴロで1死二、三塁とする。ここで4番望月が右翼線へ二塁打を放ち2者をかえす。さらに三塁へ進んでいた望月を山本が中前打でかえして4点目。序盤の主導権は常葉橘が握った。死球で一、二塁となったところで、米山学監督はたまらず吉川を諦め、2人目として酒井を送り出した。しかし、酒井ももう1つ制球が整わず四死球で押し出し。さらに、内野ゴロ本塁悪送球もあって、この回打者12人で6点が入るビッグイニングとなってしまった。
7点を追いかける形になった加藤学園は、打って行くしかないのだが、4回は2番池田と続く曽根の連打で一、三塁として、1死後、内野ゴロで1点を返した。しかし、加藤学園の反撃もここまで。
試合の流れとしては、さらに追加点の欲しかった常葉橘だったが、6回、失策と連続四球で得た2死満塁の好機に8番鈴木幹太が加藤学園の3人目の左腕内藤から、左前へ適時打で2点。さらに杉田も左中間二塁打を放ち、この回4点。その裏も、杉田がしっかりと3人で抑えて、1回の攻防の段階では、予想だにしなかった6回10点差でのコールドゲームが成立した。
常葉橘は盗塁も絡めて、機動力を使った積極的な攻撃も功を奏したといえよう。初回、得点にこそならなかったが、1番渡辺が中前打してすかさず二盗。このあたりで、「何かやってくるぞ」と相手に思わせるプレッシャーもかけられたのではないだろうか。
片平 恭介監督は、「最初は少し硬かったんですけれども、練習通りやろうと、橘らしく仕掛けていこうということでやって行ったことが、たまたまこういう形になったのだと思う」と振り返っていた。そして、「動いていけば、相手のミスも出るということです。これまで、追う展開の厳しい試合が多かったのですが、予選の敗者戦から勝ち上がって一つひとつの試合を重ねていくうちに、それぞれが自分たちの役割を果たせるようになった」と、戦いながらチームとしての成長を喜んでいた。
加藤学園にとっては、まさかの大量失点で、悪夢の3回6失点となってしまった。米山監督としてもゲームプランが崩れて、手の施しようがなかったというところでもあったようだ。
(取材=手束 仁)