新たな潮流の活発化か? 昌平が浦和学院を下しスーパーシードで関東へ!

歓喜の昌平ナイン
<秋季埼玉県高校野球大会:昌平6-3浦和学院>◇28日◇決勝◇県営大宮
県営大宮球場で行われる決勝戦は浦和学院対昌平という優勝候補同士の一戦である。例年であれば、既に関東大会出場を決めている両校だけに、高校ごとにそれぞれの思惑が働くのだが、今回は地元開催の関東大会ということもあり、優勝校は1回戦シードとなり、1勝すればセンバツ出場確定ラインであるベスト4が決まるという、いわゆるスーパーシードの権利が与えられる。それだけに両校共にモチベーションの高い決勝戦となった。
スタメンでは、浦和学院はこの日5番に濱野 裕真外野手(2年)を抜擢。前回5番の渡邉 聡之介投手(2年)が7番に入り、この日8番・捕手に林幸太(1年)が入る。一方の昌平は前の試合7番の小林 驍汰内野手(2年)と8番の平田 春樹内野手(2年)を入れ替える。
先発は浦和学院が前の試合左翼を守っていた右腕・渡邉、一方の昌平は1年生左腕・石井 晴翔が先発し試合が始まる。
先制したのは昌平であった。
1死から2番・金子 晄也内野手(2年)が右中間へ二塁打を放ち出塁すると、2死後、4番・齋藤 陽貴捕手(2年)が右前適時打を放ち1点を先制する。
だが、浦和学院も2回表、この回先頭の濱野がセンターフェンス直撃の三塁打を放つと、続く名波 蒼真内野手(2年)の内野ゴロの間にすぐさま同点とする。
一方の昌平は3回裏、この回先頭の金子晄が中前安打を放ち出塁すると、続く磯木 一路内野手(2年)のところで昌平ベンチはエンドランを仕掛ける。磯木はこれに応え中前安打を放ち無死一、三塁とすると、磯木はすぐさま二盗を決め、無死二、三塁とする。ここで、4番・齋藤がきっちりと犠飛を放ち1点を勝ち越す。
浦和学院ベンチはここで継投に入り、満を持してエース左腕・伊藤充樹投手(2年)へスイッチし、捕手も轟弘成(1年)へ交代する。この日はこれが誤算であった。どちらかといえば伊藤は守備陣に足を引っ張られた形だ。
昌平は4回先頭の小林が遊撃内野安打で出塁すると、すぐさま二盗を決める。
1死後、1番・甲斐 陸斗外野手(2年)が中前適時打を放ちまず1点、続く金子晄の一塁ゴロを一塁手が後ろに逸らし適時打となり4対1とする。さらに、3番・磯木の一塁ゴロがエラーとなり、1死一、二塁とすると、続く齋藤が四球を選ぶと、さらにこの球が暴投となり、二走・金子が一気に本塁を奪い5対1とする。
これで流れをつかんだ昌平は5回裏、4回途中から登板した3番手・月野 龍投手(2年)に対しても攻撃の手を緩めず、この回先頭の酒井 啓多外野手(2年)が四球を選び出塁すると、続く平田がきっちりと送り1死二塁とする。ここで8番・小林が左越えの適時二塁打を放ち6対1とする。
対する浦和学院の反撃は最終回であった。
8回から登板した3番手・エース左腕の渡邉俊輔投手(2年)を攻め、1死から5番・濱野が右前安打を放ち出塁すると、続く名波が四球を選び1死一、二塁とする。2死後、8番・齋藤 廉武(2年)が右前へポトリと落ちる2点適時打を放ち一矢報いるが反撃もここまで。
結局、昌平が浦和学院を6対3で下し、優勝を飾った。また、県1位校としてスーパーシードの権利も獲得した。
昌平はついに主軸の金子晄が復活。元々、下位からも長打が出る打線に、いよいよ切れ目がなくなった。
「決勝の先発は石井と3人で継投と決めていた。継投タイミングは齋藤と相談して。浦和学院を倒して優勝したというのが大きい。新チームが始まった当初は県内負けなしでと話していましたが、目標を切り替えてこのまま負けなしで行こうと伝えたい」(黒坂監督)
先発の石井は1年生ながら決勝の先発にも「投げること自体が楽しくて」(石井)と、試合開始当初から常に笑顔で好投した。このチームには何よりチームの大黒柱である正捕手・齋藤の存在が大きい。彼がチームの緩みを見透かし厳しいことを言えるだけに監督からも継投タイミングも含め全幅の信頼を置いている。課題は投手陣であったが、タイプの違う投手陣は複数おり、クレバーなリードのできる齋藤もいるだけに何とかやりくりはできそうだ。
一方の浦和学院は、この日まさかの守乱で流れを呼び戻せなかった。
「最後に守備の綻びが出てしまった。先発の渡邉はまずまずだった」。捕手が固定できないことに「そうなんですよ。いつも受けているバッテリーのコンビで臨んだんですが…。打線も中盤以降止められてしまったのが大きい。とはいえ、まだまだ発展途上のチームなので。関東大会までに粘り強さを」(森監督)と、悔しさをにじませつつも、むしろここまで来れたことを評価し、関東大会での逆襲を誓った。
打線も今大会ややクジ運にも恵まれず、大会序盤こそ良い入りをしたが、強豪校との連戦で良い投手にぶつかり徐々に調子を落としていった印象を受ける。何より一番の悩みの種である捕手を固定できなかったことが関東でどういう影響を及ぼすか。この日登板しなかったエース級の田中を含め投手陣は複数いるだけに、問題はそれを操る正捕手をどうするかが下位打線の充実と共にセンバツ出場への生命線になりそうだ。
今大会、来春のシードは北部が最多の3校と北部の頑張りが目立った大会であった。また、今大会は元々、組み合わせ抽選時のシード決め投票の顔ぶれがやや変わりつつあるのも印象的であり、このまま埼玉の高校野球の勢力図が塗り替えられてしまうのか。それとも私学4強の巻き返しはあるのか。今後に注視していきたい。
最後に今大会は新たに継続試合が始まった。雨が多く日程は度重なる変更を余儀なくされ、大会序盤は不戦敗などもあった。そんな中、最後まで大きな問題もなく無事に大会を終えた大会本部に敬意を評したい。
(取材=南 英博)