埼玉栄・米倉、エースとしての自覚が見えた4イニング9奪三振



3月から始めたワインドアップで投げる米倉貫太(埼玉栄)

 春季埼玉県大会3日目に、秋ベスト8・埼玉栄が登場した。埼玉栄のエース・米倉 貫太は、184センチの長身から140キロ後半の速球と多彩な変化球を投げ分ける大型右腕として注目を浴びており、この試合にもなんと9球団のスカウトが集結した。対するは昨秋ベスト32の熊谷工。地区予選ではすべて1点差勝利の粘り強いチームだ。

 注目が集まった米倉の立ち上がりだが、1番山川にセンターへ二塁打を浴び、3番小池には四球を与え、一死一、二塁のピンチ。しかし米倉はここから粘り、二者連続三振でピンチを切り抜ける。

 1回裏の埼玉栄打線が熊谷工の先発・小池に襲い掛かる。一死一塁から3番和田 康平(2年)がバックスクリーン弾を放ち、2点を先制。和田は熊谷シニア出身の大型一塁手。もともと投手として入部したが、肩の故障で一塁に専念となった。若生監督は「打撃は本当に素晴らしい素質を持っています。本塁打は打てるし、変化球も対応できる技術がある」と高く評価しており、3番起用も「先制点をとるために、必ず回る3番に起用したかった」と理由を明かす。和田はしっかりと指揮官の期待に応えた。

 和田の一発の影響は大きかった。熊谷工の先発・小池はシード入りを決めた学校のエースと比べてもそん色ないストレートの勢いと、スライダーの切れがある右の好投手だが、先制点で勢いづいた埼玉栄に攻略されてしまう。埼玉栄打線は無死一、二塁からダブルスチールを仕掛けると、捕手の三塁送球が逸れる間に二塁走者が生還し1点を追加。さらに8番米倉が自信を援護する右中間への適時三塁打。その後も、9番庄司、2番輪千の適時打でこの回4点を入れ、6対0と大きくリードを広げた。その後も着実に加点し、6回裏、無死満塁から5番海崎の犠飛で6回コールド勝ちを決め、3回戦進出となった。

 エース・米倉は4回を投げて、9奪三振の快投。常時140キロ前後、最速143キロのストレートは回転数が高く、スライダー、カーブ、フォークを制球力良く投げ分け、熊谷工を寄せ付けなかった。

 好投の要因として、腕を振ることを意識した以外にも、米倉自身が若生監督に技術的なアドバイスを求めたことも復調のきっかけになった。
「初回のピッチングで自分の投げる感覚、投球フォームで違和感があったので、その後聞きに行きました。監督からは左足を上げて、そのあと踏み出す時、腰が入っていないと指摘をいただきました。そのアドバイスによってだんだんしっくりきて、4回の3アウト目は左打者の内角ストレートで見逃し三振に打ち取ることができました。あの球はしっかりと指にかかっていて、今日の試合の中ではベストストレートです。
 なぜ自分から聞きに行ったのかというと、やっぱり勝ちたいので。背番号1を任されて、チームを勝たせるにはどうすればいいかと考えたとき、何か不安に思ったら、すぐに相談しようと思ったんです」
 エースとして、人間としての成長が生んだ好投だった。また打者に威圧感を与えるためにワインドアップに取り組むなど、様々なことを試す米倉は進化の途中である。
 「まだまだこんなものではないですよ。ある練習試合では、打たれる雰囲気がしないピッチングを見せていましたから」と若生監督はエースの投球に厳しく注文をつけていた。その注文をクリアしたときの米倉はどんなピッチングを見せてくれるのだろうか。

 エースのピッチングだけではなく、打線は2年生スラッガー・和田の登場など多くの選手が昨秋に比べて打撃面で成長が見え、スキのない大型打線になりつつある。若生監督は「投手はまだまだですけど、打線は良かったと思います。でもけがで出場していない主力選手は控えていますし、伸びしろはありますよ。それを楽しみにしたいです」とさらなる打線爆発を期待していた。

(取材・写真=河嶋 宗一