京都翔英の先発・榎本和輝

投手戦の行方

ゼロの数字がスコアボードに刻まれるたびに、スタンドからはため息が漏れていた。両投手の底知れぬ粘りと、負けられないという意地がぶつかりあった決勝戦は、秋の戦いのファイナルにふさわしい熱戦となった。

報徳学園のエース・乾 陽平(2年)は前日の大阪桐蔭戦で7回コールドながら81球を投げ切っていた。初回は三者凡退で切り抜けたものの、以降のイニングは毎回のように走者を背負った。2回から6回まではいずれも三塁に走者を進めるほど苦しいピッチングが続いたが、それでもあと1本を許さない。バックの堅い守りにも支えられ、京都翔英打線を爆発させなかった。

対する京都翔英の先発・榎本 和輝(2年)は、前日はわずか1イニングしか投げておらず、乾とは対照的に疲労の残らないマウンド。だが、初回から制球に苦しんでボールが先行。四球の走者を置いて4番の片濱大輝(2年)にあっさり先制打を許し、もたついた面もあったが終盤以降は「力を抜いて投げると、尻上がりに良くなった」と本人は振り返った。

報徳学園はディフェンス重視のチームスタイルに対し、京都翔英は攻撃型のチームスタイル。互いにはっきりした特徴を持ってはいたが、今大会の勝ち上がり方は逆だった。報徳学園準々決勝では大阪商大堺準決勝では大阪桐蔭を相手に投打で圧倒して連続でコールド勝ち。京都翔英は準々決勝履正社準決勝龍谷大平安との厳しいゲームを制してきた。京都翔英の太田弘昭監督は「今日の試合も昨日までのような厳しい試合になる。我慢すれば昨日までのように勝てるぞ」と、ナインに言い聞かせてきた。

だからこそ、京都翔英ナインはヒットが出てもなかなか得点ができない昨日と同じような展開を、ぐっとこらえて試合に臨んだ。13回のうち、三者凡退だったのは3イニングだけ。援護点が入らないまま黙々と投げ続ける榎本を「俺らを信じろ」と女房役の山口 翔悟主将(2年)は、榎本に声を掛け続けた。