2010年08月15日 阪神甲子園球場 

報徳学園(兵庫)vs福井商業(福井)

2010年夏の大会 第92回全国高校野球選手権大会 2回戦
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試合シーン(報徳学園)

ベースカバーに現れる差

 明らかに軽視されている。

 高校野球の練習を見ていてそう感じるひとつが、盗塁の際の二遊間のベースカバーだ。高校野球で1試合にひとつも盗塁が試みられない試合はほとんどない。盗塁をしないにしても、ワンバウンド投球を捕手がはじいたのを見て走者が走る場合もある。ワンバウンド投球が1球もない試合などありえない。それなのに、このための練習をしているチームはほとんどない。やるとすれば、一、三塁の重盗阻止か捕手の送球練習ぐらい。送球練習にしても、受ける野手は初めからベースで待っているのがほとんどだ。あとは、練習試合など実戦の中でやるぐらいだろう。

 試合をすれば必ずあるプレー。それどころか、頻度は高い。ベースカバーが遅れ、捕手の送球が外野に抜ければ、走者に三塁進塁を許すことになる。本来なら、捕手が悪送球した際のバックアップの練習までやらなければいけないところだ。 

それなのに、なぜやらないのか。

理由は簡単だ。

「そんなことまで練習するほど時間がない」から。

 打撃練習もすれば、ノックもする。走塁練習やサインプレーもやらなければいけない。練習ではやるべきことがたくさんありすぎるのだ。だから、そんな小さなプレーに時間を取れない。

だが、これは言い訳にすぎない。いつでも必ずこのベースカバーを練習する機会があるからだ。

 それは、試合中。攻守交替すると、投手は投球練習をする。最後の1球を投げ終わると、捕手が二塁へ送球してボール回しをするのが慣例になっている。その二塁送球時を利用すればいいのだ。1試合に9回。練習試合を11試合やれば、ほぼ100回も練習できる。それなのに、この機会を無駄にしているチームのなんと多いことか。ほとんどの選手が、捕手が投げる前からベースの上で待っている。試合では、こんなことはありえないのに、だ。練習では待っているところに送球が来るだろうが、試合では、高く抜ける送球もあれば、ワンバウンドの送球もある。ストライクが来る確率の方が少ないのだ。

 49代表校中、捕手の送球時に二遊間が毎回ベースカバーに行く練習をしていたのは、八戸工大一佐野日大倉敷商本庄第一能代商だけ。その中でナンバーワンは八戸工大一。二遊間がイニングごとに入れ替わり、ある程度の距離を取ってしっかりとやっていた。

 小さいことの積み重ねが、大きな成果になる。もちろん、やらなければ試合でミスが出る。

 報徳学園福井商の試合では、3回の福井商の攻撃時にこんな場面があった。2死一塁から一塁走者の三好巧真がディレードスチール。通常の盗塁とは違ったタイミングだったため、報徳学園の二遊間は気づくのが遅れ、ベースカバーにも遅れた。送球を外野に逸らすことはなかったが、送球に追いつき、捕るのが精一杯だった。

「甲子園で、ファーストからの(「走った」という)声が通らなかった」(ショート・長谷場隆)

「事前に確認して長谷場が入る予定だったんですけど、バッターの方に気を取られて遅れました」(セカンド・谷康士朗)

 報徳学園の二遊間も捕手の二塁送球時にベース上で待っている。さらにいえば、走者がいても、捕手が投手に返球する際のバックアップには入らない。普段から小さな取り組みを積み重ねていないから、試合でこういうことが起きるのだ。

 2人に「試合中、必ずキャッチャーが二塁に投げる場面があるけど、いつかわかる?」と質問してみた。谷はすぐに答え「長谷場と話し合って練習しようと思います」と言ったが、長谷場は「ないです」と憮然とした表情だった。1回戦の砺波工戦では好守を連発。守備への意識が高い選手かと思っていたが、残念だった。

 今春のセンバツでは帝京のショート・松本 剛が1イニングごとに遠い距離から入ったり、近い距離から入ったりと意識の高さを見せていた。松本はこう言っていた。

「ベースで待っていれば簡単ですよね。送球が逸れても簡単に捕れます。でも、走ってベースに入れば足場の確認になりますし、距離感をつかんで入れば、うまくベースをまたげるようになります。それに、感覚はグランドによっても、守る位置によっても変わります。だから、回によって近めから入ったり、離れて入ったりしているんです。やっぱり、キャッチャーから毎回同じボールが来るわけではないですし、ベースで待って捕るなんて実戦ではありえないじゃないですか。ベースで待って捕っても意味がないと思います」

 技術だけではない。こういう気づき、考え、積み重ねが選手としての成長を促し、試合で大きな成果をもたらしてくれる。

「一回、一回ちゃんとやるのは面倒くさくなるときもあります。でも、あれで足が動くようになるし、リズムが作れるんです」(松本)

週末ごとにダブルヘッダーで行われる練習試合。4試合×9イニングで36回も練習する機会がある。1ヵ月あれば36×4週間で144回もチャンスがあるのだ。この機会を生かすも殺すも自分次第。面倒くさいと思わず、意識を高くして取り組んでほしい。練習し、準備をして試合に臨めるかどうか。準備ができていれば、試合での気持ちも違うし、たとえミスをしても納得できるはず。たかがベースカバーと軽視してはいけない。そのベースカバーで負けるかもしれないのだから――。

(文=田尻 賢誉
(写真img01~16=宮坂 由香
(撮影img17~26=鈴木 崇




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