2010年08月10日 阪神甲子園球場

明徳義塾(高知)vs本庄一(埼玉)

2010年夏の大会 第92回甲子園 1回戦

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練習は裏切らない

座覇政也(明徳義塾)


「経験の差が出た」2点ビハインド

「甲子園ということで前半はチーム全体が堅かったです」。試合後、キャプテンの松森大河中堅手が話したように、試合前半は明徳義塾のチグハグ感が目に付いた。前日の割り当て練習を見ても調子は上向きだったはずの打線は「(打者の杉原賢吾が)1年生だったのでサインを出そうか迷った」(馬淵四郎監督)末、失敗に終わった2回裏のスクイズをはじめ、本庄一の先発田村 和麻(3年)を打てそうで打ち崩せず。やがて試合はこう着状態に突入していく。

ついには6回表、ここまで1安打ピッチングを続けてきた先発右腕・前田 克樹(3年)が「対策は考えてある」(馬淵監督)はずのドラッグバントを決められたことをきっかけに2失点。特に先制点はスクイズを失敗した杉原のパスボールと、明徳義塾は田村和をはじめ2年前の第90回記念大会では北埼玉代表として甲子園の雰囲気を経験している本庄一との「経験の差」がもろに出る最悪の展開で、ビハインドを許してしまったのである。


「練習の成果が出た」終盤の大量点

しかし彼らは終盤、高知大会からチームの礎となっている「豊富かつ緻密な練習」でこの劣勢を見事に跳ね返す。先陣を切ったのは6回裏に代打の切り札として送られた座覇政也(3年)である。

普段は3塁コーチとしてチームの走塁をコントロールしている彼は「ワインドアップのときにタイミングを合わせやすい」田村和のウィークポイントをコーチャーズボックスで把握。秘かに自分でタイミングを合わせて打席に立つと、真ん中高めの直球をレフトスタンド中段へ。昨秋には坊っちゃんスタジアムでのシートバッティング、さらに前日練習でもスタンドへ運んでいたパワーを存分に見せ付ける形で、甲子園の空気を一気に自らに引き寄せたのであった。

「座覇さんのホームランでベンチのムードが一変しました」(杉原)、「1点差なら追い付けると思った」(松森)。

その後の試合はケースバッティング、走塁練習にじっくり時間をかけるなど「勝つための練習」を貫いていた前日のVTRを見ているかのような展開となった。7回は「レフトがもたついていたし、中継のショートの位置もおかしかったので迷わず次の塁を狙った」シング・アンドリューの3塁打を契機に一挙3点で逆転。8回にも「ファーストがファウルフライ捕球を腕上げてアピールしている瞬間に2塁から走った」岩元 俊樹投手(3年)のタッチアップが活きる形で2点を追加。かくして彼らは「練習は裏切らない」ことを見事に証明しつつ、馬淵監督に甲子園20戦連続初戦突破という偉業をプレゼントしたのである。

そして明徳義塾の2回戦は春の全国王者・興南と対戦することに。当然下馬評は興南有利が圧倒的であろうが、選手たちも「甲子園初戦」の堅さが取れたことで今度は試合序盤から練習の成果を発揮できるに違いないはず。多くの1回戦突破チームが試合翌日を休養に充てる中、通常通りの練習を組んで王者打倒を目指す彼らが果たしてどんな闘いを見せてくれるのか。今から期待に胸が躍る。

(文=寺下 友徳
(撮影img09~34=宮坂 由香




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