2010年08月07日 阪神甲子園球場   

九州学院(熊本)vs松本工業(長野)

2010年夏の大会 第92回甲子園 1回戦

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完投勝利をあげた渡辺(九州学院)

1番打者の役割

 1番打者の役割。

どんな形でも、塁に出ること―――。

それは、全国どこの高校にも共通していることだろう。
しかし、開幕戦の先攻を取った九州学院の先頭打者・井翔平はそれだけではないと、第1打席に向かった。結果は遊撃ゴロだが、これは単なる凡打ではないと、彼自身思っている。

 「初球から打って、塁に出ることも良いことなんですけど、『(この投手は)打てるんだぞ』ということを見せることも大事だと思います。第1打席はショートゴロでしたけど、しっかり役割は果たせた手ごたえはありましたし、(自分にとっても)次は打てると思えました」。

 九州学院のチームカラーは初球から積極的に打っていく打撃力だ。そうして、地区大会を勝ち上がってきた。とはいっても、全国大会である。目の前に対峙する相手は全国を代表する投手であり、今大会№1右腕投手候補の一人とも言われた、松本工柿田 裕太なのである。

好投手を前にいつもの打撃ができるかどうかは、やってみないとわからない。だからこそ、先頭打者の役割は重要だったのである。

続く2番の溝脇隼人がファーストストライクを打って内野安打となると、山下翼はセーフティバントを成功させ、1、2塁。4番・萩原英之がファーストストライクを捉えて中前安打で満塁とすると、5番・冨高央崇が左中間を破る走者一掃の適時二塁打を放ち3点を先制した。

 先制ホームを踏んだ1年生・溝脇は「緊張しなかった」という第1打席をこう振り返った。
「先頭打者が芯でとらえて、いい当たりを打っていたので、自分も打てると思いました。試合前に、相手の投手は140㌔を超える好投手だと聞いていたのですが、間近で見ても打てそうな気がしたので、思いっきり行きました」。

3点の先制で火が付いた九州学院はそこから手を緩めることはない。2回表には先頭の渡辺政考の三塁打を皮切りに、井、溝脇の連打とワイルドピッチで3点を追加。3回表に失策がらみで2点加えると、4回表には5安打で4点を奪って、試合を決めた。

 守っても、エースの渡辺が1失点を喫しながらも、コーナーを丹念につく投球で完投。九州学院が好守で松本工を圧倒して、開幕戦勝利を飾ったのである。

 ポイントゲッターの6番・松永蓮は快心の勝利に、笑顔で勝因を語ってくれた。
「初球から打っていくというのがウチのチームカラーなので、自分たちの野球ができたと思います。相手投手は良かったんですけど、初回先頭の井に、初球を打って、強いショートゴロか、セカンドゴロを打てと言ったんです。ヒットになっていませんけど、次につながる凡打だったと思います。あれが良かった」。

先頭打者の役割は、もちろん、塁に出ることだ。しかし、今年の九州学院のチームカラーからすれば、先頭打者がいかに前向きなメッセージを送るか、それが一番重要だった。

14得点大勝の裏にあったのは、プレイボール直後に打ちに行って痛烈なゴロを打った先頭・井の姿勢だ、と。

私はそう見ている。

(文=氏原 英明
(撮影 img10~22:佐藤 純一)

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