2010年04月01日 阪神甲子園球場 

日大三(東京)vs広陵(中国)

2010年選抜大会 第82回選抜高校野球大会 準決勝
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試合中の一つのプレー・瞬間のジャッジで大きく結果が変わってくるのが野球である。
今大会、松倉雄太が試合を決定づける「勝負の瞬間」を検証する。


雨中の乱戦



 広陵のエース・有原 航平(3年)にとっては不運だった。8回裏、それまで降っていた雨脚が一段と強くなった。急に泥るみを増したグランドに徐々に神経を奪われていく。

 1死1,2塁。打席に立った途中出場の根岸昂平(3年)は三塁側へ送りバント。処理に入った有原は冷静に一塁へ送球したつもりだったが、踏ん張りがきかずにボールも指先で滑った。結局ボールはベースカバーに入っていた福田周平(3年)から逸れていく(記録は内野安打と有原の失策)。
二塁走者が生還し 日大三 に同点のホームを与えることになった。ショックを引きずった有原は続く代打・清水弘毅(2年)に、痛烈なライナーを浴び、一塁手を強襲する逆転打を浴びた。
緊張の糸が切れたのか、ここからはまさに悪夢。息つく暇もなく次々と痛打され、この回打者が一巡した所で、中井哲之監督はついに有原を諦めた。
「( 日大三 の)スイングは速くすごかった。高めに甘くなると、やっぱり逃してくれなかった」と話した有原。 日大三 打線のスイングに、体力以上に精神の消耗が激しかったのだ。加えて不運な強い雨。高校生にここで落ち着けといっても酷な話かもしれない。
広陵にとって痛かったのはこの直前の8回表の攻撃。先頭の有原がショートゴロを放つが、悪送球で二塁まで進んだ。打席には9番の新谷淳(3年)。中井監督は当然送りバントを指示するが、これが痛恨のスリーバント失敗。コントロールの安定しない 日大三 の4番手・吉澤翔吾(3年)を助けるきっかけとなってしまった。結局この回無得点。流れは 日大三 に傾いた。
「弱いから負けたんです。心構え、準備が足りなかった」と中井監督は敗因を8回の攻防には求めなかった。
 有原のとっては、悪送球で崩れた中国大会準決勝の開星戦と同じような形。大一番で課題を克服できていなかった。

 一方この試合、 日大三 の視点から見れば、一歩間違えば大敗していてもおかしくなかった。
 初回、前日同様コントロールが安定しない先発の山崎 福也(3年)。連打と死球で無死満塁。広陵の4番丸子達也(2年)を併殺に打ち取り凌いだが、直後に暴投2つで2失点。完全に広陵の流れで試合は始まっていた。

 それを救ったのがその裏の4番・横尾俊健(2年)のタイムリー二塁打。「山﨑さんが苦しんでいたので、楽にしたかった」と話した横尾。ここまで3試合で、13打数7安打と好調だった男の一打に、山﨑は勇気づけられた。横尾に続き打席に立った山﨑が同点打。「1回裏に追いつけたのが大きかった」と小倉全由監督も試合後にこの場面を強調している。
 疲労から球が走らない山﨑は4回を投げたところでマウンドを降りたが、投手全員をつぎ込むリレーで広陵打線ビッグイニングを許さない。この食らいつきが8回の大量点を呼んだ。

 この日は雨の予報。大会本部は朝8時半すぎまで結構か否かの判断を待った。朝の時点では、午前中はほとんど雨が降らず、午後もわずかな量が降る程度との予報。2試合開催は可能として予定通り試合を開始した。しかし第1試合終盤に予想を上回る雨。結局最後はグランド状態が非常に悪くなり、第2試合の中止も決まった。

 昨夏の大会や昨秋の明治神宮大会でもこの日と同様、予想を上回る雨が降り、結果として試合に影響を及ぼしている。甲子園球場では気象会社と契約し、予報士からの最新の予報を元に判断している。ここ数年は技術の進歩で、1時間の雨の降り具合まで予報できるようになった。しかし、自然の力は脅威だ。やはり人間の予知能力では絶対に自然には敵わない。
 技術の進歩ゆえの悲劇とはいえ、協議を重ねて試合開催に踏み切った大会本部の判断を、他人は絶対に責めてはいけない。

(文=松倉雄太

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■ 日大三(データ)
■ 広陵(データ)




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