2010年03月22日 阪神甲子園球場 

向陽(21世紀枠)vs開星(中国)

2010年選抜大会 第82回選抜高校野球大会 1回戦
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試合中の一つのプレー・瞬間のジャッジで大きく結果が変わってくるのが野球である。
今大会、松倉雄太が試合を決定づける「勝負の瞬間」を検証する。


間合いの落とし穴


 今日のポイントは4回、向陽が先取点を挙げた場面。
開星のエース・白根尚貴(2年)は、この回先頭の津村勇宜(2年)に死球を与える。さらに牽制悪送球で津村は2塁へ。白根が初めて迎えたピンチ、それでも後続を打ち取り2アウト。打席に立った5番西岡俊揮(3年)にも簡単に2ストライクを取る。しかしここから4球連続ボールで痛い四球を与えてしまった白根。しかも4球目が暴投となり、津村は3塁に達していた。
ここで捕手の出射徹(3年)は、タイムを取ってマウンドに向かう。出射は白根のお尻をポンポンと叩いた。
打席に向かう6番大槻司(3年)は決めていた。「初球を狙う」。
 白根が投じた初球は高めのストレート、出射が構えたミットも高めだった。狙い通り振り切った大槻。打球は詰まりながらも1、2塁間の誰もいない所を抜けてライト前へ転がった。向陽にとって待望の先取点。
 白根が投げた球は決して悪い球ではなかった。むしろ打ち取った当たり。しかし出射が要求したのも高めということが引っ掛かる。

この場面、二塁手と遊撃手は二遊間を詰めていた。相手の打力を考えれば、白根の力のある直球を痛打される可能性は低い。ならばなぜ一、二塁間をつめなかったのか。
『間合いを取る』野球ではよく見られる光景だ。間合いを取ることで、守備側は息を入れることができる。ただ、これは打者にとっても同じで、タイムの後の初球を狙うのは高校野球ではセオリー。
 ここで、間合いの落とし穴にはまりやすいのが捕手だ。投手の息を入れることに、神経を注ぎすぎて、一瞬だけ集中力が希薄になってしまう。この時の出射はそんな状態ではなかっただろうか。
 要求する球と守備位置は密接に関係する。集中できていたならば、守備位置への指示もできただろう。まだ回が浅かったからかもしれない、自分達の打撃に自信があったからかもしれない。しかしこの時の指示にはやや緩慢さが見られた。そして結果として、その後の開星の攻撃には明らかに焦りが見られた。

 ただしここで出射一人の責任にしてしまうのもかわいそうだ。実は風邪をこじらせて肺炎の症状に苦しんでいた。前日には38度を超える熱が出ていたという。野々村直通監督は試合前から不安材料として出射を挙げていた。本人は試合後「体調のせいにはしたくないです」と話したが、咳き込む姿は明らかに辛そうだった。
 そんな中でも1安打を放ち、9回には反撃のきっかけを作った。むしろ4番として立派な働きである。それでもほんの一瞬だけ悔やまれるといえば、この4回の場面だろう。
体調を崩すのは自己管理の甘さという声もあるが、これも運命でもある。体調不良の捕手が強行に出場するならば、チームとして試合前に一つ決まりごとを作るというのも良い方策なのではないだろうか。
例えば、投手への声かけや間合いを内野手が取る。ベンチとて同じで、3回のタイムアウトをどう活用するか。指揮官の的確な指示があれば、また違った間合いになる。
全員で決まりごとを作ることも、チームプレーの大事な要素と言えるだろう。

(文=松倉雄太

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