2009年10月18日 皇子山球場

天理(奈良1位)vs向陽(和歌山2位)

2009年秋の大会 近畿地区高校野球大会 1回戦

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沼田投手(天理)

向陽ベストゲーム!

 およそ、考えうるベストな試合を 向陽 が見せた試合だ。

 「3、4点の勝負に持ち込めれば、何とか…」とは 向陽 ・石谷監督である。3点ビハインドの3回裏、鈴木の左翼前安打を皮切りに、津村、西山の適時打などで3点を奪い、同点とし接戦に持ち込んだ。7回表に勝ち越しを許し、惜しくも敗れたが、記憶に残るゲームを見せた。

 2年連続の近畿大会制覇を目論む、「強豪・天理」を前にしても、 向陽 は気後れすることもなく勇敢に戦った。13安打を浴びながらも、粘り強い投球が光ったエース・藤田と好リードが光った捕手・大槻。多少のミスはあったものに、堅実な守りを見せた守備陣。少ない好機を生かした攻撃陣。

 ここ近年の実績では圧倒的に天理有利だが、勝負という部分においてはほぼ互角だったといえる。石谷監督は「名前だけはしないようにと、それだけは意識してきました」と話す。

 しかし、そう意識できるのも 向陽 だから、である。

 向陽 の前身は、あの海草中である。嶋清一を擁して、全国大会2連覇を果たした超古豪だ。決勝戦ノーヒットノーランといえば、横浜の松坂大輔だが、先にやったのは海草中の嶋清一なのだ。戦争がなければ、3連覇もあったかもしれない超強豪校。90年を超す高校野球の歴史をみれば、天理に気後れする必要はなかった。

 「天理向陽 の名前を見て、今僕らが抱いているものと同じように思っていた時代もあったんだから」と石谷監督である。

 数年前には、その嶋清一が出征時に野球部に送ったとされる手紙が出てきたという。当時の部員達にとっては、 向陽 の歴史の深さを再認識する機会になった。時代が変わり名前も変わり、海草時代ほどの実績をここ近年は残せていなかったが、今大会で天理を相手に見せたベストゲームは、古豪復活へ向けての一筋の光となったに違いない。

(文=氏原英明