仙台大が2季連続優勝! 涙のキャプテン、笑顔のエース

優勝の瞬間、マウンドへ駆け寄る仙台大の選手たち
<仙台六大学春季リーグ:仙台大9-3東北福祉大>◇22日◇第7節3回戦◇東北福祉大
仙台大6点リードの最終回、2死一塁。川和田 悠太投手(4年=八千代松陰)は最後の打者を見逃し三振に仕留めると、雄叫びを上げながら帽子を放り投げた。ベンチメンバーを含めたナインが川和田のもとに駆けつけ、歓喜の輪をつくる。仙台大の2季連続優勝、そして2015年以来、8年ぶりとなる全日本大学選手権出場が決まった瞬間だった。
各選手が笑顔で喜びを分かち合う中、ひときわ大粒の涙を流し泣き崩れる選手がいた。辻本 倫太郎内野手(4年=北海)。この試合のヒーローであり、チームを引っ張り続けてきたキャプテンである。
「オープン戦で勝てなくて、チームの目標を『日本一』から『リーグ優勝』に下げた。苦しい選択だったけど、その中で優勝できたことが嬉しかった。副キャプテンとして引っ張ってくれていた三原 力亞外野手(4年=聖光学院)や川和田がケガで思うようなプレーができなくて、『あいつらの分まで勝ちたい』という思いが強かったこともあって、涙が出ました」
試合後、辻本は涙の理由をそう明かした。この日は3回に放った先制の2点適時三塁打を含む4打点の活躍。シーズンを通しての打率.342はキャリアハイで、1本塁打13打点4盗塁と申し分ない個人成績を残したが、本人は「キャプテンとしての自覚やプレッシャー、責任感…いろんなものが重なって、自分のことを考えられないくらいの春だった」と振り返る。森本吉謙監督も「本当に苦労してチームをつくってくれた。明るく振る舞ってはいましたけど、いろんなものを背負い込んで苦しんでいたと思います」と労った。目標を達成したことでようやく肩の荷が下り、自然と涙が溢れてきた。
今春の仙台大打線は辻本以外も軒並み打撃好調で、首位打者に輝いた川島 優外野手(4年=山村学園)をはじめスタメン7人が3割を超える打率をマークした。この日も東北福祉大自慢の4投手から9安打9得点。同点に追いつかれた直後の7回は無死満塁の好機をつくって小田倉 啓介内野手(3年=霞ヶ浦)の適時打で勝ち越すと、その後もたたみかけリードを広げた。
投げては今春7度目の先発となったルーキー佐藤 幻瑛投手(1年=柏木農)が試合をつくり、7回途中からは最上級生の川和田が0を連ね締めくくった。川和田も辻本同様、プレッシャーや責任を感じていた選手の一人。本来であればエースとして先発ローテーションの一角を担うはずだったが、昨秋からの度重なるケガの影響で今春は最終節の前までメンバーを外れていた。
リハビリや自主練習に励み、週末はチームの試合をライブ配信で見守る日々。「不安な気持ち、悔しい気持ち、焦る気持ち…いろんな気持ちがありました」。副キャプテンとして、投手リーダーとして、もどかしい毎日が続いた。一方、首脳陣からはリーグ戦開幕当初から、「最後(最終節)はよろしく」と伝えられていた。歓喜の瞬間、マウンドにいる自らの姿を思い描いていたからこそ、最高の準備をしてその時を迎えることができた。
仙台大の全国大会での勝利は、2014年の全日本大学選手権初戦まで遡る。苦しい時期を乗り越えた投打の柱を中心に、“仙台大旋風”を巻き起こしてみせる。
(取材=川浪 康太郎)