サヨナラ勝ちで17季ぶり7度目の決勝進出

サヨナラ打を放ち、一塁へ向かう沖縄尚学・東恩納
<第151回九州地区高校野球大会:沖縄尚学7-6海星>◇28日◇準決勝◇コザしんきんスタジアム
「最後は向こうの甘い球だったけど、それが来るまで粘った東恩納は良かった」と振り返った沖縄尚学(沖縄)の比嘉公也監督。1点を追う9回裏1死満塁。打席には明豊(大分)戦勝利の立役者である東恩納 蒼投手(2年)が立った。海星(長崎)のリリーフ髙野 颯波投手(2年)が0ボール2ストライクと有利に立つ場面から東恩納が粘る。右に左に後ろにと実に6球連続ファウル。髙野も逃げず真っ向から受けて立つ一挙手一投足に、スタンドのファンも興奮。その9球目を捉えた東恩納の打球はライトを襲う。三走に続き二走も生還。準々決勝の明豊戦では同点からのサヨナラだったが、ビハインドを跳ね除けたこの日のサヨナラも見事なもの。「本当に強いチームばかりの九州大会で、2度もこういうゲームができたことは、今後の自信に繋がる」と比嘉公也監督。九州大会では、優勝した2014年の春以来となる17季ぶり7度目の決勝進出を、沖縄尚学が劇的な勝利で飾った。
一気に主導権を握る沖縄尚学。押し返し逆転する海星

6回、2点タイムリーを放つ海星・平尾
先制したのは沖縄尚学。1回裏、打撃好調の知花 慎之助外野手(2年)が右前安打で出塁。佐野 春斗内野手(2年)がきっちり犠打を決めると、3番玉那覇 世生外野手(2年)が四球を選ぶ。ここで久々に4番に座った仲田 侑仁内野手(2年)が左越えの先制適時二塁打。明豊戦で3安打を放ち5番に座った東恩納の右前適時打も出て2点目。さらに7番宮平 良磨内野手(2年)にも適時打が飛び出し沖縄尚学が幸先良く3点を奪った。
追う海星は3回表、2死二塁から田中 朔太郎内野手(1年)が右前へ運ぶ適時打。4回には2死無走者から5番・松尾 文斗外野手(2年)、6番・田川 一心捕手(2年)の連続長短打で1点。5回にも田中にソロアーチが飛び出す。さらに6回、池田 陽翔内野手(1年)、松尾が連打し7番・峯 蒼一郎内野手(2年)の適時打で同点に追いついた。池田、松尾のヒットはいずれも内野手のグラブ先を僅かに抜けていく当たりであり、マウンドの東恩納も注文通りの内野ゴロに仕留めたと思えただろうが、海星打者の鋭い振りと打球の速さが生んだ猛攻だった。「東恩納の替え時が難しくて。結果遅かったですね」。このイニングまで投げ切ってくれ。その思いで続投させた東恩納だが、平尾 幸志郎外野手(2年)に2点適時打を浴び降板してしまう。
押せ押せムードの長崎海星が、絶好調の田中まで回せば沖縄尚学に勝ち目はなかったかも知れない。だが、左腕・上原 秀介投手(2年)が左打席の吉田 翔投手(2年)を遊ゴロに斬る見事なリリーフ。上原は7回もゼロに抑え、役目を果たした。その裏、沖縄尚学は2死無走者から上原の打席に代打・中里 大輔(2年)を送る。この策が見事的中。左前安打を放つと代走に永吉 盛空(2年)を起用。続く仲田の三遊間を破るヒットで一塁から三塁まで進んだ。さあここで1本と期待したところで、海星・吉田とベンチにとって痛恨の暴投。沖縄尚学が、この後のサヨナラに繋がる貴重な1点を加えた。
お前なら大丈夫

東恩納を称える沖縄尚学ナイン
8回から登板した照屋 希空投手(2年)が、比嘉公也監督も驚きの快投。「1999年、僕らがセンバツ優勝時の、決勝戦で投げた同級生照屋の息子です」。2イニングを投げ1人の走者も許さないパーフェクトリリーフでサヨナラのお膳立てをした。そして迎えた9回裏、沖縄尚学は打順良く1番から。
積極的な打撃が持ち味の知花らしく初球をたたく右前安打。行ける!と、意気上がる沖縄尚学ナイン。佐野がスリーバント覚悟の犠打を決め1死二塁。代打に石川 純平(2年)を送るが、海星・髙野の手元が狂い死球。4番・仲田の当たりは中前へ。海星・山口 頼愛外野手(2年)も必死にグラブを差し出すも僅かに早く外野芝生に落ちるヒット。満塁の場面で登場したのは今大会主役の東恩納だった。
「佐野からお前なら大丈夫と言われて、やってやるぞと」。135キロの直球で東恩納を追い込んだ長崎海星・髙野。外の低めなどを突いていくが、東恩納のバットが虚しく空を切ることはない。右翼線の良い当たりもあるがファウルになる。マウンドの髙野も負けじと真っ向勝負。時間にして僅かだが、長く感じる男と男の真剣勝負に魅入られていた9球目。東恩納の打球が右翼を襲い三走が生還。そして二走の石川純平が滑り込みゲームセット。「ファンの皆さんの声援を受けて、明日優勝できたら良いなと思います」。名将にとって余りにも長かった前回センバツ出場からの8年と半年余りが過ぎたこの日、来春9年ぶりの甲子園切符をほぼ手中に収めた決勝進出に安堵せず、視線の先は貪欲に優勝、そして明治神宮大会への出場へと向いていた。
(取材=當山 雅通)