石川、猪俣を苦しめた仙台育英の機動力。タレント揃いの明秀日立に競り勝つ



森蔵人(仙台育英)

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夏の甲子園の勝ち上がり

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第104回 全国高等学校野球選手権大会

<第104回全国高校野球選手権大会:仙台育英5-4明秀日立>◇15日◇3回戦◇甲子園

 明秀日立(茨城)の先発、石川 ケニー投手(3年)が抜群によかった。茨城大会は12.1回を投げて被安打5、奪三振18、失点3という好結果を残しているので好投は当然と思えるが、ここまで春、夏の甲子園大会では結果が出ていなかった。春のセンバツは1回戦の大島(鹿児島)戦が1イニングの登板だけで市立和歌山戦が登板なし。今大会の初戦、鹿児島実戦が2.2回。つまり、チーム内では主戦ではなかった。しかし、この仙台育英(宮城)戦では縦変化のスライダーが抜群にキレたため、仙台育英の各打者はスライダーに的を絞らざるを得ず、その結果スライダー以外の球種がきたときは手も足も出なかった。

 1回裏の秋元 響内野手(3年)は2~5球目がすべてスライダーで見逃しの三振。これはよくわかる。しかし2回裏は、5番尾形 樹人捕手(2年)が143キロの直球を見逃しの三振、6番遠藤 太胡外野手(3年)が142キロの直球を見逃しの三振、7番住石 孝雄内野手(2年)が137キロの直球を見逃しの三振。相手が優勝候補の一角、仙台育英だからよけい迫力が伝わってくる。この石川を攻略したのが機動力だった。

 0対2で迎えた3回裏、8番古川 翼投手(3年)が一塁への内野安打、9番森 蔵人内野手(3年)が左前安打で一、二塁とし、1番橋本 航河外野手(2年)がバントで送り、2番山田 脩也内野手(2年)のバント安打で三塁走者が生還して1点差に迫った。それぞれの一塁到達タイムは古川が4.18秒、森が4.97秒、橋本が3.95秒、山田が4.18秒。明秀日立の内野陣は1点リードしていても嫌な予感に襲われたことだろう。

 私が俊足の基準にするのは「打者走者の一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12秒未満」。8月14日までの出場校の中で、最も多くこのタイムを計測したのは8月11日に鳥取商と対戦したときの仙台育英の5人9回で、この明秀日立戦ではさらに3回も上回った。逆転した7回裏の突破口を開いたのは1番橋本で、初球の直球を左前に弾き返し、このときの一塁到達タイムが4.18秒という速さ。バッテリーは盗塁されないよう気を配らなければならず、猪俣 駿太投手(3年)が投じたけん制球は5球。打者に集中し切れない精神状態が予想できる。

 山田には左前安打を打たれ、秋元には四球、1死後を取ってからマウンドに上がった石川が尾形に四球を与え、さらに代わった猪俣が遠藤に四球を与え、しめくくりに犠牲フライを許して逆転を喫してしまった。仙台育英も4人の投手をマウンドに送っているが、明秀日立のように相手の目を眩ませるというより、本格化するチャンスを与えるため登板の機会を均等に与えているように見える。

 最後の3イニングを無失点に抑えた仙台育英高橋 煌稀投手(2年)は気迫が表に出ていた。8月11日の鳥取商戦の翌日、140キロ以上を計測した5人が取り上げられ、スポーツ紙などには〝5人のエース″という見出しもあった。この明秀日立戦ではその5人のうち湯田 統真投手(2年)、古川、斎藤 蓉投手(3年)が登板し、それぞれ失点している。真打として最後に出てきて3イニングを無失点に抑えた高橋にしてみれば「5人エース? とんでもない俺がエースだ」くらいの気持ちはあったと思う。この日、最も威力を発揮したのは内角を突く直球だった。

(記事=小関 順二