智辯和歌山、小刻みな継投策で大阪桐蔭に勝利 最後は148キロ右腕が締める



武元一輝(智辯和歌山)

<春季近畿地区高校野球大会:智辯和歌山3-2大阪桐蔭>◇29日◇決勝◇紀三井寺運動公園

 春の決勝として、智辯和歌山vs大阪桐蔭の顔合わせは4年ぶりとなる。

 大阪桐蔭の連勝を止めたのは、昨年夏の甲子園王者、智辯和歌山だった。あらためて打線の破壊力、対応力が全国トップクラスであることを証明した。

 1回表、1番・山口 滉起外野手(3年)が大阪桐蔭先発の前田 悠伍投手(2年)から、いきなり先頭打者本塁打を放つ。その後、2本のヒット、四球で満塁のチャンスを作り、敵失から2点を追加し、いきなり3点をリードする。大阪桐蔭の前田は常時140キロ前半〜144キロと球速もかなり出ており、ミットに突き刺さるような切れ味抜群の速球を投げていた。さらに変化球も、スライダー、チェンジアップの精度も悪くない。多少、コントロールに苦しんでいたところはあったが、センバツの時点ならば圧倒できていた内容だった。

 しかし、智辯和歌山打線は前田の直球にしっかりと対応し、変化球もしっかりと見極めることができていた。前田相手にここまで前に飛ばすチーム、見極めをしてヒットゾーンに打てるチームは、なかなかない。

 前田にも対応できる力を持った打線だった。主将の岡西 佑弥内野手(3年)は「凄い投手ですし、集中して反応で打ち返す。そんなイメージで打席に立っています」

 投手陣は小刻みな継投リレーで大阪桐蔭打線を抑えた。先発した左腕・吉川 泰地投手(2年)は120キロ台の直球に変化球を織り交ぜて3回を2失点で乗り切った。4回は130キロ前半の速球とスライダーで勝負する右腕・西野 宙投手(3年)が無失点に抑え、5回に登板した左腕・橋本 直汰投手(3年)は130キロ前後の速球とキレの良いスライダーで勝負し、淡々と1イニングを無失点に抑えた。この3投手の働きが勝利に大きく結びついたといえる。

 小刻みな継投策について中谷監督は「武元、塩路だけでいっても配球の引き出しがなくなるのが、私と捕手の渡部との共通見解でした。なので、こういう継投になりました」

 智辯和歌山投手リレーの1番手〜3番手の力量からすれば、センバツで優勝した時の大阪桐蔭打線ならば、あっさりと攻略してもおかしくない。初回に3点をとったことで、若干相手打線に焦りを与え、なおかつ捕手の渡部 海(3年)のメリハリが効いた配球も効いた。さらに鍛えられた内野、外野の守備も大きかった。岡西主将は「投手陣は、みんな頑張ってくれたと思います」と感謝した。

 6回表からは満を持して148キロ右腕・武元 一輝投手(3年)が登板した。それまでの投手の速球の平均が125キロ〜130キロぐらいだったが、いきなり145キロをマーク。常時140キロ〜145キロで、手元のスピードガンでも143キロをマークするなど、明らかに威力が違った。ここまで回転数を測る機会があり、2450回転を記録したという。ジャイロ回転気味な球質という特徴も分かった。

 スライダー、カットボール、カーブ、スプリットと多彩な変化球でも勝負し、打者に立ち向かった。その中でも、120キロ後半のフォーク、カットボールが効果的だった。力で押し切って、ついに9回。2死から大飛球を打たれたが、最後はレフトの好捕もあり、智辯和歌山が16年ぶり3度目の近畿大会優勝を決めた。

 大阪桐蔭相手に4回無失点の好投を見せた武元は「分かっていても打たれないストレートを求めている中で、今日はそのストレートを内外角に出し入れして、さらに低めに変化球を投げる。それができていたと思いますが、まだ甘い球も多く、課題が多く見つかった大会でした」と振り返った。

 高回転の140キロ中盤の直球を終盤まで投げられるスタミナに加え、制球力、変化球の精度を高めれば、ドラフト上位候補として推される存在となるだろう。

 貴重な勝ちゲームで、17人が試合に出場した。まさに全員野球で勝ち取った近畿大会優勝。この成功体験は間違いなく、ナインの成長を加速させる。