夏をコロナ禍で中途リタイアの板橋、3年生のけじめの試合で思いをぶつける



試合前挨拶に向かう、板橋

 無観客開催となった甲子園では、第103回選手権大会のベスト8が決まった8月25日。暮れなずむ大田スタジアムでは、一つのけじめの試合が行われていた。この夏の東東京大会を、大会半ばでコロナ禍により出場辞退に追い込まれてしまった都立板橋の3年生たちのメンバーをメインとしたラストゲームである。

 第103回選手権東東京大会の都立板橋は、初戦で日工大駒場に7対0、2回戦では都立葛西工に12対1とコールドゲームで勝ち進撃を続けていた。しかし、大会半ばの3回戦を前にコロナ陽性者が出たことで、保健所から大会参加を見合わせるよう指示された。最後の試合を戦わずして、大会をリタイアする無念となった。

 そんな選手たちの、特に3年生に一つのけじめをつけるためにも、引退試合という形で戦わせてあげたいという思いを強く持った柴﨑正太監督。悲嘆にくれる3年生たちの思いを汲んで、その試合を受けてくれる相手を模索していた。それを、都立小山台の福嶋正信監督が快く引き受けてくれた。組み合せでも、勝ち上がっていけば5回戦で当たることになっていたシード校である。組み合わせが決まった時から、ここを一つの目標にもしてきた。都立小山台と言えば、2014年春には21世紀枠で甲子園出場を果たし、その後も2年連続東東京大会で準優勝を果たすなど、都立の強豪校である。昨秋の都大会では全国制覇の実績もある帝京にコールド勝ちして、さらに周囲を驚かせている。この夏の東東京大会も8強入りしている。相手としては申し分なしだ。

 都立小山台の選手たちは、一旦は夏の大会で引退をして受験勉強にモードチェンジしていた3年生たちが集結して、この日の試合へ向けて調整してきた。「ガチの勝負で戦いたい」という思いに応えてくれた。

 こうして成立したコロナ禍に泣いた都立板橋の最後の試合である。 17時に球場入りで、17時30分プレーボールというスケジュールで始まった。選手の保護者たちも、最後の試合を見守ってあげたいという思いで、感染防止対策を取りながらも、多く集まってきた。

 万感の思いを込めて、先発マウンドに立った都立板橋の田中碧樹君は、初回、強打を売りにしてきた都立小山台打線を三人で抑える。そしてその裏、都立板橋は2番佐藤陽生君が二塁打すると、四球後、4番南澤君も左越え二塁打で先制。南澤君は3回にも右前打で出て、二死三塁から7番田中翔也君の右前打で生還。7回にも二塁打で出て、捕逸で三塁まで進んで代打小山君の中前打で同点ホームを踏むなど、4打数3安打1打点。3得点に絡んで、中軸としての存在感を十分に示した。

 球場使用が20時までということになっていたので、終了後の整備などを考慮して、19時45分に都立小山台が9回一死一塁で出口君が右線へ二塁打して一塁走者を帰したところで、試合は時間切れ打ち切りということになった。結果、この得点は幻ということになったが、福嶋監督が、「これでラストバッター」と声がかかったところで、それでもちゃんと打って結果を残すところに都立小山台の勝負強さというか、さすがと思わせるところがあった。投手も、大会でもよくあったパターンの木暮君から佐藤克哉君への継投だ。こうした真剣勝負が、都立板橋の選手たちの思いにも応えたということである。