大阪桐蔭、史上初の2度目の春夏連覇達成

 1回戦から準決勝までの5戦をすべて1人で投げ抜き、投げた球数は749球。なおかつ、3回戦の横浜戦(17日)から準決勝の日大三戦(20日)までの4日間で3試合投げてきた蓄積疲労は確実に金足農のエース・吉田 輝星から体力を奪い取っていた。

 

 日大三戦とこの大阪桐蔭戦を吉田の美質であるコントロールで比較してみよう。3回までの序盤で日大三戦は10個のボール球があったのに対して、大阪桐蔭戦では23個もあった。コントロールがよかったため相手校は早打ちを強いられ、高めのボール球を振らされてきたが、大阪桐蔭戦ではボールをじっくり見られ、好球必打を徹底された。大阪桐蔭3対1金足という僅差で終えた序盤でさえ両校の間にはこれだけの実質的な差があった。

 

 大阪桐蔭で目立ったのは1番宮﨑 仁斗(3年)だ。大阪桐蔭の各打者はバットの上下動がなく、引きも小さいのが当たり前。それでもバットが内側から出て行くという長所は誰にも備わっているわけではなく、宮﨑にはそれがあった。3対1で迎えた4回裏、エラーと四球で迎えた1死一、二塁の場面で打席に立った宮﨑は3ボール2ストライクからの6球目、内角寄りの140キロストレートをインサイドアウトで振り抜いてレフトスタンドに放り込んだ。

 

 このコースの球は前日までの吉田ならよくてレフトフライで終わっていた。それがスタンドまで運ばれたところに吉田の疲労が見て取れるし、準決勝まで打率.421を残していた宮﨑の好調も見逃せない。

 

 宮﨑の3ランで優位に立ち、5回には打者11人を送る猛攻で6点を加え勝負は決した。6回から金足農のマウンドには三塁手の打川 和輝(3年)が立ち、ピッチング内容は3回投げて、被安打3、与四球1、奪三振4、失点1、ストレートの最速は137キロを計測した。秋田大会から金足農のマウンドには吉田が立ち続けたわけだが、打川のピッチングを見て吉田にこだわる金足農のベンチワークに疑問が残った。吉田ほど速くないし、変化球にキレがなく、コントロールも緻密ではない。しかし、二番手投手として地方大会で2試合くらい投げる力はあるし、2年のときからそういう役割が与えられていたらもっとピッチャーらしい投げ方になっていただろうし、ストレートも変化球も精度が上がったと思う。

 複数のピッチャーを揃える、と言うと、「エースの肩・ヒジを守る」という論調にしかならないが、チームが勝ち上がる要因として考えたほうが私にはピンとくる。準々決勝に進出した大阪桐蔭日大三済美浦和学院報徳学園近江の6校が複数ピッチャーで勝ち上がってきたのである。

 選手を集めにくい公立では私立のような投手陣を作ることができない、というのが通説になっているが、金足農の打川のピッチングを見ればそれが嘘だとわかる。県大会で敗退したが、三重県の菰野には昨年も今年も140キロを超える本格派が2人以上揃い、神奈川県の進学校、相模原は北神奈川大会準々決勝の東海大相模戦で2人の投手を巧みにつなぎ、9回表まで8対6でリードするという展開に持ち込んだ(9回裏、さらに4人の投手をつないだが3点入れられサヨナラ負け)。

 昨年も同じことを書いたが、2人のスカウトに聞くと、「1人のエースだけ見るより複数の素質に富んだピッチャーを見るほうが楽しい」と言っていた。私もその派だし、1人エースを酷使で潰されるのも見たくない。大阪桐蔭の史上初の2度目の春夏連覇を見ながら、今年の甲子園大会でもいろいろなことを考えさせられた。

(記事=小関 順二