花咲徳栄の夏連覇の夢を打ち砕く!4回に一挙6点で横浜が16強!


 チームの格から見れば「関東最強決定戦」と言ってもいい。この好カードの序盤から中盤にかけて一方的に押したのは横浜だった。花咲徳栄の先発、野村 佑希(3年)は1回戦にくらべたらストレートに速さがあったが、中途半端な速さは横浜にとっては〝好物″以外の何物でもない。

 3回表、四球で出塁した走者を二塁に置いて2番・河原木 皇太(3年)がレフト前に運んでまず先制。4回は先頭の5番・内海 貴斗(2年)の二塁打が口火を切り、6番・角田 康生(3年)、7番・長南 有航(3年)の連打にエラーが絡み、9番・遠藤 圭吾(3年)の2点タイムリー、さらに上位打線にもつながり河原木の2点タイムリーなどで大量6点を入れた。6回にも3番・斎藤 大輝(3年)の二塁打で1点を加え8対1となり、地方大会ならコールドゲーム目前という試合展開。まさか終盤にもつれるとは思わなかった。

 この展開を演出したのは花咲徳栄のリリーフ陣と言っていい。4回途中から登板した中田優斗(3年)は昨年の優勝に大きく貢献した清水 達也(中日)によく似た投球フォームから最速145キロのストレートを投げ、5回を1失点に抑えた。中田の好投がなければ試合は一方的な展開になり、終盤のもつれも呼ばなかったに違いない。そして、9回をノーヒットに抑えた松井 颯(3年)もストレートが最速141キロを計測し、コントロールも安定していた。それならばどうして野村をもっと早く降板させなかったのか。疑問はどうしてもそこに行き着いてしまう。

 横浜打線は放った11安打のち、1番から5番までが6本、6番から9番までが5本とバランスがよかった。この中でもとくに目を引いたのが5番の内海だ。ゆったりと始動して暗闇の中で道を探るような慎重さでステップするというバッティングの奥義を横浜打線の中で完璧に実践していたのが内海だった。

 花咲徳栄で目立ったのは4番の野村だ。1回戦の鳴門戦中のこと。私の後ろの通路で2人のスカウトが野村のことを熱心に語り合い、1人は「ピッチャーなんかやってるからバッターに集中できないんだ」と言っていたが、私も深く同意した。もう1人は「凡打とホームランは紙一重の差なんだ」と言い、身振り手振りでボールにバットが入る角度を示していたが、この2人の野村に対する〝肯定的な空気″は何ごとかと思った。まるでドラフト1位選手を評価するような空気が醸成されていたのだ。野村は藤原 恭大根尾 昂(ともに大阪桐蔭)や小園海斗(報徳学園)のようにマスコミで名前が挙がらないが、スカウトの評価は高いんだなと思った。

 この野村が6回に2ラン、7回には1番・橋本 吏功(2年)がソロホームランを放ち、8対4で迎えた9回裏には先頭の9番打者が死球で出塁すると1番、3番が四球で続き1死満塁。この場面で野村が三塁内野安打で1点返し、試合の行方は俄然わからなくなった。

 なおも満塁の場面で5番・羽佐田 光希(2年)の3球目は死球と思ったが球審はよけていないと身振りで示しボールのジャッジ、6番の倉持 賢太(3年)の3球目は逆にハーフスイングと思った球が死球とジャッジされ、球場内は混迷の度合いを深めていった。

 8対6で2死満塁、さらに強い風がライトからレフトに吹いているのを見て、井上 朋也(1年)にホームランが出ればサヨナラだと思ったが、3ボール2ストライクからの6球目のスライダーを空振りしてゲームセット。今大会はこんな小説もどきの試合が多いが、私も含めた観客は大喜び。ああ、本当に面白かった。

(記事=文:小関順二)