試合レポート

敦賀気比vs青森山田

2016.03.25

ストレートの伸びとコントロールを見せつけた山崎颯一郎

敦賀気比vs青森山田 | 高校野球ドットコム

山崎颯一郎(敦賀気比)

 高田 萌生創志学園3年)と並ぶ今大会屈指の本格派右腕、山崎 颯一郎敦賀気比3年)のピッチングに注目が集まった。ストレートの最速は高田の146キロに対して143キロと平凡だが、130キロ台中盤でも低めに糸を引いたように伸びていく球筋は高田以上だった。

 投げ始めからボールがキャッチャーミットに到達するまでのタイムは高田が1.8秒前後、山崎は2.0秒前後。0.2秒の差はスポーツの世界では小さくない。100メートル競走なら9.8秒と10.0秒の差である。上半身の強さで投げるタイプは速くなる傾向があり、下半身でリードするタイプは遅くなる傾向がある。もちろん前者は高田で、後者は山崎である。この0.2秒の差が低めの伸びの差となって表れていることは間違いない。

 ストレートの話ばかりになっているのは、この日の山崎が非常に多くのストレートを投げていたからだ。前日の高田が104球中53球だったのに対し(ストレート率51%)、山崎は127球中86球で、ストレート率は67.7%。投げ合った青森山田堀岡 隼人(3年)は106球中62球でストレート率は58.5%。これも低くない数字である。

 これほどストレートを多投しても強豪の青森山田が4安打、完封されたのは、ストレートが内・外角にきちんとコントロールされていたからだ。1、2回は外角主体だった。それが3回以降、内・外角に散らし、球速も±5キロくらいで緩急をつけて丁寧に高低を突いた。

 最大のピンチは内野安打と四球で無死一、二塁になった6回表。この場面ではまず2番江口 裕道(3年)を全球ストレートで送りバント失敗に打ち取った。2、3球目でもバントをファールさせると、4球目のバントがキャッチャー前に転がり、井戸川 龍也(3年)は躊躇なく三塁に送球して二塁走者を三封。ストレートだけでバントを3回失敗させるというのは至難の業と言っていい。それだけストレートにキレがあった。

 1死一、二塁にしたあと3番村山 直也(3年)には初球スライダーのあと3球ストレートを続けて空振り三振、4番三森 大貴(3年)には初球スライダーのあと3球ストレートを続け、最後に113キロのカーブを投げて空振りの三振に仕留めている。三森にすれば前の打席でも6球中5球がストレートだったので(空振りの三振)、この打席ではストレートのイメージしかなかったと思う。最後の113キロのカーブに対してはなす術もなかった。

 青森山田は好チームだった。投手は先発した堀岡、攻撃陣は3番村山、4番三森がチームの中心になり、昨年の覇者にして、新チームになっても強さを持続している敦賀気比に一歩もひけを取らず立ち向かった。堀岡はこの日最速の141キロのストレートを押し立て、変化球は斜めに切れ込んでくるスライダーが絶品のキレ味で、優勝候補を3安打、1失点に抑え込んだ。山崎に比べると外角球が多く、内角球がもっと多ければスライダーの威力はさらに増したと思うが、その雄姿は夏に見せてくれると思う。

(文=小関順二

敦賀気比vs青森山田 | 高校野球ドットコム
注目記事
第88回選抜高等学校野球大会 特設ページ

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

関連記事

応援メッセージを投稿

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

RANKING

人気記事

2024.04.24

春の埼玉大会は「逸材のショーケース」!ドラフト上位候補に挙がる大型遊撃手を擁する花咲徳栄、タレント揃いの浦和学院など県大会に出場する逸材たち!【春季埼玉大会注目選手リスト】

2024.04.24

東京国際大の新入生は、リーグ戦デビューの二松学舎大附の右腕、甲子園4強・神村学園捕手、仙台育英スラッガーら俊英ぞろい!

2024.04.24

【福島】田村、日大東北、只見、福島が初戦を突破<春季県大会支部予選>

2024.04.24

【佐賀】敬徳と有田工がNHK杯出場を決める<春季地区大会>

2024.04.24

【春季四国大会逸材紹介・香川編】高松商に「シン・浅野翔吾」が!尽誠学園は技巧派2年生右腕がチームの命運握る

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.23

【春季埼玉県大会】地区大会屈指の好カードは川口市立が浦和実を8回逆転で下し県大会へ!

2024.04.22

【和歌山】智辯和歌山、田辺、和歌山東がベスト8入り<春季大会>

2024.04.21

【神奈川春季大会】慶応義塾が快勝でベスト8入り! 敗れた川崎総合科学も創部初シード権獲得で実りのある春に

2024.04.23

【大学野球部24年度新入生一覧】甲子園のスター、ドラフト候補、プロを選ばなかった高校日本代表はどの大学に入った?

2024.04.05

早稲田大にU-18日本代表3名が加入! 仙台育英、日大三、山梨学院、早大学院の主力や元プロの子息も!

2024.04.23

【全国各地区春季大会組み合わせ一覧】新戦力が台頭するチームはどこだ!? 新基準バットの及ぼす影響は?

2024.04.02

【東京】日大三、堀越がコールド発進、駒大高はサヨナラ勝ち<春季都大会>

2024.04.12

東大野球部の新入生に甲子園ベスト4左腕! 早実出身内野手は司法試験予備試験合格の秀才!