試合レポート

龍谷大平安vs大阪商大堺

2014.10.20

エースの投打に渡る活躍と選手層の厚さ

龍谷大平安vs大阪商大堺 | 高校野球ドットコム

龍谷大平安・高橋奎二が投打に渡る活躍

 1回と2回をいずれも三者凡退に抑えた龍谷大平安の先発・高橋奎二(2年)。2回、一死で回ってきた打席では高校初となるホームランをライトに放ち先制。
「詰まってる感じ。ライトフライかなと思った」という打球だったが落ちることなくそのままライトフェンスを越えた。

 高橋の一振りで先制した龍谷大平安は、3回にも4番・西川寛崇(2年)のタイムリースリーベースで1点を追加。序盤で流れをつかんだと高橋の好投は続く。3回、4回、5回も三人で抑え、前半をパーフェクト。
それでも「調子はそんなに良くなかった。ストレートはシュート回転しているのが多かったし、変化球は全然入らなかったし抜けたりしていた」という。6回に二死からフォアボールを与え完全試合は無くなったが、依然ノーヒットは継続中。大阪3位の大商大堺打線を全く寄せ付けなかった。

 2点をリードされ攻め手が見つからない大商大堺は6回、一死一塁の守備でピッチャー・山口瑛二(2年)、キャッチャー・堀川智司(2年)のバッテリーが一塁ランナー・城島大輝(2年)に対し、1球ウエストした直後に牽制し様子を見る。

 3回にも全く同じ手順でバッテリーは警戒していたが、この回はさらに牽制を続けた。2回続けて牽制は来ないと読んでいたのか左腕・山口が右足を上げた瞬間にスタートを切った城島は塁を飛び出してしまう。ファースト・出来佑基(1年)からショート・安井迅(2年)への送球はタイミングは完全にアウトだったがランナーと重なったのか逸らしてしまい、この間に城島は三塁に到達する(記録は盗塁と悪送球)。


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チーム初安打を放った今江勝政(大阪商大堺)

 一死三塁から左打ちの元氏玲仁(2年)をファーストライナーに打ち取ると、右打者を迎えたところで大商大堺は右サイドスローの北山湧也(2年)がマウンドに上がる。北山は曲がりの大きいアウトコースへのスライダーを決め球に三振を奪いピンチを脱出すると、7回にも簡単にアウトを二つ積み重ねる。

 対戦した三人の打者を無安打2奪三振。打順がトップに返って左打者が続く7回二死の場面でレフトのポジションに就いていた山口が再びマウンドへ上がると、龍谷大平安の1番・大北雄也(2年)を三振に打ち取り継投を成功させた。北山の投球を見ているとわずか三人で交代させてしまうのはもったいないような気もするがこれが大阪大会を勝ちあがってきた大商大堺の形なのだろう。

 守備でいい流れを作ると8回、先頭の福田翔也(2年)がデッドボールで出塁する。この日初めての無死でのランナーだった。右足を大きく上げる投球フォームの高橋はクイックが得意でない。右足が上がりきった時点では牽制か投球か区別出来ない上手さはあるもののモーションを盗めれば盗塁が成功する確率はかなり高い。また、左投手であるため二塁に進めば三盗も十分に狙える。おそらく高橋が抱える唯一にして最大の弱点がこれ。


 足を絡めれば攻略の糸口は見つかるはず。2点を追う大商大堺がいかにして得点圏にランナーを進めるかという場面でキャプテン・今江勝政(2年)が初球を叩き一、二塁間を割る。チーム初ヒットでランナーが二人たまると7番・堀川が送って一死二、三塁。一打同点のチャンスで代打・西山滉一(2年)が打席に向かう。

 初めて背負ったピンチにマウンド上の高橋は変化球で空振りを二つ奪い1ボール2ストライクと西山を追い込む。タイミングが合っていないのだからバッテリーの選択は当然変化球になるが2球続けて外れフルカウント。ストレート勝負になると西山も対応し2球続けてファウルで粘るが最後は高橋の球威が勝り、空振り三振。二死二、三塁から9番・山口の放った鋭い打球はセカンド正面のライナーとなり高橋は無失点でこのピンチを切り抜ける。

 するとその裏、フォアボールと送りバントで一死二塁とチャンスを作った龍谷大平安は左腕・山口に右打者が襲い掛かる。主軸を打つ西川、城島が力で弾き返しレフト前、センター前にヒットを放ち1点を奪うと、代打・福本涼太(2年)がレフトオーバーのタイムリーツーベース、7番・橋本和樹(1年)がレフトポール際にツーランを放ち一挙5得点。代打起用された福本は元々は登録外の選手で、故障した長谷川弘一郎の代わりにベンチに入った。
コールド勝ちを決めるツーランを放った橋本はスタメン唯一の1年生。大商大堺が継投で自分達の形を見せた終盤に、龍谷大平安は選手層の厚さを見せつけた。

 「最後の攻撃でコールド勝ち出来たのは収穫ですけど課題も多い。秋だから課題多いの当たり前ですけど一つずつ克服出来れば」と原田英彦監督の求めるレベルは高く「3年生に恩返しする。全員で優勝旗を返しに行く」という目標は新チーム結成時から全くぶれない。エース・高橋の投打に渡る活躍と選手層の厚さで押し切った龍谷大平安がまた一歩目標に近づいた。

(文:小中翔太  写真:松倉雄太)

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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