選手名鑑
寸評
大阪屈指のスラッガーと評される石川 慎吾。高校通算55本塁打を記録した長打力の源になっているのは非凡なヘッドスピードによるものであろう。俊足、強肩でアスリートと思わせる雰囲気は漂わせる。この選手は感覚や天性で勝負する選手に見える。技術的に見ていくとなぜこの打ち方でこれほど打てるのかと思わせるものがあり、不思議な選手だ。自由奔放で思い切りの良いプレースタイルを見るとプロの指導に揉まれていったほうが飛躍する可能性が高いのではないかとみている。石川 慎吾に迫ってみたいと思う。
(打撃)
スタンスはスクエアスタンス。グリップを高めに置いてバットを寝かせて構えるスタイル。ベースを覆いかぶさるように構えるのが特徴的だ。
投手の足が降りたところから始動を仕掛けていき、足を回しこむように上げていく。足上げが大きいためタイミングを遅らす投手や変化球の切れが良い投手には簡単に空振りをしてしまう脆さがある。甲子園ではアンダースローのカーブにタイミングが合っていない打撃が見られた。踏み込んだ足は投手方向へ踏み込んでいく。踏み込んだ足はしっかりと踏ん張ることができており、根を張って強くスイングができる準備はできている。
トップの動きは捕手側方向から引いていくが、グリップが入りすぎてしまい、インコースが窮屈になってしまう傾向がある。スイング軌道は外回りでボールをコンパクトに叩く打撃はできない。プロ入りした場合、プロの投手の切れの良い変化球を打ち返すには時間がかかる印象を受けた。
後ろが大きく取ってから振り出していくのでスイングにひ弱さを感じず、スイングスピードはずば抜けて速く、捉えた打球速度はかなりの速さである。
打撃フォームは粗削りで、思い切りの良い打撃スタイル。何も考えなしでやっているように見えたが、至学館戦ではベース寄りに立ってカーブに対応するなど工夫する姿勢は見えた。
甲子園では本領発揮とまではいかなかったが、大阪大会決勝では藤浪晋太郎の速球にしっかりと付いてきており、振り負けないスイングスピード、筋力、動体視力の良さがある。全体的に見ていくと課題は多いものの、プロのストレートに力負けしないスイングを習得できる体の強さはあるのではないだろうか。スラッとした体型をしているが、バネの強さが光る。
(守備・走塁)
背番号「2」を着けているが、夏ではセンターに専念。外野守備を見ていくと打球に対する反応は悪くない。打球の追い方は良いし、落下地点まで素早く走ることができており、守備範囲は広い。地肩の強さは捕手を兼任していることで、かなり強い部類に入るだろう。課題はキャッチング、細かい処理。まだセンターに専念して間もないので、フェンス直撃になった時のクッションボールの処理に課題を残す。だが横着せずに一つ一つのプレーを確実にこなす姿勢は見られるし、足も速く、肩も強いので、鍛えていけばモノになる予感はした。
塁間タイムは塁間タイム4.30秒前後を計測。左打者ならば4.00秒前後で駆け抜ける俊足。脚力はプロクラスだが、盗塁は積極的に仕掛ける選手ではなく、予選では8試合で2盗塁。4番を打つので、少なくなってしまうのは致し方ない面もあるが、上のレベルでは走塁を磨いていってほしい。
将来の可能性
技術的にはかなり粗い。この打法でどのようにしてプロの投手に対応していくか思い浮かばない。打撃面がネックで個人的には高い評価はできない。
しかしプロで活躍している打者はなぜこの打法で打てるのと思わせる打者がいるのも事実。そこは教科書的な理屈ではなく、感覚による部分が大きくなる。彼はプロが求めるスイングスピードの速さ、リストの強さ、バネの強さが優れている。守備・走塁から俊足・強肩も光る。天性のモノが優れている選手はプロの舞台に進んで、専門的に指導できる指導者の下で技術を磨いた方が良い。
プレースタイルは熱く、思い切りの良さが彼の身上。彼を成長させてくれたのは妥協を許さない。あるいは弛んだ姿勢を許さない東大阪大柏原の環境が大きかったと思う。それを考えれば一部ではプロ並みに厳しい大学もあるが、緩い環境の大学は彼を伸ばすためには適さない。それならば3年ダメなら首という覚悟でプロに挑戦したほうが彼の素質を伸ばすためには最適だ。プロ志望届けを出したのは良い判断だった。
教科書的な理屈では当てはめることが出来ない石川慎吾。プロの舞台では周囲が予想できなかった成長を見せて、躍動することを期待している。
- 2011 年 9 月
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