田中 蓮選手 (新田)
短評
観戦レポートより抜粋(2015年5月3日) 新田の2年生エース・田中 蓮。最速126キロとストレートは平凡な球速。にもかかわらず「もう1本が出なかった、リズムに乗り切れず捉えきれなかった」(河内 紘宇監督)。 ではなぜ、田中は強打・高知中央打線を抑えられたのか?右打者インコースをえぐる110キロ台の変化球にその答えがあった。 「10安打以上打たれると思っていたが、1失点に抑えられてよかった」と安堵の表情だった田中に球種を聴くと……。 「あれはツーシームです」 いわゆる「シュート」である。 田中・乘松 幹太は、近年の高校生投手ではほとんど操る者がいないシュートを最大限活用する。 たとえばシュートでファウルを打たせ、90キロ台のスローカーブでカウントを取ってから、外角高めの120キロ台後半ストレートで空振り三振。あるいは、同速度帯のスライダーからシュートのコンビネーションでフライ・内野ゴロ。見事な配球が新田、初の春季四国大会決勝戦進出の原動力になった。 ここでセンバツを思い出してほしい。二松学舎大附(東京)を破り、準優勝の東海大四(北海道)相手にも好投した(試合レポート)松山東・亀岡 優樹の決め球も右打者インコースをはじめ、自在に操れる「ツーシーム」。 さらに時代を遡れば、現在ビックコミックスペリオール(講談社)で連載中「江川と西本」のモデルである西本 聖氏(現:ハンファ・イーグルス<韓国>一軍投手コーチ)も、松山商時代に会得した「シュート」を磨き続け、読売ジャイアンツ、中日ドラゴンズ、オリックス・ブルーウェーブで計165勝の大投手となった。 「人が投げられない変化球を投げる」。これは愛媛野球が「野球王国」として君臨するために歩んできた伝統文化。西本氏や亀岡に続き、田中 蓮もまた、その系譜を歩みそうとしている。
更新日時:2015.05.05
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