溝脇 隼人選手 (九州学院)

溝脇 隼人

球歴:九州学院

都道府県:熊本

ポジション:遊擊手

投打:右 / 左

身長:178.0 cm

体重:63.0 kg

学年:卒業

寸評

 甲子園を見ていて、一人だけ動きが違う!感じさせたのが九州学院溝脇 隼人だろう。広範囲・抜群の出足の良さ・キレの良さ・強肩を備えた守備、颯爽と駆け抜ける走塁は超高校級。スピード感溢れるプレーに多くの人はセンス抜群と評する。私も彼のセンスの高さに惚れ込んでいるが、一つ懸念するところがある。それは打撃だ。甲子園で残した打撃内容に引っかかりがあるのだ。 (打撃)  彼の打撃内容で気になったのは逆方向の打球が多いことだ。これは今回の大会だけではなく、一年夏の甲子園、二年春の選抜から逆方向の打球が目立つ。逆方向の打球が目立つのが悪いことではなく、外角直球をしっかりと押し込んで左中間方向の長打は良い。ただ溝脇のヒットは振り遅れのヒットが多い。振り遅れながらもヒットに出来ているのも彼のセンスの良さというべきだが、木製バットで同じような打撃が出来るかといったら否だろう。  最近、プロ野球の中継を見ると統一球・木製バットの影響が顕著なのは、スラッガーよりも左の巧打者タイプがその影響を受けているように感じる。特徴的なのはポテンヒットになりそうな打球が失速して、内野フライになっていること。だから彼が木製に置き換えた時の打撃が心配である。 スタンスはスクエアスタンス。グリップを肩の位置に置いて背筋を伸ばして構えている。力みなく構えることが出来ており、筋が良い。投手の足が降りたところから始動を仕掛けていき、足を高く上げていき、真っすぐ踏み込んでいく。仕掛け自体は早く、アベレージヒッターの仕掛けのタイミングである。なぜ逆方向の打球が増えるのだ。 トップの動きを見ていくと捕手側方向へ引いていき、振り出していく。この選手が凄いのは140キロ台のストレートをいとも簡単にファールに出来る技術があることだ。ポイントを遅らして、くさい球をカットにして、球数を稼いでしまう。  彼はスイング軌道が縦振り。左の巧打者に見られるレベルスイングではなく、アッパースイング気味。インサイドアウトで、バットの正面でボールを捉えるのではなく、ボールを切るようなスイングになっている。芯で捉えることが出来ず、ポイントが遅れて逆方向の打球が多くなっていると考える。 彼の打撃はとても高度な打撃になっており、簡単にスイング軌道を修正出来るものではないので、木製バットで経験を重ねて、今の打法で広角に打てる感覚を掴んでいくしかないだろう。 (守備・走塁)  彼の持ち味は脚力。圧倒的な脚力を誇っていた山下 翼(現・亜大)と比較するとやや劣るという見方はあるかもしれないが、タイムは山下に負けていないのではないだろうか。二塁打のタイムは7秒47。基準である8.29秒を大きく上回るタイムである。塁間タイムは4.00秒で駆け抜ける俊足もある。相手のちょっとした隙をついて、あっという間に次の塁を狙う率のなさは素晴らしい。ただ盗塁数は公式戦10試合で3盗塁。走れる野手として推すには寂しい数字。納得させるだけの盗塁数を残すことも大事だ。  そして絶賛される守備は相変わらず素晴らしい。広範囲・抜群の出足の良さ・身のこなしが備わった守備は今大会でもトップクラス。スローイングは抜群の強肩ではないが、深い位置からでも正確なスローイングは出来ており、悪くない。上のレベルでも二遊間を守れる守備力はありそうだ。  テレビのカメラワークでは分からなかったが、初戦・女満別戦ではこういうプレーがあったようだ。溝脇は二塁方向に行きかけていた。しかし打球が三遊間へ深い打球が飛んだ。溝脇は瞬時に修正して三遊間に身を翻し、深い位置に追いつき、ダイレクトスローで刺したプレーがあった。そのプレー自体は見ていたが、ロスが生じる守備位置からアウトにしていたことに驚かされた。
更新日時:2012.03.29

将来の可能性

 守備・走塁のレベルは超高校級。センスの良い動きは教えられて出来るものではなく、まさに天性だ。若年層でショートが薄い球団は打撃を度外視してでも獲りたいと思う球団はリストアップすべき選手だろう。確かな打力を身につけるために大学・社会人からでも遅くないという意見もあるかもしれない。私も彼の打撃を見終えた後、最初はそう判断したのだが、あの守備・走塁は教えられて出来ないものだからこそ、早めに青田買いしたいと思う球団もあるのではないか。  私は野手については細かく見ているつもりでも、これは欲しいと思う選手は直感的に判断するところがある。溝脇にはまだ直感的に「欲しい!」と思わせるモノはあまり感じなかった。悩まさせたのはやはり打撃。夏では走攻守すべてに強烈な印象を残すプレーが出来るか注目していきたい。
更新日時:2012.03.29

短評

(観戦レポートより抜粋 2012年03月22日) 大会2日目の第1試合、九州学院女満別戦で圧倒的に目立ったのは九州学院の1番、溝脇 隼人(遊撃手・右投左打・178/63)だ。 第1打席は四球で歩いたあと二盗を成功させ、6番米井健太の2点タイムリーで先制のホームを踏み、第2打席は1死ランナーなしから二塁打を放ち萩原 英之(中堅手・右投左打・177/80)のタイムリーで生還、第3打席は先頭打者として一塁内野安打、第4打席は1死二塁で打席に立ってタイムリー安打と当たりに当たり、6対0の勝利に大きく貢献した。 溝脇のセールスポイントの1つは俊足だ。 打者走者としての各塁到達タイムを紹介すると、第2打席の二塁打のときの二塁到達タイムが7.78秒(2日目までに出場した選手の中で2番目に速い記録)、第3打席の内野安打が4.08秒、第5打席の遊撃ゴロが3.98秒と、第一級の脚力を証明した。 溝脇のいいのは脚力だけではない。遊撃手としての守りも天下一品である。1回裏、芳野順哉が放った三遊間へのゴロを深い位置で捕球し強肩でアウトに取るのだが、このとき溝脇は最初二塁方向に行きかけている。瞬時に修正して三遊間に身を翻したわけだが、この対応力の速さとフィールディングの柔らかさ、そして肩の強さは尋常ではない。ソフトバンクからマリナーズに活躍の場を移した川崎宗則を私は思い浮かべた。 知り合いのスカウトに「指名があるんじゃないですか」と聞くと、「脚力が飛び抜けると指名の対象になるかもしれませんね」と言うので、「今でも速いじゃないですか」と言うと、昨年のドラフト候補、山下 翼(外野手・亜大)くらい飛び抜けてほしい、と言う。山下の50m走のタイムは5.6秒そこそこ。 これは元々の素質がものをいう世界で、これからの精進でどうなるというものではない。そのスカウトさんは意地悪だなと思ったが、同時に真剣に溝脇のほうを向いているなとも思った。
更新日時:2012.03.25

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