芦谷 響選手

芦谷 響

球歴:

ポジション:投手

学年:卒業

寸評

―課題は打撃のみー 本気でそう思っていた。今年の高校生で上位候補に挙げられている帝京松本 剛。 昨秋の秋季大会のプレーを見て、内野手として唯一、高卒プロで行ける選手と評価した。彼の打撃の完成度、守備の動き、一つ一つの所作を見て、他の選手との差が歴然していたからである。課題は文句なしの打力。つまり長打力が増し、一発長打が狙える打者に成長しているかである。彼は見事に強打者に成長した。都大会では打率.593、3本塁打、5打点と一気に長打力を増した。今年の高校生野手を見てこれほどダイレクトな成長を感じさせた選手は中々いない。甲子園ではややばたつきが見られたものの、今年の高校生内野手で上位を意識できる内野手は松本 剛だけだ。 (打撃) 2年秋までみてきて彼にはないもの。それは本塁打を打つ長打力である。1年後、見事に一発を打つ長打力を身に付けた。あくまで金属バットだからこそ量産できているが、プロの投手のストレートに力負けしないヘッドスピードは身に付けてきていると評価する。 スタンスはスクエアスタンス。グリップを高めに置き、ヘッドを回しながらリズムを取り、膝を曲げて構えている。腰も据わっており、両目で投手を見据えることができたバランスの良い構えをしている。投手がリリースする直前に始動を仕掛けており、極端に遅い仕掛けだ。ボールをぎりぎりまでに引き付けて強く叩く選手だ。タイプとしては中距離打者なのだが、ここまで遅く仕掛ける選手は稀だ。 足を回しこむように上げて真っすぐ踏み出していく。しっかりと間と取っていき、真っ直ぐ踏み込んで両サイドへ対応する狙いが見える。トップの動作を見るとしっかりと引いており、形成はできている。グリップは入りすぎないし、インコースの捌きも大丈夫だろう。しっかりとボールを引き付けて強く叩きつけて打つ選手で、140キロ台後半の速球にも振り遅れではなく、自分のポイントで打ち返しライト前ヒットにした技術は見事であった。踏み込んだ足はしっかりと踏ん張ることができているし、軸足の粘りも良く、粘り強い打撃は出来ている。体勢は崩されてもヒットに出来ている。ヘッドスピードは昨年よりも速くなり、手元でしっかりと押し込むようにできることができており、2年秋よりもフォロスルーが大きくなったことで、飛距離は格段に伸びた。 とはいえ、打球の殆どはライナー性で中距離打者タイプ。あくまで内野の間に鋭く打球を飛ばしていく選手であり、プロでは小技を求められる2番か、下位を任されることになりそうだ。 (守備・走塁) 昨年から守備の安定感を評価してきたが、ドラフト上位が噂される選手なので、高いレベルを要求する。グラブ捌きは柔らかく、実に動けるショート。投げて捕ってからの所作にはセンスの良さを感じる。守備に対する拘りというのはひしひしと伝わってくるが、彼は結構速い打球に弱いことが分かった。三遊間の打球は強いのだが、打球が強いとグラブを出せずに弾く傾向が見られた。まとめるとショート松本剛はかなり動けるショートであるが、キャッチングがまだ拙い内野手であることが分かる。ポジショニングは普段の試合から見ていると考えている選手。ただ 八幡商業戦 の9回の表は指示が中間守備だったようだが、あれは前過ぎだ。今まで見てきた中では最初で最後のポジショニングミスであった。 塁間タイムは4.30秒前後。左打者に換算すると4.00秒前後で駆け抜ける俊足であり、脚力の高さは申し分ない。東東京大会では6試合で5盗塁を記録しており、既に高校生レベルではかなり高いレベルにあることが分かる。盗塁タイムは3.47秒。高校生としては平均的なレベルだが、プロの標準タイムは3.3秒前後であることを考えるとまだ遅い。 守備・走塁も高校生としては申し分ないレベルに達しているが、プロとしてレベルだと物足りない部分がある。普段のプレーを見てきて松本 剛は数年でプロレベルに到達する意識の高さはあると評価する。
更新日時:2011.08.31

将来の可能性

 私が見てきた中で課題だった打撃を一気にレベルアップさせた選手は記憶にない。1年生から伸び悩むことなく、順調に成長曲線を描いてきた高校生は彼だけだ。それが出来るのは明確に目標を設定し、その目標に到達するために努力できる素質がある選手であるから。その資質はプロ向き。プロレベルで見ていくと守備・走塁もプロレベルに達していない。マスコミには超高校級ショートとして扱われているが、高校生の中ではトップレベルなものの、プロの舞台に混じってすぐに現役選手と変わらないレベルの高いプレーが期待できる選手であるかというとそうではない。いずれにしろ自分の実力不足を実感することになるだろう。 だが彼の姿勢の良さはそれを乗り越えていける強さがある。なんといっても我の強さが魅力的。1年目は二軍で試合経験を積み重ねていくうちにいずれは一軍でプレーができる青写真が描ける選手であると評価する。私にとって高卒内野手でそう思わせる選手は稀であり、高く評価している証だ。将来の内野手・リーダー候補を狙っている球団は上位36人以内で獲りに行くべき選手ではないだろうか。
更新日時:2011.08.31

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