田中 空良選手 (豊川)
短評
観戦レポートより抜粋(2014年3月22日) 試合開始当初は日本文理が豊川の先発、田中 空良(3年)を攻略できると思っていた。履正社の溝田 悠人(3年)のところでも書いた振幅の大きい投球フォームがコントロールミスを誘うと考えたからだ。 投げに行くときの体の上下動、テークバック時に右腕が深く背中のほうに入ること、それらが原因の左肩の早い開き……プロでは2011年の選手権でストレートの速さが注目され、同年のドラフト会議でDeNAから1位指名された北方 悠誠(唐津商)が似たタイプだ。北方は現在も制球難に見舞われることが多いが、この日の田中はそれほど荒れなかった。と言うより、13回投げて与四球がたった1個だから、制球はよかったと言うべきだろう。 とくに目立ったのが変化球のキレのよさとコントロールだ。縦・横2種類のスライダーと打者近くで小さく落ちるスプリット、さらに縦のスライダーと見紛うようなチェンジアップ(シンカーっぽい変化)があり、中盤以降はこれらを主体に投球を組み立て、日本文理の強打線を見事に抑え切った。 ストレートがよくなかったわけではない。序盤はクセの強い投球フォームからぶんぶん腕を振って140キロ台の速球を投げ込み、最速は145キロを計測した。しかし、ストレートは結果的に“見せ球”だった。これだけ速いストレートがありますよ、とアピールし、それが日本文理打線各打者の頭にインプットされたと思った瞬間から変化球を多用し、39アウトのうち三振13、ゴロアウト20という内訳を見れば、田中の変化球がいかに有効だったかわかる。 とくに見応えがあったのが超高校級スラッガー、飯塚 悟史(3年)との対決だ。速いストレートを序盤に見せ、そのストレートの球道から小さく変化するスライダー、スプリットを多投して内野ゴロを4つ奪った。 延長13回には1死一、三塁というピンチを迎え、チェンジアップ→スプリット→スライダーで2ボール1ストライクのカウントになったところで私は四球にして塁を埋める作戦に出ると思ったが、飯塚の打ち気を誘うような低めに変化球を投じ、一塁ゴロ併殺に打ち取った。
更新日時:2014.03.23
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