仁田 陽翔選手 (仙台育英)
ドラフト候補は、不安要素が少ない選手のほうが、高い評価を受けやすい。一方で、不安要素を乗り越えて成功を収めた選手もいる。
今回紹介する仙台育英の速球派左腕・仁田 陽翔投手の潜在能力はピカイチ。大きな不安要素も抱えたピッチャーだ。
仁田の1球1球のボールの精度の高さは世代でも数字面でもトップクラス。甲子園では常時140キロ中盤を出し、左腕では最速となる149キロを計測した。世代NO.1左腕の呼び声高い前田 悠伍投手(大阪桐蔭)もMAXは140キロ中盤。仁田の出力は前田を上回る。
また、変化球の切れも鋭く、130キロ前半のスライダーは、低めに決まれば高確率で三振を奪うことができる。
投球フォームも非常に躍動感があり、右足を勢いよく上げていきながらもバランス良く立つことができており、体重移動も下半身主導で、テークバックの時の腕の旋回をみると、実にスムーズで、肩、肘のしなやかさも感じる。
弱点は、制球力
しかし、この夏の甲子園、仁田は僅差の場面での登板はなかった。なぜなら、コマンドが安定しないからだ。
仁田の投球フォームはダイナミックだが、リリースポイントが安定しない。そのためすっぽ抜けの頻度が多く、ボール先行のカウントになり、結果、苦しいピッチングを強いられてしまうことがあるのだ。
仁田は甲子園決勝戦後の取材で、自身の投球をこう振り返っている。
「スピード自体は出ていたんですけど、やはり調子の波、制球力が改善されないまま終わってしまった。投球フォームをしっかりと確立して、うまくいかなかったことをこれからの練習で活かしていきたいです」
投球フォームが硬いため、制球力が安定しない投手は多いが、仁田の場合、力強く、しなやかな投球フォームだ。改善する可能性はじゅうぶんにあるだろう。コマンドさえ安定すれば、平均球速が高くなっている日本のプロ野球でも速球派左腕として活躍できる可能性はある。
ドラフト指名があるかどうかのボーダーラインにいると思われる仁田。彼の潜在能力を最大限に評価する球団が現れることを願いたい。
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