山﨑 康晃選手 (帝京)
寸評
プロ志望届けを提出した本格派右腕。以前から私は彼のことを帝京らしくない本格派右腕と評していた。最近の帝京の投手を見ると、07年のエース亜斗里、09年のエース平原庸多、今年の鈴木昇太、荻谷龍太郎、そして伊藤拓郎とすべて高校生離れした体格をした投手ばかりである。その中で異彩を放っていたのが山崎康晃である。 しなやかな腕の振りから投げ込む速球は伸び・キレ共に抜群。球持ちが優れており、両サイドに自在にコントロールできる制球力もあり、手先も器用で、球種も豊富。なぜこれほどの投手が控えなの?と思われる投球ができる投手だった。 しかしこの投手は生で見に行けばよく分かるのだが、ドラフト候補に求められる存在感・風格がないのだ。2年夏の都大会、秋の都大会で見ているが、細身で切れの良いボールを投げる投手という印象しかなかった。控え投手・リリーフエースという立場に満足してそれが彼の成長に妨げた印象があったのだ。 しかしこの夏、エースナンバーを着けて臨んだ。これは何か変化があったのかなと思った。恐らく伊藤拓郎・鈴木昇太辺りがエースナンバーをつけると思っていただけに、リリーフエースの役割を務める彼が「背番号1」を着けた。この変化を目の当たりにしたいということで都大会初戦・攻玉社戦(2010年7月4日)を観戦した。彼は先発登板し、6イニング11奪三振という素晴らしいピッチングを演じた。常時140キロ前後・マックス146キロのストレートと高速スライダーが外角いっぱいに決まり三振の山を築いた。相手の打力レベルが低かったからこの奪三振数が稼げたという見方もあるが、この試合のピッチングなら甲子園を狙える強豪校でも十分通用した内容であった。 選抜から何が変わったか。まず表情が違う。気迫が違う。精神的に強くなった事で投球にも現れた。腕の振りの鋭さ・球持ちの良さは変わらないが、体重は以前よりも前に出るようになり、ぐっと左ひざをぐっと受け止めて、鋭く腕を振れるようになったことで、更にボールが走るようになった。
更新日時:2010.09.08
将来の可能性
甲子園で数々の好投手を見てきたが、彼並みの切れのある140キロ台のストレートとキレのあるスライダーを投げ込める投手は数少なく、バランスの良いフォームから投げ込む直球はトレーニングによってまだ伸びる余地はあるだろう。手先の感覚は優れている投手であり、引き出しを増やすことが容易だろう。伸びしろはたっぷりある投手だったが、精神面の成長によって風格が出てきた。強いプロ志望があるのなら、ぜひ高卒からプロを狙ってほしい投手であった。 その彼がプロ志望届けを提出。あまり登板の機会が少なかった彼がプロを挑戦するのは個人的に嬉しい。指名されるかは分からないが、ぜひプロの舞台で輝いてほしい投手である。
更新日時:2010.09.08
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