選手名鑑
寸評
阪神ドラフト2位指名を受けた井上広大。甲子園決勝戦で奥川 恭伸から本塁打を放つなど、夏の大阪大会・甲子園の13試合で7本塁打を記録するなどラストサマーで大爆発した。甲子園優勝に貢献した地元・大阪の和製大砲として球団からの期待も高い。
井上がほかのスラッガーにはないものがある。それが読みの鋭さと修正力の高さだ。
大阪大会準決勝以降の本塁打を振り返ると、打てるべくして打つことができている。
まず大阪大会準決勝の近大附戦。8回裏、2ストライク2ボールから甘めに入った外角高めのストレートを逃さずレフトスタンドへ運んだ。この場面について井上は
「前半、タイミングが合わなかったので、少しずつポイントを近くすることで合わせていきました。そのためにバットを引くテークバックの動作を少し小さくしたことで、内から出るようになり、ホームランにできたと思います」
そして決勝の金光大阪戦。4回表、2ストライク1ボールから左投手・辻本湧斗が投じた外角高めのカーブをとらえて
レフトスタンドへ飛び込む本塁打を放った。この場面について、
「1打席目はタイミングが早く、開きが早いフォームとなっていました。そのためタイミングを遅くして、体の中でとらえることを意識しました」
そして甲子園でも同様だった。
まず1回戦の霞ヶ浦戦。広島入りした鈴木 寛人が投じたスライダーを逃さず打ち込むと、3回戦の高岡商戦も芸術的だった。右サイドの軟投派・荒井 大地のカーブに苦しんでいたが、
「ポイントが前になりすぎていたので、自分の体の中で振れるように、修正しました。第3打席まで左中間へ意識していましたが、第4打席以降は右中間を意識して打ったので、投手によってどの方向を意識を置くか、考えていきました」と語るようにその第4打席は高めに浮いたカーブを逃さず、左中間スタンドへ運んだ。
そして決勝戦の星稜戦の逆転3ランも見事だった。この場面、二死一塁から前打者が四球。星稜側がタイムをとってからの初球のスライダーだった。高めに浮いたボールを逃さず、わずか4.36秒でバックスクリーンに飛び込む弾丸ライナーのホームランで、さらに評価を高めた。この場面について井上は
「センバツの時に抑えたボールで次の打席に入ってくると感じたので、それを信じてみて打席に入った感じです。先制点を取られて1回も2回もランナーを出して点が取れない状況だったので、そこで何とか援護点を与えられたのは良かったと思います」
これもセンバツに奥川恭伸に抑え込まれた経験から筋力的にも、技術的にも、修正力も進化させ、ただパワー自慢のスラッガーだけではないことを証明した。
本塁打だけではなく、多くの安打を振り返ると、速球、変化球にも対応している。
それができるのは高い打撃技術が備わっているから。
スクエアスタンスで構えて、バックスイングを大きく取りながらも、右ひじをしっかりとたたんで内側から出てくるスイング軌道によって高確率で捉えることができているのではないだろうか。
将来の可能性
現時点の井上は甘い球を逃さない鋭さは身についているので、140キロ台の速球とキレのある変化球を投げるのがプロの投手相手にそれが発揮できるか。履正社は普段から木製バットで打撃練習をしているので、スイング軌道を見ても、木製バットの使い方にはそう苦労しないと考えられる。ただ、レベルが高い投手に対応するにはかなりの実戦経験が必要となるだろう。
プロ1年目はファームで100試合前後の経験値を積ませられることが予想される。また、足の状態をしっかりと治して、走れる体にすること。俊足選手にように走り回ることはできなくても、最低限の守備、走塁のスピードに達しなければ使いにくい。
井上の1年目はまずプロのスピードに対応しつつ、野球選手としてのスキルを高めることが必要と考える。首脳陣が1年間、我慢して使えるレベルになったとき、一軍でも、二けた本塁打を狙える選手になるのではないだろうか。
阪神にとって井上を大成することができれば、リーグ優勝へ大きなピースとなるだろう。
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