
前 佑囲斗 (津田学園)
- 寸評
- この夏、甲子園で一気にブレイクしそうな投手がいる。津田学園の前佑囲斗。三重大会では31回を投げ、38奪三振と好投を見せている前は春よりも進化した姿を見せている。
(投球内容)
140キロ前半のストレートは回転数が非常に高く、大人が投げるストレートだと思わせるほど。実際に空振りが奪えている。選抜から球質の良さは評価していたが、この球質のまま140キロ後半をたびたび計測するようになったということを考えると、かなりの進化だといえる。
選抜と変わったのはだいぶ感情を出すようになり、それが空回りする投手もいるのだが、前の場合、強い気持ちが乗り移ったストレートが魅力だ。
変化球はスライダー、カーブ、チェンジアップ、スプリットと多彩で、特にスライダーの切れ味は抜群。打者の手元で鋭角に曲がり、高確率で空振りを奪える。このスライダーを右打者だけではなく、左打者のボールゾーンからストライクに入る「フロントドア」を投げられること。
また、ピッチングの強弱をつけるのがうまく、カーブで緩急をつけ、チェンジアップで空振りを誘い、遅い球に目が慣れたところで高めに回転数抜群のストレートを投げ込んで三振を奪う。
ピッチングの幅が広がり、打者を見下ろして投げているようにも感じられる。
(投球フォーム)
ノーワインドアップから始動し、左足を高々と上げていき、右足の膝を適度に曲げてバランスよく立つ。左足を遊撃方向へ伸ばしていきながら重心を下げていき、踏み出し足の膝を曲げて着地する。お尻から先行するヒップファーストが取れており、左腕のグラブを斜めに伸ばして、内回りの旋回でトップを作る。この時、右肘をしっかりと挙げており、左腕のグラブの動きによって出どころを隠すことができているので、出どころは見にくい。腕の振りを見ると真上から振り下ろすので、縦回転がかかったストレートを投げることができる。
選抜と比べると、縦回転で体を使うことができて、打者よりで離すことができるようになり、リリースの角度があがり、ひじが立った状態で離すことができるので、伸びのあるストレートを投げることができるようになる。 - 将来の可能性
- 春よりも進化している姿は見られ、三重大会で対戦した打者を見ると決してレベルは低くなく、宇治山田商、三重海星といった強力打線相手にも圧倒できるストレートの切れ、伸び、投球術のうまさは出色している。センバツ1回戦負けからどれだけ変わったか。
ピッチングを見れば十分に全国でブレイクする可能性は秘めている。前評判通りのピッチングを見せてくれることを期待したい。 - 情報提供・文:2019.08.03 河嶋 宗一
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