大高 光選手 (日大鶴ヶ丘)

寸評

　身体の芯が出来てくれば、楽しみな右腕と評価してきた大高 光。体格面はまだひ弱さを感じるかもしれないが、昨秋に比べると逞しくなった大高の姿があった。投手としてのセンスは都内でも3本の指に入る逸材。即プロ云々というより、時間をかけて育てていきたいと思わせる投手だ。 (投球内容) ストレート　１４０キロ前後 常時135キロ前後 スライダー カーブ チェンジアップ 　昨年よりもストレートの勢いが感じられ、アクセルを入れた時のストレートは140キロ台を計測していてもおかしくないストレート。今年のマックスは今のところ142キロ。回転が良い直球を投げ込むことが出来ており、力を入れた時のストレートは空振りを奪えるストレートだ。常に全力で投げるわけではなく、彼は打者を見ながら6割～7割程度の力のストレートを投げて、両サイドを淡々とついていき、打たせて取る投球に徹する。彼は三振を狙うわけではなく、打者を打たせる投球を心掛けていることをコメントしてくれた。ただそのストレートは打ち難さを感じるものではなく、レベルの高い打者からすれば、振り抜きやすい球筋なのだ。そのためヒットにすることは容易な投手で、怖さはない。 　ストレートについては更にレベルアップを目指してほしい。将来的には今、全力で投げているストレートを6，7分ぐらいで投げられるぐらいにまでエンジンを大きくしてほしい。 　彼はストレートで押せる投手ではないので、変化球の割合が多い。彼は「変化球投手」であると思っている。ブレーキが効いたカーブ、横滑りするスライダー、チェンジアップを投げ分ける。当たり前だが、変化球を混ぜた方が三振を取りやすい。成立戦では変化球の割合を増やした4回から奪三振を奪い始め、最終的には10奪三振。打ち難いコースに変化球を集めていき、相手を交わしていくピッチングを見せる。 　ローリスクのピッチングの組み立てが出来る投手で、もう少しストレートの迫力・制球力を突き詰めていくと高校レベルではあまり打たれない投手になっていくのではないだろうか。 (クイックタイム・フィールディング) 　クイックは1.1秒～1.2秒前後と素早いクイックは出来ており、そしてフィールディングの動きも良かった。牽制はあまり入れなかったが、昨秋は一試合で二度牽制で走者を刺しており、投球以外の技術もしっかりしている。 (投球フォーム) 　ノーワインドアップから始動。勢い良く足を上げていき、一本足で立つ。下半身を重点的に鍛えてきたのか、前よりも真っすぐ立つようになった。左足をショート方向への足を伸ばしていきながら、重心を下げていく。お尻から先行するヒップファーストが出来ており、前膝を送り込んで接地する。踏み込んだ左足は開かずに身体の開きを抑えることが出来ており、捕手方向へ体重移動が出来ている。ただ力を入れる時に限り、膝の開きが早くなっているので気を付けていきたい。 　左腕のグラブを斜めに突き出して、以前より開きを抑えるようになっている。グラブはしっかりと左胸に抱えむことが出来ており、体のブレを防ぐことが出来ており、重心移動が安定する。 　テークバック。右腕は身体に近い所で、内旋が出来ており、右肘を折り畳むようにしっかりとトップを作り、リリースに入る。胸の張りが良く、右オーバーから引っかかりがなく振り下ろすことが出来ているのが彼の長所。肩、ひじが柔らかく、しならせるように腕を振ることが出来ているのが良い。 　最後のフィニッシュでは以前よりも膝の割れが少なくなり、体重移動が少しずつ良くなってきている。

将来の可能性

　昨年に比べて下半身が逞しくなっており、自分の課題を把握して冬場にしっかりとトレーニングをしてきた姿が伝わってきた。トレーニングしたことで何が良くなったかといえば、ストレートの球威がアップし、更に完投してもストレートの勢いが落ちないスタミナが付いたこと。練習試合から完投を続け、公式戦では中一日おいて連続完投出来るようになったのはトレーニングの成果が出ているといえるだろう。 　ピッチングは「三振は狙わず、打たせて取る」と話している通り、コーナーを淡々とつくピッチングを見せたり、相手打者を見て、配球を切り替えているのを見ると、自分が考えているピッチングを体現出来る賢い投手だ。 　大人になっても自分のスピードに酔いしれる投手は存在するので、相手打者を打ち取る投球を体現出来る彼のピッチングスタイルは最後まで勝ち残れるピッチングだろう。ここまで「技」の投球を見せているが、「力」のあるピッチングはまだ出来ていない。更にストレートの精度、コントロール、威力をレベルアップさせ、力と技を織り交ぜたピッチングが出来るようになった時、西東京NO.1投手という称号を与えても異論がない投手になるのではないだろうか。