選手名鑑
短評
観戦レポートより抜粋(2016年5月7日)
試合後、西谷浩一監督が「苦しい試合でした。相手投手が本当にコントロールが良くて苦しかったです」と振り返るように上宮のエース・巻 大地(2年)の好投が光った試合だった。では巻はどんな投手なのかと説明すると、球威ある真っ直ぐをコントロール良く投げ分けができる左腕投手である。
だが立ち上がりはやや不安なものだった。いきなり1回裏、一死一、三塁のピンチを招き、4番三井 健右(3年)を迎えたが、なんとか併殺に打ち取ってから、「あの併殺でだいぶ気持ちが楽になりました。それまでは、とにかく緊張をしていましたから」と緊張から解れた巻は快投を見せる。
球速は125キロ~130キロ(132キロ)で、突出して速いわけではないのだが、球速表示以上に勢いを感じるのか、大阪桐蔭の各打者が捉えることに苦労しているのだ。そして110キロ台のスライダーが低めに決まっていて、これも厄介な球種だ。
巻が打ち難く感じるのはフォームにある。巻はノーワインドアップから大きく右足を巻き込んでから真っ向から振り下ろす左のオーバーハンドだが、フォームに勢いがあり、右肩の開きが遅く、なかなか腕が出てこないので、出所が見難い。サヨナラ打を打つことになる福井 章吾(2年)は最初は対応ができなかった。巻の印象について、「コントロールは良いですし、あのトルネード気味なフォームから一気に腕が振れるので打ち難いですし、さらにテンポも良いのでなかなか自分の間合いで打てませんでしたね」と苦労している様子だった。大阪桐蔭の3番吉澤 一翔も、「0-2からですと、甘いボールに投げる傾向にあるのですが、巻投手の場合、際どいコースへストライクが取れる。それは嫌だなと見ていました」とU-18代表一次候補に入った吉澤も巻のコントロールの良さを称えていた。
その巻だが、実は叩き上げの左腕だ。西山田中時代、軟式でプレー。最後の夏は府大会の初戦で敗れている。無名中の無名だが、率いる村田監督の目に留まり、上宮に進むことになる。村田監督は何を評価したのだろうか。
「当然、個人の技術を見ますが、彼が良かったのはマウンド上に立った時の雰囲気、佇まいですね。それに惹かれました。そして取り組み。やっぱり高校生は取り組み次第で一気に伸びるものですが、彼は自分の課題に向き合って取り組む姿勢が中学生の時からありました」
巻からすれば願ってもない話である。上宮に進学してからも姿勢は変わらなかった。
「高校生なんで、私がいないと手を抜きたくなるものですが、巻の場合はそれがありません。自分の課題に向かって真剣に練習ができる選手ですし、本当に姿勢が素晴らしい投手なんです。だから入学から大きく伸びた選手ですね」と村田監督は巻の練習に取り組む姿勢を評価していた。同期には巻より中学時代に実績ある投手がいるようだが、前向きに取り組む姿勢でメキメキを力をつけた巻はエースとなっていた。
今のトルネード投法もコーチからのススメのもの。
「ヒップファーストで投げられるようにということで今のフォームになったのですが、それでボールの勢いも変わってきました」
ストレートも自己最速135キロまで伸びるように。キレ、出所の見難さは意識をしていないが、今のフォームをマスターしたことで、自然と嫌らしい投手となっていた。
大阪桐蔭が苦しみながらもサヨナラ勝ちを決めた。ここまで大阪桐蔭を苦しめた2年生左腕・巻の投球は大きく評価されることだろう。
村田監督は「良く投げましたが、相手打者が上でした」と脱帽。ここまでの戦いぶりを「大阪桐蔭にここまでやったというのは選手たちにとっては大きく自信になったと思います」と敗れはしながらも選手たちの戦いを評価していた。
敗れた巻は「テレビで見ている大阪桐蔭の選手を対戦できたこと。また舞洲スタジアムでプレーすること自体、初めてだったので、投げていて楽しかったです」と試合を振り返った。今後の課題としては、ストレートがまだ押し切れなかったこと。打ち取ったものはスライダーが多かったので、ストレートで打ち取れるような投手になりたい」とストレート強化を課題に挙げた。
好投をしても現状を満足せず、さらに上達へ向けて意気込む巻。まだ2年生左腕ということで、今後の大阪桐蔭の好敵手として頭に留めたい選手になったのは間違いない。
- 2016 年 5 月
PHOTO GALLERY フォトギャラリー
関連選手
選手検索
RANKING 人気記事
-
コラム2022.06.15
沖縄水産、沖縄尚学に追随するチームは?夏の沖縄大会を徹底展望!
-
コラム2022.06.25
優勝候補・浦和学院に追随するチームは?関東4強・山村学園、王座奪還 …
-
コラム2022.06.21
関東一、二松学舎大附が優勝筆頭格 11年ぶり優勝狙う帝京などに注目
-
コラム2022.06.29
浜松開誠館の躍進で静岡、日大三島、静清、掛川東など入り乱れ混戦必至か
-
コラム2022.06.21
國學院久我山、東海大菅生、日大三が優勝争いか?大会序盤から好ゲーム …
-
コラム2022.06.25
優勝候補・浦和学院に追随するチームは?関東4強・山村学園、王座奪還 …
-
コラム2022.06.22
東邦を筆頭に愛工大名電、享栄が僅差で追い、 星城、中京大中京、至学 …
-
コラム2022.06.15
沖縄水産、沖縄尚学に追随するチームは?夏の沖縄大会を徹底展望!
-
コラム2022.06.21
関東一、二松学舎大附が優勝筆頭格 11年ぶり優勝狙う帝京などに注目
-
コラム2022.06.21
國學院久我山、東海大菅生、日大三が優勝争いか?大会序盤から好ゲーム …
-
コラム2022.06.25
優勝候補・浦和学院に追随するチームは?関東4強・山村学園、王座奪還 …
-
コラム2022.06.15
沖縄水産、沖縄尚学に追随するチームは?夏の沖縄大会を徹底展望!
-
インタビュー2022.06.08
両親はナイジェリア人。なぜイヒネ・イツアはNPB12球団のスカウトが注 …
-
コラム2022.06.22
東邦を筆頭に愛工大名電、享栄が僅差で追い、 星城、中京大中京、至学 …
-
コラム2022.04.03
なぜスーパー中学生は大阪桐蔭を選ぶのか?圧倒的な出口の強さは育成シ …