試合レポート

豊岡vs市立川越

2021.07.15

豊岡が延長の末、144km右腕・石田擁する市立川越を破り3回戦進出

 [stadium]県営大宮球場[/stadium]の第三試合は144km右腕・石田 陵馬(3年)擁する西部地区の強豪・市立川越豊岡との一戦となった。

 まずスタメンだが、市立川越は今春5番を打っていた高橋 翔太(3年)を2番に上げ、2番を打っていた当麻 雄大(2年)を7番に下げる。春7番を打っていた関 盛宏(2年)が4番に入り、6番には村田 一生(2年)を、8番には1年生の西村 光貴(1年)を抜擢する。一方の豊岡、筆者が豊岡を見るのは昨秋以来だが、昨秋8番を打っていた樋渡 盟(3年)を2番に上げ、2番を打っていた樋渡 廉(3年)を3番へという樋渡ツインズが並ぶ打順となった。さらに6番には室岡 亨(2年)が入り、民谷颯太(2年)が7番へ、9番には坂本 大起(1年)が入る。守備位置も二見 悠(2年)がセカンドからショートへ変更となり、大庭 翔太(2年)がファーストに、セカンドには坂本が入る布陣となった。

 先発は市立川越がMAX138km右サイドの藤井 虎太郎(3年)、一方の豊岡は2年生左腕・民谷が登板し試合が始まる。

 先制したのは市立川越であった。

 市立川越は初回、豊岡・民谷の立ち上がりを攻め、先頭の古賀 功汰(3年)がショートゴロエラーで出塁すると、すぐさま二盗を決める。さらに相手ワイルドピッチで二走・古賀は三塁へ進み無死三塁とする。一死後、3番・古海 玲雄(3年)がレフト越えのタイムリーを放ち1点を先制する。

 一方の豊岡もすぐに反撃を開始する。

 2回表、豊岡はこの回先頭の平井 颯太朗(3年)が振り逃げで出塁すると、すぐに二盗を決め無死二塁とする。ここで続く稲葉 颯(3年)が右中間へタイムリー二塁打を放ち1対1の同点とする。豊岡はさらに一死後7番・民谷がレフト前ヒット放ち一死一、三塁、さらに二盗を決め一死二、三塁と勝ち越し機を迎えるが、8番・大庭のスクイズが失敗となると後続も倒れ1点でこの回の攻撃を終える。

 その後は市立川越・藤井、豊岡・民谷が共に立ち直りゲームが膠着する。


 勝ち越したのは市立川越であった。

 市立川越は5回裏、この回先頭の浅井 祐輝(2年)がライト前ヒットを放ち出塁すると、続く古賀がきっちりと送り一死二塁とする。ここで2番・高橋が右中間へタイムリー二塁打を放ち2対1とする。

 だが、豊岡もすぐに追いすがる。樋渡ツインズが突破口を切り開く。

 6回表、豊岡はこの回先頭の樋渡 盟がセンター前ヒットを放つと続く樋渡 廉が三塁前へきっちりと送る。すると一走・樋渡 盟が相手の虚を突き、一気にカバーの遅れた三塁を奪い一死三塁とする。さらに4番・平井が死球で出塁し一死一、三塁とチャンスを広げると、二死後6番・室岡がレフト前へタイムリーを放ち再び同点とする。

 市立川越が取れば、豊岡が取り返す。この展開は豊岡ペースと言ってよいであろう。ゲームはキーとなった8回の攻防へと進む。

 市立川越はその嫌な流れを断ち切るべく8回からエース石田が登板する。石田は期待に応え豊岡打線を三者凡退に抑え一気に流れを引き戻す。

 実は市立川越のエース石田は今大会前に肘を痛め、痛み止めを打っての出場。長いイニングは投げられない状況であった。

 迎えた8回裏、そんな石田の投球に感化された市立川越は、この回先頭の高橋がライト前ヒットを放ち出塁すると、続く古海もセンター前ヒットを放つと一走・高橋は三塁へ、さらに三塁送球間に打者走者も二塁を奪う好走塁をみせ無死二、三塁とする。

 一方、この絶体絶命のピンチに豊岡ベンチが動く。

「前の試合も無死満塁を抑えているので」(北監督)
と、好投の民谷を諦め、エースの樋渡 廉をマウンドに送る。エースは期待に応え、またしても大仕事をやってのけた。


 3番・関を見逃し三振に切って取ると、続く藤井はショートゴロに抑える。だが三走を制して投じたショートの一塁送球が中途半端なボールとなりファーストも捕れない。一死満塁と危機的状況は続く。

 豊岡サイドはこの状況にも落ち着いていた。8回裏で石田の投球を見ると1点を与えたらほぼ負けの展開、ともすれば守備や肩に自信のないチームは、やや前進守備を取ってホームゲッツーを狙うということもあるが、二遊間はあくまでセオリーどおり一死満塁ということで「後ろゲッツー」を狙えるポジションを取る。するとこれが当たる。6番・石田の打球はショートゴロで二塁ベース寄りへ飛ぶ。663の併殺で切り抜け絶体絶命のピンチを凌ぎ、ゲームは延長へと進む。

 こうなると流れは豊岡である。

 延長11回表、豊岡は石田対策として「アウトコース高めを狙う」という指示が出ていたが、この回ついに実る。
「2人で点を取ろう」(平井・稲葉)
と、一死から4番・平井がアウトコース高めの直球を捉えセンター越えの三塁打を放つと、続く稲葉もアウトコースの直球を捉え犠飛を放ち豊岡がこの試合ついにリードする。

 投げてはエース樋渡 廉がその裏の市立川越の反撃を無失点で切り抜ける。結局、樋渡 廉は代わってから1安打無失点の好投を見せる。

 豊岡が延長11回3対2で市立川越を破る大金星を挙げた。

 まずは市立川越だが、ここでの敗戦は痛恨であろう。流れが来た8回裏で1点を奪えなかったことが悔やまれる所か。
「練習試合とは違う。(打線は)気持ちが先走り、バットとボールとの接点が作れなかった。このまま延長が続けば藤井の再登板も考えていたんだけど」
と、新井監督も試合後嘆いていたが、やはり誤算だったのは石田の怪我であろう。それにより今大会は基本先発に藤井が行き、残り2,3回を石田が締めるという大会プランとなった。また、11回表にはやや前進した外野の頭を越され、打者走者を三塁まで行かせてしまった。次打者にも一塁が空いている状況で、初球簡単にストライクを取りに行き痛打を浴びるなど、ややらしさを欠く一連の流れであった。とはいえ、スタメンの半分は1,2年生であるだけに秋以降の巻き返しに期待し、そして、石田、藤井両投手には上のレベルでの活躍にも期待したい。

 一方の豊岡だが、組み合わせが決まってから連日140km超えのマシンを打ち込んできた。
「藤井投手に関してはインコースを切って外の球をライナーで。石田投手に関しては速い球を。速い球は強く振らなくても飛ぶので」(稲葉)
と、決勝点の場面はその成果が出た形だが、序盤から打線は鋭い打球を飛ばしておりその伏線は張られていた。何よりも、この試合は両投手の好投に尽きる。そして最大の肝は8回裏の継投であろう。1点を与えられない場面でエース樋渡 廉が素晴らしいリリーフを見せたことがその後の展開を呼んだと言っても過言ではない。次の相手も経験豊富な好投手・星名を擁する熊谷商であり苦しい展開が続くが、この日の勢いのまま次戦でもぶつかりたい所であろう。

(文=南 英博

この記事の執筆者: 高校野球ドットコム編集部

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