2010年07月15日 新大分球場

三重総合vs中津商業

2010年夏の大会 第92回大分大会 1回戦
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奥村政稔(中津商)

中津商・奥村政稔の可能性

 最速147キロ。2010年の大分大会で各チームから警戒を解かれることのなかった端正なマスクの快速球右腕は、初戦でまさかの10失点コールド敗退を喫してしまった。

 来年の4月に中津工と統合され、中津東として生まれ変わる中津商にとっては最後の夏。全校生徒74人、男子生徒14人、野球部員はわずかに10人という厳しい状況にもかかわらず、プロ球界も注目する右腕は君臨した。

 昨秋の九州予選では初戦の由布戦でノーヒットノーラン。続く2回戦で、この大会で準優勝する強打の大分に敗れたものの、奥村政稔は13奪三振を記録。これを意地とか抵抗とかいうドラマチックな言葉で括るのはいかがなものか。奥村のポテンシャルが発揮されただけのことなのである。

 ワインドアップからの最速147キロに加え、用途に応じてスピード差をつける2種類のスライダー。これにカーブ、フォークというスピード感溢れる縦変化をからめ、ふた桁奪三振は当たり前の奥村。

新チーム発足直後には、発熱休養からのぶっつけ状態で、後の九州王者・嘉手納から6回で10個の三振を奪っている。

 そんな奥村だけに、今大会でも期待されるのは快刀乱麻の奪三振ショーだ。しかし、夏の大会で実力どおりの結果を出すことは難しい。そのことを、あらためて思い知らされた試合だった。

「疲労を感じている時の方が、いい球がいくから」。
という理由から、毎試合前にはブルペンで30~50球程度の投球練習を重ねる奥村。しかし、この試合までに、中津商と奥村は雨により3日間も待たされることになった。12日のブルペンでは「これ以上ない」というほどの仕上がりを見せていたが、13日、14日と登板がスライドしていくうちに、ブルペンでの球が高めに浮き始めていったという。
試合当日は“浮き”という気持ち悪さを拭うために、通常より多めの70球ほどを投げ込んでから勝負のマウンドへ。奥村の言う程よい緊張感の中で、プレイボールが告げられた。

 奥村は初回、先頭の三重総合・甲斐友也に四球を許すも、バッテリーを組む藤原憲次の強肩にも助けられ無失点。3番・穴見雄大から三振を奪い、上々の立ち上がりを見せる。2回は4、5番を高めの真っすぐで空振り三振。前イニングから通算で、クリーンアップから3連続奪三振だ。ここまでの最速は143キロ(この試合の最速)。しかし、内心では(やっぱり高いな……)と小首を傾げながらの奥村だった。二死から左打者の堀卓也に死球を与え、続く大塚亮輔の右越え二塁打で1点を失う。
「相手はラインぎりぎりに立ち、ベースをかぶせるようにスタンスを取っていました」。
 と、奥村はいう。先制点のきっかけとなった死球以降は、大胆な内角攻めが鳴りを潜めていく。これによって三重総合打線は外角高めに照準が合うようになり、ライン際に立つことで外へ大きく逃げていくスライダーの見極めも容易になっていった。

 5回には6安打を集中された。これに自らの暴投、与死球、さらには味方の失策などもあり、流れは一気に三重総合へ。ここで中津商・恒成徳二郎監督は、歯止めの効かない流れにストップをかけるべく伝令を送り「一端、一塁へ」と奥村に一時降板を指示している。ベンチが打つべき手としては、当然の采配である。しかし、奥村はこの通達を拒否。決して反乱ではない。開幕日の取材で「最近は“1”を背負う宿命と、事の重大を思い知っている」と語っていた奥村にとって、途中降板は許されない選択肢だったのである。
「自分の気持ちを優先させてほしい」。
そういって伝令をベンチに送り返した奥村。この回、計8点を失い、勝負は決した。

 6回を投げての投手成績は、108球を投げて被安打9、四死球5、奪三振8。もちろん、この試合だけで投手・奥村のすべてを語れるものでもない。
光るプレーもあった。
初回、無死一塁でのゴロ処理では、伸び上がった状態から二塁転送で一塁走者を封じたり、1点を先制された直後、自らのけん制でピンチを脱したり。さらに、打者としても2安打。50mを6秒1、背筋力208という身体能力の高さを活かしたプレーは、随所に見せている。
残念だったのは、修得に励んでいたチェンジアップが、夏の大会という大一番に間に合わなかったことだ。スライダー方向の変化だけでなく、左打者の外へ逃げていくトリックも欲しかった。
別の捉え方をすれば、174cm、65kgという成長途上の身体的スペックだけでなく、球種を増やすという課題も明確な分、伸びシロは充分に残されているといえる。「大学など高いレベルで続けたい」という意思も強い。奥村 政稔の才能が開花していくのは、まだまだこれから先のことになる。

(文=加来 慶祐




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