【特別インタビュー】株式会社明治 管理栄養士・大前恵さん （後編）
▲株式会社明治 管理栄養士 大前恵さん
球児の体作りを栄養面でサポート！
管理栄養士・大前恵さんに特別インタビュー！
野球界で幅広く活躍されている株式会社明治の管理栄養士・大前恵さんは、昨年初めて日本シリーズを制した楽天球団や、巨人の坂本 勇人選手（2013年6月4日 独占インタビュー）の食事のサポートもしています。楽天日本一を陰で支えた大前さんに、2006年からかかわってきた楽天の選手達の変化を中心に、球児も真似できるポイントを伺いました。
――東北楽天イーグルスで食事の重要性を伝えるのに、1年ほどかかったそうですが、具体的にはどんなことを選手たちに伝えていったのですか？
大前恵さん（以下「大前」） 選手たちは、栄養士という存在を初めて見るので、「この人何する人なんだろう」というところから始まって、講習会などをしました。
それで、話しを分かる人がまず取り組んでいくんですよ。だいたいピッチャーなのですが、ピッチャーはローテーションを組まなければいけないため、他の人たちとは1週間の過ごし方が違うんです。体を作るとか、『試合当日、どうやったら9回も投げられるんだろうね』ということを延々とやっていった中で、少しずつ、それまで結果があまり出ていなかった選手が活躍をし始めました。
――楽天にかかわって2年目以降、選手たちの意識やプレー結果にどんな変化があったのでしょうか？
大前 2年目からは、田中 将大投手（2013年3月2日 独占インタビュー）とか嶋 基宏選手とか現在の主力選手が入ってきました。彼らは、最初から栄養とかトレーニングとか大事だよね、という考えで入ってきているので、初めから当たり前のこととして取り組むことになりました。
皆、ルーキーの時からものすごく結果を出して、きちんとトレーニングもして、ということになったので、先輩たちもやらざるを得ない状況になってきました。取り組むと結果も出るので、例えば栄養に関してもちゃんとケアすると、怪我をしていた選手が、今年は怪我がなかった、思った通りに体脂肪が減らせた、それによって体のキレがよくなって評価があがったとか、そういうことがあってみんな取り組むようになりました。
その翌年か翌々年には、鉄平選手も首位打者を取ったりしました。あとは、何といっても、当時は山崎 武司選手がいたので。お酒も飲まなければ、たばこも吸わないし、本当にたくさん食べて、ナイターで遅くても絶対12時には寝る、という見本がいたので。
「飯食え、飯食え」って言う彼の言葉に、私が科学的な面で情報を提供するっていうのがマッチングしたのと、当時の野村監督がものすごく『飯も食わない奴が野球をできるのか』と言ってくださって。
プロ野球は家にいる日以外は毎日バイキングで、144試合中70試合がホテルでバイキングです。自分で考えて食べられないと弱っていくので、バランス良く食べるっていうことをどんな状況でもできるように協力をするというのが、私の使命でした。
[page_break:高校生が真似出来るポイントとは？]
▲株式会社明治 管理栄養士 大前恵さん
――チーム全体が徐々に変わってきたなという時期はいつごろですか？
大前 チーム単位だと3～4年目くらいです。ものすごく栄養についての意識が高くなってシーズンに入ってきました。
岩隈 久志選手（2013年3月28日 独占インタビュー）が21勝した時も、『ご飯ってやっぱりすごいね』と、なりました。その年は、岩隈選手が朝ご飯も食べて、1日4食ということをずっとやっていて。
ナイターで22時まで試合をやって、朝起きて食事というのは難しいんです。11時頃、朝食と昼食を兼ねたブランチというのが普通です。岩隈選手は次の登板まで6日間、1日3食と4食だと6食分の栄養の差が出ると考えたんですね。そういうことが当たり前にできたり、栄養の会話とかをする機会もできてきたりとか、自然とそういうふうになっていきました。
――田中投手の栄養の意識に対する成長などについて教えてください。
大前 田中投手は、最初にかかわった時に『体に良い』と言ったことは全部やった、というのがすごいと思います。試合の時のエネルギー補給だったり、リカバリーとかを、見ていると全部やっていたので。今は、奥様もすばらしい食事を作っているので。あとは、たまに食事を見たりして『これちょっと足りないんじゃないか』と言ったら、すぐに取り入れてやるっていう姿勢が素晴らしいです。
――なるほどですね。田中投手がやっていたことで、球児が明日から取り入れられることはありますか？
大前 乳製品について、3食とっても、カルシウムの摂取ってなかなか間に合わないんですが、食事に出ていなくても、田中投手は自分で買って食べるようにしていました。
もともと、日本の乳摂取基準が900で、普通のお子さんでも1リットルとか飲まなければいけないし、高校球児の皆さんはその倍の2リットルくらい取らないと、汗とかで出て行ってしまったりするので。相当意識しないと追いつかないんです。
それによって、いろんな効果があって、田中投手でさえ足がつりそうになることがあるんですけど、そいういうこともなくなってきたり、というのはあります。カルシウムは筋肉の曲げ伸ばしの役割、電気を伝えるっていう働きもしたりするので。
――大前さんが食事の指導をされていた坂本選手の場合はいかがでしょう？
大前 坂本選手は、食事のことをあんまり考えていなかったんですよ。寮にいるときは出されたものは絶対食べていたので、そこは偉いと思いますし、入団してきた18才の頃から、自分が興味をもった栄養素については積極的に質問をしてきました。
ただ、野菜が好きではなくて、一人暮らしになって、なかなか食べなくなってきたんですけど、『自分が主力かも』って思い始めてから、温野菜とか、煮た物を食べるようにして、外食とかでも積極的に選んで食べるようにしたりだとか。
乳製品は、絶対自分でも買いに行くし、グレープフルーツジュースが好きで、柑橘系のフルーツとかが必要となったら、ちゃんと用意して食べるっていうように、意識がすごく変わりました。
▲株式会社明治 管理栄養士 大前恵さん
高校球児もそうだと思いますが、彼は夏場弱くて、痩せていました。水分補給が上手ではなくて、練習終わってがぶ飲みして、お腹いっぱいになってしまって、ご飯が食べられないとか、試合中もよく飲めなくて、食欲がわかなくて食べられません、とか。そういうことがなくなってきて、常に同じ量を食べることができるようになりました。
3年目からは体重がむしろ増えてきて、腰痛とかも出なくなってきました。大事な時に試合に出られません、とかいうことがなくなってきたので、日々ちゃんと栄養補給することの大事さをものすごく感じていると思います。
大前さん、ありがとうございました。
これまで多くのプロ野球選手に食事指導をされている株式会社明治の管理栄養士・大前さんから今回は、野球選手として上達するための食事のお話しを2回連載で伺いました。
ぜひ、高校球児のみなさんも参考にして、強く大きな体をシーズン開始に向けて作っていってください。
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【高校野球ドットコム編集部】
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