アキレス腱にかかる外力をやわらげよう

 ランニング量や練習の総量が増えるにつれてアキレス腱付近に痛みが出ることがあります。アキレス腱はふくらはぎの筋肉と踵骨(しょうこつ:かかとの骨)の間にある結合組織であり、この部分が傷んでしまうとプレーするのはもちろん、歩くときにも痛みを感じることがあります。痛みがあってもプレーができるケースも少なくありませんが、まずは早めに医療機関を受診して医師の治療、アドバイスを受けるようにしましょう。その上でアキレス腱付近の痛みを軽減させる対処法や予防に向けたコンディショニングを実施していく必要があります。

 アキレス腱が痛くなる原因はさまざまですが、アキレス腱にかかる牽引ストレス(引っ張られる外力)や回旋ストレス(いわゆる「ねじれ」)などによるものが大きいと考えられます。牽引ストレスの場合はふくらはぎ(下腿三頭筋)の柔軟性が低下しているだけではなく、その上部にあるハムストリングスや臀部の硬さによる場合もありますし、逆に足裏の筋肉などが硬くなってアキレス腱に影響を及ぼすこともあります。ストレッチを行うときは下腿三頭筋とともに、下肢や腰背部を含めて入念に行うようにしましょう。足裏へのアプローチとしてはテニスボールなどを使って足裏を軽くほぐしたり、青竹踏みやバスタオルなどを使って足裏全体を伸ばしたりするものが手軽で取り組みやすいと思います。また足指を一本一本丁寧に動かすことも足裏の筋緊張をゆるめ、アキレス腱への負担を軽減することにつながります。

 一方、回旋ストレスはランニングフォームによるところが大きいと考えられています。足が地面に接地した後に強い力を得ようとして足をひっかいたり、蹴るような動作が加わったりするとねじれが生じやすく、アキレス腱に負担をかけることになります。また足の着地は重心に対して真下(垂直方向)につくことが理想的ですが、前方になってしまうと膝への負担が大きくなり、後方に足が「流れる」状態ではアキレス腱への牽引ストレスが増します。さらにいくら良いフォームでランニングを行っていても、繰り返される外力によってアキレス腱付近に痛みを覚えることがあります。これは体力的な限界を超えるオーバーワークの可能性があります。

 アキレス腱付近の痛みをそのままにしておくと、慢性的な痛みに悩まされたり、アキレス腱断裂などの大きなケガにつながったりといったことが考えられます。まずは医師の診察を受けた上で、アキレス腱の負担を軽減させるようなコンディショニング、ランニングフォームや練習量の見直しなどを行うようにしてくださいね。

文:西村 典子
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