深部体温と熱中症
外気温と体内温度の分布図
皆さんは深部体温という言葉を聞いたことがありますか? 最近では熱中症対策として強く推奨されているのが「深部体温を上げないこと」であり、熱中症の疑いがある場合はすみやかに「深部体温を下げること」です。
●深部体温と皮膚体温
深部体温とは体の中心部分の体温のことを指し、生命を維持する脳や臓器などは外気温に左右されないように一定(健康な体は、臓器が活発に働くとされる37℃前後)に保たれています。一方で外気温や環境などに左右されやすいものが皮膚温です。手足など、体の中心から離れた末端部分に位置し、深部体温に比べて低くなります。
私たちが普段測定している体温は脇の下、もしくは舌下で測定していることが多いと思いますが、体の核心部分という点では少し離れた位置にあるため、正確な深部体温とは言えません。深部体温をみるために一番適しているのは直腸温であると言われていますが、スポーツ現場などで直腸温を測定することはむずかしいため、脇の下での測定よりは舌下、もしくは耳(鼓膜温)がより深部体温に近いということを覚えておきましょう。
●重度の熱中症はまず深部体温を下げること
深部体温が上昇してしまうと、脳や臓器が大きなダメージを受けることになります。「呼びかけに反応しない」「歩き方がフラフラしておかしい」「自分で水分補給ができない」といった状態が見られると、生命に関わる事態へと進行してしまうため、一刻も早く救急車の要請とともに深部体温を下げることを行いましょう。
救急車を待つ間に深部体温を下げる方法としては、氷などを使って大動脈部分(首、脇の下、股の付け根、膝裏、足首など)を中心に冷やすこととともに、扇風機やうちわなどで直接風を当てることもあわせて行うとより効果的です。氷などがすぐに準備できない場合はバケツやホースなどで直接水をかける方法もあります。また倒れた人を移動させられるようであれば、すぐに室内や涼しい場所に移動させましょう。炎天下の中で応急処置を行うよりもはるかに効率よく体温を下げることが期待できます。
スポーツ現場で重度の熱中症になってしまった場合は深部体温を下げること、そしてどのような行動が深部体温を下げることにつながるのかをぜひ覚えておきましょう。
※イラスト参照「スポーツ現場における暑さ対策」長谷川博・中村大輔 編著/ナップ
文:西村 典子
球児必見の「セルフコンディショニングのススメ」も好評連載中!