チームの力となる声かけとは
ベンチからの声はチームにとって大きな力となる
野球はグラウンドにいる選手だけで戦っているのではなく、ベンチメンバーからの声かけや応援してくれている人の声援が時に大きな力を発揮します。実際にプレーをする選手は緊張をしていたり、普段だったら気がつくものを見落としていたりすることがあるので、そこをサポートすることもベンチワークの一つと言えるでしょう。
ベンチの中から試合中に出す皆さんの声は「相手を野次って」マイナス要因を引き出すものではなく、実際にプレーしている選手たちに的確な指示を出し、チームの力となるプラス要因をもたらすものとして働きかける必要があります。この点を考慮した上で、チームの力となる声かけについて考えてみましょう。
●「ネガティブ」な言葉を避ける
私たちの脳は言葉によって大きな影響を受けます。声がけでは基本中の基本ですが、打者に対し「高めのボールに手を出すな」と言ってしまうと、脳は「高めのボール」に反応してしまうため、高めのボールを振ってしまうケースが多くなります。この場合は「低めのボールを狙っていこう」とか「腰から下のゾーンを狙おう」と言ったように振って欲しいところを指摘して声をかけることが大切です。声をかけるときはネガティブな言葉は使わないことを覚えておきましょう。
●期待することでパフォーマンスアップを狙う
皆さんは「ピグマリオン効果」という言葉を知っているでしょうか。教育心理学の分野で使われるものですが、相手が期待することによって学習者の成績が向上する効果のことを指します。野球の場面で一瞬にしてその効果が現れることはレアケースだと思いますが、普段からお互いの選手同士、また指導者が選手に、相手への期待を伝え続けることは「期待にこたえたい」という選手のパフォーマンスアップを狙うために活用できるものです。チャンスの場面で「お前に任せたぞ」と言われると、その期待にこたえようと奮起するのは皆さんも経験済みではないでしょうか。
●スーパーサブとしての準備
想定される状況を考え、チームの選手に指示を出す声は「スーパーサブとしての準備」にもつながります。試合開始時にベンチスタートする選手は、いつ、どの場面かはわからないけれど、誰もがいざという時に交代をしてプレーをする可能性があるからです。そのためにウォームアップの段階から体と心を試合に向けて準備するのですが、試合が始まってからは場面場面ごとに考えられるケースを指示していくことも、試合に向けた準備と言えるでしょう。チームのための指示の声は、自分のための準備であるということも覚えておきましょう。
文:西村 典子
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